第8話
【ジャンクメトリー】の実験で盛り上がっ…下がっていると
ふと、一連の出来事の始まりとなったロックゴーレムのことを思い出した。
あのモンスターも、俺の【廃品回収】スキルで異空間に回収されたはずだ。
「ん~…そういえば試してないスキルがまだあるな…」
『【リサイクルボックス】……ジャンクを異空間に保管できる能力です。』
洗礼の際の説明では回収したものを保管する異空間能力となっていたが
本当にモンスターが入っているのだろうか?
そしてもし入っているなら、ロックゴーレムはどうなっているのか。
また、取り出せるのだろうか?
「まぁこの際だ、試すしか無いよなぁ」
幸いセーフティエリアも近くだし、他の冒険者もいないようだ。
最悪セーフティエリアに逃げ込めばいいし、なにか問題があったら…
「未来の俺、たのんだ!【リサイクルボックス】!!」
目の前に明らかにわかる空間の歪みが発生した。
「これって某有名RPGの
口にしようとしてなにかの気配に息を呑んだ…
「よし、余計なことは考えずロックゴーレムだ!」
あの時回収したロックゴーレムをイメージしながら恐る恐る空間の歪みに触れてみる。
すると、じわりじわりと異空間の渦から、あの巨大なロックゴーレムが見え始めた。
「うおおおおお! 本当に出てきた! マジかよ! うおおおおお!」
年甲斐もなくはしゃいでいるがロックゴーレムを持てるはずもなく慌てて手を離す。
ドスンッという地面を揺らす音とともにロックゴーレムの全身が現れた。
幸い、と言うべきかゴーレムは動かない。
回収された状態だと活動停止するのだろうか?
興味津々で、動かないロックゴーレムに【ジャンクメトリー】を試してみる。
巨大な岩の塊に手を触れ、スキルを発動。
『…シンニュウシャダ―…』
『…シンニュウシャダ―…』
『…チンニュウシャダ―…』
断片的?というかカタコトと言うべきか、ロックゴーレムの思念が流れ込んでくる。
「モンスターにも思念があるのか! これはこれで面白い!
まぁゴブリンとかも表情はあるし奇声は上げるしな。」
『…ハイジョスル?…』
【ジャンクメトリー】に夢中になっていると、ロックゴーレムの体が微かに震え始めた。
そして、ヴーンという鈍い音と共に、ゆっくりと立ち上がり始めた
「うわああああ! コイツ動くぞ!? じゃなくて、マジかよ! 回収しても動くのか!?」
完全にパニックだ。
こんな場所でロックゴーレムと戦えるはずがない!
というかそもそもロックゴーレムとでは戦いにすらならない。
もちろん俺が瞬殺されるのだが。
慌てて距離を取り逃げ出そうとするが…
「待てよ?今ならもう一度試せるじゃないか!よし、任せろ過去の俺!!」
立ち上がり動こうとするロックゴーレムに向けて、再び【廃品回収】スキルを発動。
空間の歪みが現れると共に、立ち上がったロックゴーレムが、再び俺の目の前で消滅した。
異空間の【リサイクルボックス】へと送られたのだ。
「……消えた…また消えたぞ…! やった!やったぞ
っていうか、あれ…?」
消えたゴーレムを見て、レイトは固まる。
そして、あることに気づく。
今、俺は【リサイクルボックス】からロックゴーレムを取り出して、ダンジョン内部の地面に設置した。
そして、そのロックゴーレムがダンジョン内部に存在している状態で、【廃品回収】スキルをゴーレムに向けて使った。
そしたら、ゴーレムは再び【リサイクルボックス】に戻った。
「これってつまり…異空間から取り出したものを、ダンジョン内に置いて
もう一度【廃品回収】すれば、ボックスに戻せるってことか!?」
なにを当たり前のと思われるだろう…
だがそう…そうなのだ。もう一度俺は試す。
近くに置いてあった例の鍋、ゴブリンスレイヤーだ。
地面から拾い手に持ってみる。
そして鍋に意識を向けたまま…
「【廃品回収】」
………
……
…
そう、何も起こらない。
厨二病のようなセリフが虚しくダンジョンにこだました。
【リサイクルボックス】の鑑定説明では「保管できる能力」とだけあった。
だから、自由に物を出し入れすることはできないと思っていた。
そして手に持っていたゴブリンスレイヤーを地面に置いてみる。
これで持ち主のいない立派な投棄物だ。
「【廃品回収】」
空間の歪みへとゴブリンスレイヤーは消えていった。
「は、はは…はははっ!そうか…そうか!!!」
【ジャンク屋】……
「ダンジョンで」発生する「ジャンク」を取り扱うことに長けた職業
【廃品回収】……
「ジャンク」を、「【リサイクルボックス】に回収する」
【リサイクルボックス】……
「ジャンク」を「異空間に保管」できる
これでわかった、なぜあの時…
初めてのダンジョンで【廃品回収】に失敗したのか。
「ジャンク…前世で言えば壊れた機械…ってことは無機物だよなぁ?」
「廃品ってことは捨てられていないとダメ…だよなぁ…」
ダンジョン内で、無機物で、かつ誰の所有物でないもの
「それがこのスキルの条件なのか!」
「【リサイクルボックス】」
ゴブリンスレイヤーを取り出す。
今回は持てる物なのでそのまま手に持った。
「【廃品回収】」
は発動せず。
【リサイクルボックス】の旅のとび…
……が、ダメ!!
まぁ予想通りなのだが。そして……
「ふんッ!!」
ゴブリンスレイヤーに意識を集中したまま放り投げる。
「【廃品回収】!!」
空中に浮いたまま一瞬だが動きが止まり消滅する。
何か違うものも見えた気がしたが一旦気にしないでおく。
「【リサイクルボックス】」
手元にゴブリンスレイヤーが現れる。
「おおお! できた!できたっ!!! マジかよ! メンドくせーー!
バカなの? 死ぬの? 普通、気づかないって!」
ダンジョン内で
【リサイクルボックス】へのアイテム投入方法だったのだ。
当然モンスターでもすべてが無機物であれば回収できるしナマモノであればダメなようだ。
廃品の定義も微妙な部分(ロックゴーレムは全体が無機物だとしてこのモンスターの所有権はといわれればダンジョンとも言える)があるのは置いておき
基本的にはナマモノが触れていなければ大丈夫だと思ってよいだろう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます