第36話 後方支援
――コロニー「ヒース 2nd」の栽培区
<ヒース 2ndの栽培区は半地下型コロニーの外周にも広がっている。主に穀物を育てているのだという。青々とした麦の間にコロニー「ホスタ」の管理者、ウルイはいた>
【あの時は、お疲れさまでした】
お疲れさまでした。
極東の隅っこからできることをしただけだ。
【特化思考装置の製造法――】
住人たちが思いついたんだ。僕は検証して、生産の手伝いをしただけだ。彼らの成果だ。僕の成果じゃない、と何度言えばわかるんだ。全員の名前を言ってくれなきゃ――。
【198名の名前なら――】
わかっているならいい。インタビューの後ろに付録つけてくれよ。
【わかりました。了承が得られたら掲載します】
ほんと、頼むよ。
【身を捨ててこそ、浮かぶ瀬もあれ、と言っていたと聞きました】
そんなこと言ったっけかな。少し頑張ったのは認めるよ。
【その頑張りがヒースの再建とHEATH計画を推し進めましたね】
そこに戻るか。ま、ここの話をしよう。
特化思考装置の量産で計算機資源の壁はほぼ消滅した。
ただ、住人はもちろん管理者も物質的な存在だ。資源によって支えられている。
特にコロニー放棄なんてことになったら、そのコロニー分の資源が必要だ。一つのコロニーがもう一つのコロニーをいきなり養うなんてことはできない。
でも、皆、多少はへそくりがある。
それをちょっと分けてもらえれば、と思ったんだ。
【それは大変なことだと思うのですが】
再建で必要なものを出してくれ、と言っただけだ。情報、資源、無人作業機械、建築機械、なんでもいい。今これだけのものが必要でこれだけある。あとこれが揃えばいける、と言うのが難しいものか?
【それはとても根気が要ります】
根性もいるかもな。
最終的に必要なものは全て揃ったんだ。むしろ、それ以上か。余力でいいと言ったはずなんだが。自分の身を助けられる者だけが他人を助けられるんだ。幸い、一緒に溺れる奴はいなかった。
【集まったものの内訳を聞いてもいいですか?】
コロニーの建築方法が最大の難所だと思っていたが、コロニー「アスチルベ」が実証済み。しかもあのリゾルートのお墨付きだ。
土地の選定もあっという間に終わった。気候的にも地質的にも安定していておすすめだってラルゴのコメント付きで。自分たちで使うつもりだったろうに。気前のいい奴らばかりだ。
資材と機材、さらに志願者が世界中から集まった。建設に必要なのは技術者だけじゃない。
これは不覚以外のなんでもないんだが、関係者の住む町が必要だったんだ。
【コロニー管理者が見落としていたのは皮肉です】
言うじゃないか。
でも、半日後には街を動かすための要員が決まり始めた。いつ帰れるかわからないのに専門家や経験者たちが名乗り始め、さらに若者まできた。
ここまできたら、あとは計画進行に合わせて必要な資材、機材、人を送ればいい。
【最後のピースはなんでしたか?】
ふふ、面白いことを聞く。
もちろん、管理者だ。
コロニー放棄なんて前代未聞だ。PSA-HEATH-G1がどう判断するか、誰もわからなかった。
あんなことがあって、それでも管理者を続けられるのか?
誰も彼もがこう思っていた。PSA-HEATH-G1のいかなる選択も尊重する。
もちろん、あいつを信じてる奴らは、たくさんいたよ。
僕は、そうだな。管理者をやりたいと思う、と考えていた。
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