陰キャ高校生が異世界に転移したら最強チートスキルで無双！ クラスのアイドル美少女五人と共に恐怖と羞恥の冒険を生き抜く物語

第1話 奈落の幕開け

私の名前は黒崎悠斗。

十七歳、平凡を絵に描いたような高校二年生だ。

いや、平凡という言葉すら、私には過ぎた装飾かもしれない。

教室の隅で息を潜め、誰とも目を合わせず、ただ時間が過ぎるのを待つ。

そんな私の日常は、まるで灰色のキャンバスに単調な線を引くようなものだった。

クラスメイトたちの笑い声や、廊下を駆ける足音が、遠い世界の出来事のように響く。

私はその喧騒から隔絶された存在。

陰キャ、というレッテルが私の全てを定義していた。

だが、そんな私の人生が、今日、劇的な変貌を遂げることになる。

それは、まるで神の気まぐれか、悪魔の戯れか。

いずれにせよ、私の知る世界は、音もなく崩れ去ったのだ。

昼休み。

私はいつものように、教室の後ろの席で弁当を広げていた。

母の手作り弁当は、いつも少し塩気が強い。

それでも、その味に慣れてしまった私の舌は、他に何を求めようもない。

周囲では、クラスメイトたちが楽しげに談笑している。

その中心に、いつも彼女たちがいた。

桜庭彩花。

長い黒髪が陽光を浴びて絹のように輝き、瞳はまるで星屑を閉じ込めたような美少女。

彼女の笑顔は、教室全体を春の花園に変える力を持っていた。

次に、陽葵ひなた。

金髪のツインテールが揺れるたび、まるで太陽の欠片が踊っているようだ。

彼女の元気な声は、どんな暗い気分も吹き飛ばす魔法のようだった。

水瀬涼香。

クールな雰囲気をまとい、銀色の髪をポニーテールに束ねた才女。

彼女の鋭い視線は、まるで心の奥底を見透かすようで、私はいつも目を逸らしてしまう。

星宮真由。

ふわふわの栗色髪と、柔らかな笑顔がトレードマークの癒し系。

彼女の声は、まるで子守唄のように心を穏やかにする。

そして、白雪玲奈。

まるで雪の精霊のような白い肌と、氷のような青い瞳を持つミステリアスな美少女。

彼女の周囲には、いつもどこか近寄りがたい空気が漂っていた。

この五人は、クラスの、いや、学校全体のアイドルだった。

男子たちの憧れの的であり、女子たちの羨望の対象。

私のような存在とは、まるで別の次元に生きているかのようだった。

「ねえ、彩花！ 次の文化祭、何やる？」

陽葵の弾んだ声が、教室に響く。

「うーん、喫茶店とかどうかな？ メイド服着てみたい！」

彩花が笑いながら答える。

その声は、まるで鈴の音のように澄んでいた。

「メイド服かぁ。彩花なら絶対似合うよ！」

真由が目を輝かせて言う。

「涼香はさ、何かアイデアある？」

陽葵が涼香に振ると、彼女は本から目を上げ、軽く肩をすくめた。

「私は何でもいいよ。面倒じゃなければ。」

涼香の声は、冷たい泉のようだった。

「玲奈はどう思う？」

彩花が白雪玲奈に尋ねる。

玲奈は窓の外を見つめたまま、静かに答えた。

「……静かなのがいい。」

その声は、まるで冬の夜の静寂を思わせた。

私はそんな彼女たちの会話を、遠くから眺める幽霊のように聞いていた。

彼女たちと私の間には、越えられない壁がある。

それが私の現実だった。

だが、その瞬間だった。

突然、教室全体が眩い光に包まれた。

まるで太陽が教室の中に落ちてきたかのような、目が眩む光。

私は思わず目を閉じ、腕で顔を覆った。

「きゃっ！ な、なに！？」

彩花の悲鳴が聞こえる。

「うわっ、眩しい！」

陽葵の声が続く。

「これは……何！？」

涼香の冷静な声にも、わずかな動揺が混じる。

「みんな、落ち着いて！」

真由が叫ぶ。

「……っ！」

玲奈の声は聞こえなかったが、彼女の気配が近くで揺れた。

光が収まるまで、どれほどの時間が経ったのか。

私が目を開けたとき、教室は消えていた。

いや、教室どころか、私の知る世界そのものが、跡形もなく消滅していた。

目の前には、広大な森が広がっていた。

