その子は幸せにするので私にください!

むむに

前世の記憶

発売されてから一躍話題となり、売り上げランキングには一年経ちながらも上位に食い込み掲示板では毎日コメントが投稿されSNSでは二次創作が盛んに行われているゲーム「フレデリク英雄譚」。略称は「フレ譚」。王国の騎士フレデリクが英雄として活躍する王道ながら熱い物語である。

 いや、そんな事はどうでもいい。

 俺はとある掲示板を見る。「フレ譚」を話題にした内容は幾つかあるが、その中の一つをクリックする。

「ダミアンとかいう戦犯www」などというタイトルがついている。

「い つ も の」

「ろくな事しない」

「こいついる?」

「フレデリク可哀想」

 目にするのも憚られる文字たちが羅列している。

「ダミアン」。「フレ譚」の登場キャラクターでフレデリクと同じ騎士で友人。そして中ボスであり、俺の推しである。

 ちょっと融通が効かないところはあるが真っ直ぐで人が良く面倒見の良い男だ。

 しかし、英雄として名を上げる主人公に嫉妬し、その心をつけ込まれて敵対してしまう。

 味方キャラクターに死者が出ているし彼の行い全てを肯定はできない。それでも死の間際に放った

「私は何をしているのだろうか……」

 というセリフは心を抉った。ダミアンの努力は作中でも語られておりそれでも尚天才フレデリクに届かなかった無念は想像に容易い。

 なのだが、彼の行いとそのメンタルの弱さは沢山のアンチを生んだ。悲しい事だ。彼らは人生で挫折するような事をしてこなかったのだろう。

 俺は悔しくて過去何度もダミアンのいいところを書き連ねてみたり慣れない二次創作にも手を出してみた。しかしまともに相手にされない。「信者乙」ならまだしも「ダミカスにも信者とかいるのか」などと言われる始末。

 俺は己の無力さを呪った。まるでダミアンの闇堕ちシーンさながらである。

 作中でも不幸な人生を歩み挫折と無念のうち命を落としそれを見たゲームのファンですら彼を貶める。ダミアンの味方は闇堕ちの原因になった主人公だけだ。

 俺がフレ譚の登場キャラクターなら良かったのに。そうしたらあのクソみたいな家や国からダミアンを救い出せるかもしれないのに。満足に愛を与えられなかったダミアンを嫌と言われるまで、いや言われても甘やかし尽くしてやれるのに……。

 ダメだ。ダミアンの事を考えれば考えるほど自分がどうにかなりそうだ。それくらい入れ込んでいる愛するキャラクターなのだが精神衛生的に良くない。

 今日はもう寝よう。明日はダミアンの為に二次創作をしよう。

 俺は目を閉じた。

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