これから

私の伴侶なのだから気にしなくていいのに……とは言ったものの今回の襲撃を受けてダミアンは責任を感じているらしく、提案をしてきた。

「きっと魔物はまた来ます。フレデリクが全てを解決するにはまだ時間がかかると思います。私に護衛の者たちの特訓を任せてもらえませんか?」

 私の仕事が止まってしまった今、護衛としての仕事はほとんどなくなった。タイミングとしては丁度良いということで父は許可を出した。

 物語にそんな記述はなかったのだが、ダミアンはどうやら新人育成なんかもしていたようだ。だからあんなに慕われていたのか。公式でそういうのをちゃんと出さないからダミアンの人気が出ないんだ。

「実はこの点だけはフレデリクより私の方が優っていたんですよ。彼は才能だけでやってきたせいか人に物を教えるのが苦手で……」

 なるほど。なんだか納得してしまった。でもダミアンの可憐な唇から奴の名前が出るのは気に入らないと伝えると照れながらも少し笑顔を見せていた。素直じゃないダミアンも良かったが私からの愛をまっすぐに受け取ってくれるようになって嬉しい。愛し甲斐のある伴侶だ。

 そして教育係として優秀なのは自称ではなかったようだ。

 ダミアンから手解きを受けた者は皆「ダミアン様の教えは丁寧でわかりやすい。素晴らしいお方です!アロイス殿下は良い伴侶を得られましたな!」と言うのだ。そう、私の伴侶は最高なのだ。

 休憩の時間に護衛たちに差し入れを持ちに行った……ダミアンに会いたいからではない。頑張っている護衛への差し入れだ。いや、会いたいが。

 「お気遣いありがとうございます、アロイス様」

 出迎えてくれたダミアンのなんと美しいこと。普段より高めに結われた髪が揺れてキラキラと輝いている。うなじを他人に露わにしているのは不安だが護衛曰く「殿下の伴侶に手を出す命知らずはおりませんよ」との事なので信じることにした。

「ダミアンの様子を見ていたいのだが良いだろうか」

 と言うと照れくさそうにしていたがアロイス様がおっしゃるなら……と許可してくれた。

 ダミアンは熱心に護衛の指導をしており、護衛たちも随分士気が高いように見える。

 これだ。私の感じたダミアンとはまさしくこういう男なのだ。前世の私ならきっと「ダミアンアンチは読解力不足」とか言うだろうが、今となっては別に良い。ダミアンの生きる世界に奴らの存在は関係ない。私とその周辺がダミアンを愛するのならそれでいい。でも公式はもっとやることあったと思う。

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