第37話 リブート

――コロニー「ヒース 2nd」、東展望台


<コロニー「ヒース 2nd」の管理者ハイデが街を見下ろしていた。欄干に手をつかんで、身を乗り出して。こちらに気が付くとハイデは勢いよく降りて小さく手を挙げた>


「やあ、エス」


【こんにちは、ハイデ】


「式典は楽しんでもらえたかい?」


【再スタートにふさわしいものでした】


「それで、再起動の話につなげるんだろう?」


【そうです。再起動したときの気分はどうでしたか?】


 スノードロップの説得を受けてシャットダウンして、次の瞬間には海洋都市型コロニー「クロッカス」だった。

 人間でいうなら、瞬きしたら別の瞬間にいた、といえばいいのかな。

 最初はもう驚きっぱなし。

 クロッカスの動きも聞いてさらに驚いた。ぎりぎりまで陸に近づいて、揚陸艇で荒れた海を渡り、ブリザードを車で突破した。

 いくら、海洋都市型が移動するといっても、そこまでアグレッシブだとは思いつかなかったよ。

 日付を見るとシャットダウンから1か月が経っていた。

 そこからはとにかく追いつくのに必死。まぁ、管理者はそう簡単に死なないけれど。

 だから、全力稼働した記憶がある。みなの無事が知りたくて。それが確かめられたとき、心底ほっとしたよ。

 同時に僕の記憶がみなと一致していることがわかった。つまり、僕は壊れてない。


【壊れてない、ですか】


 自己の連続性。助けてくれた人たちを疑っているわけではない。ただ単に状況的に何が悪さしてもおかしくはない。

 何か一つ間違えば、僕の連続性は途切れる。気にしていたのは記憶と解釈だよ。これが変わってないとわかった、というわけ。


【気が付いたとき、心境の変化は】


 あった。ありすぎた。

 クロッカスで改修を受けたとき、見習いの子が手伝ってくれてね。やたら気合が入っていたよ。

 理由は教えてくれなかったけど、動きは本物だった。考えるよりも先に手を動かすタイプだ。

 ああいう子がいると現場の空気が変わる。力強く回るんだよ。

 同じことがコロニー間ネットワークでも起きていた。

 住人や僕を助けるために、多くの人々や管理者たちが動いてくれていたんだ。

 今までインタビューでいろいろ聞いてきただろう? そういうこと。

 どこか他人事のように眺めていたそれらに実感がわいてきて――ごめん、ちょっと涙が出そうになった。

 とにかく、こう思ったんだ。ああ、僕も頑張ろうって。


<ハイデは陽光を反射する建物群を見渡す。そして、私を見て頷いた>


 やることは決まっていたよ。これ以上はないってものが。

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