第13話 教えて!サーナ先生!(魔法・スキル等編)

※半分本編、半分ステータス紹介兼細かい設定開示

※ゆるい描写多め



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 がりがりとペン先が走る音が響いている。サーナはまだ俺の能力について考えているようで、彼女の側には次々に分厚い資料が重なっていく。


 時間があった。

 かといって連日の準備で精神が多少消耗しているので、魔物狩りをするような気分でもなかった。


 ここにある大量の本を借りようかと思ったが、ふと思いつく。


(そうだ、スキル見るか)


 キメラ討伐後はバタバタしていて確認するのを忘れていた。


「この紙貰っていい?」

「ん、いいよ」


 自分を「観察」し、スキルを確認する。

 ついでにスキルを種類ごとに分類し、紙に記入していく。



 ◆



名前:コウヅキ レイ


◯スキル

パッシブスキル(ランク)

・「体術:B」

・「魔術:C」

・「剣術:D」

・「棒術:E」

・「防御:D」


パッシブスキル(ユニーク)

・「対魔法」

・「裁縫」

・「魔力認識」

・「掘削」

・「登攀」

・「味覚◯」

・「受け流し」

・「工作」

・「ついばみ」

・「飛翔」

・「撃ち落とし」


アクティブスキル

・「観察」

・「創剣」

・「溶解」

・「救援要請」


キメラから得たスキル

・「咆哮」

・「蛇王の威光」

・「剛健:E」


◯魔法

炎魔法(下級)

・「火球ファイアボール

・「灯火イグニス

炎魔法(中級)

・「烈火のパイロ・ヘリオス

水魔法(下級)

・「流水フロウ・ウォーター

風魔法(下級)

・「荒風レイジ・ウィンド



 ◆



「うーん、中々壮観だ」


 多すぎてわかりづらいとも言う。

 パッシブスキル(ランク)と(ユニーク)は俺が勝手につけた名称だ。ランクの方は使えば使うほどスキルの横のアルファベットが格上げされていく。


 Eから始まり、次はD,C,B……といった具合だ。剣術や体術というような、普遍的なものに多い。


 その逆に位置するのがユニークのスキルだ。

 「裁縫」や「味覚◯」に代表されるように、局所的で使い所の限られるスキルが多い。その分ランクスキルのように鍛える必要もなく、その分野での効力はとても強い。


 日常的な使いやすさのランク。

 特定の場面で輝くユニーク。


 どちらが良いかは一概に言えるものでは無いだろう。


「あ、そういえば」

「ん?」


 ばっ、とサーナが顔を上げる。


「強い魔物と、人の魔石からだとスキルが手に入れやすい」


 思い返せば、最初にスキルを手に入れたときが異常だったんだ。

 魔石を五個ほど集めただけで、さらっとスキルが十個ほど集まった。しかし、半年戦って、魔石を集め続けて得たスキルが九個。獲得の速度が一定ではない。


 そして、キメラの魔石からスキルを3つ手に入れて確信した。


「……ふむ、納得はできるかも」


 ぴた、と彼女の筆が止まる。


「スキルって、何かわかる?」

「あんまりわかってない」

「よし、私が解説してあげましょう!」


 ばーん!がらがら!(積み重なった本の中からホワイトボードのようなものが飛び出る音)


