ぴーさん

-ぴーさん-

僕の家の最寄り駅にはぴーさんがいる。

ぴーさんは駅の改札を抜ける時

いつも人に前を譲っている。

譲ってもらった人は

「あっすみません。ありがとうございます。」

みたいな顔して。

ぴーさんはニコッと笑って

「どうぞ」って言ってくれる。

僕はそれがちょっとした楽しみになっている。

今日はぴーさんいるかなぁ。

今日もまた知らない誰かのために笑顔で、改札口の行列で、前譲るのかなぁって。

でもこの前

いつものようにぴーさんが、改札口で自分の前で1人譲ったら、後ろの人が激怒してた。

「なんで入れるんだよって。」

確かに前に入れるのってよくないのかもしれないけど、別に何か有名店とかの行列に並んでいるわけでもないし、割り込んできた方も悪気があったわけじゃなくて、人の波に押されてささまって1番後ろにいけなくて、結果的に割り込んだみたいな風になってしまっただけなんだと思う。

その時のぴーさん

まるで今までやってきたことが害悪なことで

自分は間違っていたんだって。

そんな顔してた。

悲しそうな顔してた。

僕はね、ぴーさんのこと好きだよ。

何も知らないけど

虫も殺さないような顔つきで

自分が損してもいい。

虐めるくらいなら虐められる方が良いって。

そんな雰囲気のぴーさん。

僕はさ、意気地なしで全然ダメなやつだから、ほんとはぴーさんに言葉で伝えられたらいいんだけど、話しかける度胸もないから

せめてここで言っておくね。

僕はね、ぴーさんのやってること間違ってるとは思わない。だから、自信もってそのままのぴーさんでいてね。誰にも正解も不正解もわからないよ。

世の中はさ。きっと。

真面目で優しくて温かい心を持った人から壊れていくんだろうからさ。

ありがとう。

ぴーさん。

いつもありがとう。

ぴーさん。