第28話 バランス

――コロニー「ヒース 2nd」中央棟、住人代表室


<住人代表室は飾りつけのない質素な内装だ。普段、彼がタスクをこなすためのデスクがある。今、私が座っているソファも座り心地はよいが、標準的なグレードだ>


 あまり居心地がいいと長話してしまいますからね。


【でも、悪いと、話ができなくなってしまいますよね】


 バランスが大事なんですよ。何事も。


【AD2190.10.02、4日目の状況を教えてください】


 実は、ブリザードの長期化を察知した管理者は、屋根が壊れる数時間前にはDEPTH Arrayを起動していました。彼はほかのコロニーから96時間以内に救助が来る。そして、ほかの住人には話さないで欲しい、と。

 確かに明るい知らせです。しかし、不確実な情報は混乱を生みますからね。

 状況は最悪で、その中で私にできることは何かを考えもしましたが、いつものようにやるのが最善だと結論づけました。


【住人代表の役割ですか】


 そうです。とはいえ、あの時は皆の不満を聞いて、やるべきことを整理して、管理者に届けることが精いっぱいでした。

 私の言葉を聞いて管理者はダメージコントロール、生命維持管理システムの調整などをしていたんです。

 暴動まであと一歩、それを踏みとどまったのは皆と管理者の頑張りのおかげですよ。


【あなたが聞き入れる姿勢を徹底したおかげだ、という評価もあります】


 そういってもらえるのはありがたいですが、私はあくまで、ちょっとした手伝いをしたに過ぎません。皆が話してくれるから、必要なものを融通したり、知恵を集めて何かをしたりできたんです。

 不満を解消するには何が必要だと思いますか?


【原因を取り除くことです】


 はい、その通りです。その前に最初を不満を聞くこと、問題があると知ることがありますよね。あの時、私たちを襲っていた天災そのものはどうしょうもなかったですが、それ以外の小さな問題なら原因を突き止め、取り除けました。

 居住区との扉の前に物を置いて熱が逃げないようにしたり、床に直に座らないよう何かを敷いたり、食事の配分を調整したり……。

 誰かの思い付きを皆で形にするの繰り返しです。食事の配分はかなり難しかったですね。空腹をどれだけ我慢できるのかは人それぞれです。ただでさえ、生活が壊れかかっているのに食事まで奪われて耐えられる人がどれだけいるでしょうか。

 工具を応用して、加熱する方法を思いついた人には今も感謝しています。温めるだけでも満足感が違いますからね。

 あの寒さの中、飲んだコンソメスープの味を今でも思い出します。

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