新しい日常
「おはようダミアン。今日も私の伴侶は美しくいらっしゃる」
「おはようございます。……それは伴侶になってもやるのですね」
「当然だ。なったからこそ欠かさずやらねばならない」
朝起きれば隣にダミアンがいる。そこに感謝せずして何に感謝するのか。
朝食の場に行けば家族がみんな揃う。
「皆さんおはようございます」
「おはようダミアン。よく眠れたかい?」
おかげさまで。と父とダミアンが挨拶をしているところに1番目の兄がやってきて
「なんだお前、昨日は抱かなかったのか」
などと言うのでついたばかりでしたし私も毎日盛っているわけではないのですよと言っておいた。まるで私が毎晩のようにダミアンを思い自分を慰めているかのような言い分である。
――――――――――――――
「お食事は全員揃ってするのですね」
「仕事だなんだでいなかったりもするけど基本的にはね」
クストー家の悪評はスオムレイナム王国の貴族事情に精通している者の間ではそれなりに有名で、ダミアンがまともな家族愛を得られなかっただろう事は私含め家族全員が知っている。昔その事で家族にダミアンを迎える事を反対されるかと思いきや「お前が責任を持つのであれば我々は協力しよう」と言ってくれたのでありがたい限りだ。
しかし母上、いくら生い立ちの哀れな騎士殿でもそんなに食事を山盛りされては食べきれないと思う。
――――――――――――――
「無理して食べなくても良かったのだぞ」
「申し訳ございません……その……嬉しかったのでつい……」
母上が調子に乗ってあれやこれやと食べさせるのでダミアンは朝から腹一杯にさせられた。子供好きな母上は家族に蔑ろにされている子供の存在が許せなかったのだろう。
「母上も毎食お前を苦しめるのは本望ではないだろうからな。適量を知らせるのも大事なことだ」
ダミアンは苦しそうにしながらも頷いた。
――――――――――――――
ダミアンの腹が落ち着いた頃ウルトリエの街を案内した。貿易の盛んなウルトリエには様々な商品が並ぶ。
「おはようございます!」
「おはようございますアロイス殿下!」
「もしかしてそちらは噂の……?」
「皆のものおはよう。この者はダミアン。私の伴侶となる者だ」
市場の民がワッと盛り上がる。
「あぁ……まさか民にまで知られているとは……」
私がダミアンを熱心に追いかけ回していた事はウルトリエの民なら誰もが知っている事だ。特に外交に関わる市場の民には。
「良かった良かった!ついに殿下の思いは実ったわけですな!」
「ダミアン様、どうか殿下をよろしくお願いします」
「おめでとうございます殿下!こちらはお祝い品です」
ここぞとばかりにお祝いと称して色々押し付けてくる。民には民なりの下心はあるだろうが、これでは親戚の年寄りみたいだ。
民にダミアンを見せびらかし……いや、お披露目したところで貴金属の店に向かう。
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