「……うーわ、片付けメンド」

「自分でやったのでは?」


 げっそりとするサーナ。随分と愉快な人間である。


「気を取り直して!!サーナ先生の授業をはじめます!!」

「い、いえーい」


 魔法のすすめ、と書かれたホワイトボードが壁に張り付く。

 準備していたとも思えない、他の人に使ったことがあるのだろうか。


「ときに質問しましょう!魔力って、何だと思いますか!?」

「魔力……」


 散々酷使してきたが、実際のところ詳しい訳では無い。

 城の本で読んだ内容を思い返しながら、先生の質問に返答する。


「魔法を使うときに消費する不思議なぱわー」

「間違ってはないね?でも、ちょっとざっくりすぎるかも」


 眉を若干下げつつ、彼女が笑う。

 どこか懐かしいと思ったが、サーナの態度は小学生の相手をするそれであった。そして実際、俺の無知ぶりは小学生に近い。


 生き残るためとはいえ、実用性がある本しか読まなかったのが効いている。


「昔のすっごいえらい人は、魔力の事を『世界の絵の具』と言いました!」

「どういうこと〜?」

「それはねぇ」


 どちらも長い間人と話していなかったからか、おかしなテンションで話が進んでいる。

 まぁ楽しいので良い。


「この世の全ての現象は魔法で説明されて、その全部に魔力が使われているからだよ(真面目)」

「全ての現象……自然現象とかも、って事?」

「鋭いね。その通り」

「でも、魔法って人が使うものなんじゃ」

「そこは解釈の分かれるところだね。魔力がひとりでに変質して魔法のような現象になっているって言う人もいるし、この世界自体が魔法を使っていると言う人もいる」

「うげぇ」


 そのスケール感と、価値観の違いに頭痛がした。俺の世界では大体のことが科学で解明されている。


 証明されていない事柄もあったが、それも物理法則に従っているだろうとされてきた。


 けど、この世界ではそうではない。

 物理法則は勿論あるが、その前提として魔力と魔法が存在している。重力も魔法、雷が降るのも魔法、噴火だって魔法だ。


 あんまりに地獄めいた環境にいて忘れていたが、ここが異世界な事を痛感する。


「そして、ここがスキル、ついでに魔法に繋がってくるってわけ」

「魔法はなんかわかった気がするけど」


 魔力が絵の具とするなら、魔法は多分「絵を描く事」だ。


「炎を描いたり、風を描いたりして世界を変えることが、魔法?」

「そうだね。そこまでわかってればもう少し!ヒントはだよ!」


 子供っぽい表情を浮かべてサーナが笑う。

 外に居る時は軽薄ながらミステリアスで底知れない感じがしたが、家に来てからは子供っぽい印象が強い。


 表裏がなく、ハツラツとしている。

 だから俺もまっすぐ付き合えるのかも知れないが……


 と言うのはどうでもよくて。


「ふむ……」


 中と、外。

 順当なイメージで行くなら、外が魔法、中がスキルのような気がする。魔法のほうが外見的にわかりやすいし、外に働きかけるイメージが強い。


 世界を書き換えるのが魔法。

 外を、書き換える。


「景色を、外側を書き換えるのが魔法で、自分を、内側を書き換えるのがスキル?」

「正解!!」


 ぱちぱちと彼女の拍手が響く。

 直接的な称賛にすごく気分が良くなった。


「魔法は外を書き換える。世界ってのは真っ白なキャンパスみたいなもので、魔力と技術さえあればイメージのままになんでも作れちゃうのだ!」


 ホワイトボードに彼女が文字を書き込んでいく。

 指先の動きに合わせ黒色の魔力が線を引く……が、読めないので「観察」で翻訳した。


「一方!」


 きゅ、と双方向の矢印が描かれる。

 スキルと魔法は対照的な場所にあるようだ。


「スキルは、鍛錬によって身につくもの!何回も繰り返し、積み重ねることで魔力がその行為に馴染んで、スキルになっていくんだ!」

「なるほど……」


 ファンタジーな話をされているんだろうが、なんだか馴染みがあった。

 それは俺の想像する技術スキルに近しいからだろう。部活をやっていたときも、同じ練習を繰り返す内にどんどん技術は向上していった。人によってその速度は違うが、成長しているのは確かだ。


 じゃあ、成長とはなにか?

 俺の考えでは、それは最適化だ。体が、頭がその行為をするために一番いい形になっていくことを、成長と呼ぶ。


 スキルというのはその魔力版なんだろう。

 剣を振るための魔力、体を動かすための魔力、いろんな魔力が最適に近づいていくのが、スキルなんだろう。ランクスキルが成長していくのは、最適化が中途半端だからなのかもしれない。


「つまり、君は変ってことだよ」

「急な暴言」

「君のスキル取得、理屈としては魔力を吸収して、技術を奪ってるんだろうけど……まぁ、人間じゃないね」

「そっかぁ……」


 褒められているような貶められているような気がする言葉に、若干肩を落とす。


「強い魔物は沢山魔力を蓄えてる。だから、吸収しやすいんじゃないかな?」

「人から手に入れやすいのは?」

「それは簡単だよ。人のほうが一杯スキル持ってるから」


 確かに、技術という面では考える力が高い人間のほうが優れているのは当たり前か。


「ありがとうございました先生」

「うむ、次の授業もしっかりするように」


 じゃあ何で『創剣』はスキルなのかなぁ、なんて思いつつ。

 俺の一回目の授業は終りを迎えたのだった。


 

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