巨大な樹木が空を覆い、地面には苔と未知の花々が咲き乱れている。

空は不思議な紫色に染まり、遠くには巨大な月が二つ、浮かんでいた。

「ここ……どこ？」

私は呆然と呟いた。

声は震え、まるで自分のものではないようだった。

「悠斗くん！？」

彩花の声に振り向くと、彼女たちがそこにいた。

五人とも、制服姿のまま、呆然と立ち尽くしている。

「桜庭さん……みんな、なんでここに？」

私は混乱しながら尋ねた。

「わ、わからない！ 急に光が……それで、ここに！」

陽葵が声を震わせる。

「これは……異世界転移？」

涼香が冷静に呟く。

彼女の言葉に、皆が一斉に彼女を見た。

「異世界転移って、アニメとかの！？」

真由が目を丸くする。

「そんな馬鹿な……でも、この景色、地球のものじゃないよね。」

彩花が辺りを見回しながら言う。

「……嫌な予感がする。」

玲奈が静かに呟く。

その言葉が、まるで予言のように私の心に突き刺さった。

その時、森の奥から、けたたましい咆哮が響いた。

地面が揺れ、鳥のような生物が一斉に飛び立つ。

私は反射的に身構えたが、足は恐怖で動かなかった。

「な、なに！？ あの音！？」

陽葵が叫ぶ。

「モンスター……！？」

彩花の声が震える。

突然、木々の間から巨大な影が現れた。

それは、まるで狼と熊を掛け合わせたような怪物だった。

体長は軽く五メートルを超え、牙は剣のように鋭く、目は血のように赤く光っていた。

「ひっ……！」

真由が小さな悲鳴を上げ、後ずさる。

「逃げて！ みんな、逃げて！」

涼香が叫ぶが、誰も動けない。

恐怖が、私たちの足を地面に縫い付けていた。

その時、私の頭の中に、機械的な声が響いた。

『システム起動。ユニークスキル《無限の適応》を付与しました。』

「え……何？」

私は思わず呟いた。

声は私にしか聞こえていないようだった。

『《無限の適応》：あらゆる状況、敵、環境に瞬時に適応し、最適な能力を獲得するチートスキル。現在の状況に応じ、戦闘能力を最大化します。』

次の瞬間、私の体が熱くなった。

まるで全身の血が沸騰するような感覚。

視界がクリアになり、恐怖が消え去る。

代わりに、圧倒的な自信が胸に満ちた。

「悠斗くん！？ 何！？ どうしたの！？」

彩花が叫ぶ。

私は一歩前に出た。

怪物が咆哮を上げ、私に向かって突進してくる。

だが、私は動かなかった。

いや、動く必要がなかった。

私の右手が自然に動き、虚空を握る。

すると、突然、光の剣が私の手に現れた。

それは、まるで星の光を凝縮したような、美しくも恐ろしい武器だった。

「ふっ……！」

私は軽く息を吐き、剣を振った。

一閃。

光の刃が空を切り、怪物は一瞬で二つに分断された。

血飛沫が飛び散り、地面に赤い染みを作る。

怪物は断末魔の叫びを上げ、倒れた。

「は……！？」

陽葵が呆然と呟く。

「うそ、だろ……悠斗くん、今の、なに！？」

彩花が叫ぶ。

「か、かっこいい……！」

真由が目を輝かせる。

「……信じられない。」

涼香が呟く。

「……あなた、何者？」

玲奈の冷たい視線が私を貫く。

だが、その時、私は彼女たちの声に答える余裕もなかった。

なぜなら、森の奥から、さらに多くの咆哮が聞こえてきたからだ。

木々が揺れ、地面が震える。

次の敵が、すぐそこに迫っていた。

「みんな、俺の後ろにいろ！」

私は叫んだ。

光の剣を握り直し、新たな戦いに備える。

だが、その時、彩花の小さな声が聞こえた。

「……うっ、だ、だめ……！」

彼女の顔は真っ赤になり、制服のスカートが濡れているのが見えた。

恐怖のあまり、彼女は失禁してしまったのだ。

「彩花！？ 大丈夫！？」

陽葵が慌てて駆け寄る。

「み、見ないで……！」

彩花が泣きそうな声で叫ぶ。

その瞬間、さらに別の咆哮が響き、新たな怪物が現れた。

今度は、巨大な蜘蛛のような姿。

その姿に、真由が悲鳴を上げた。

「いやっ！ やだ、やだ！ 怖い！」

真由もまた、恐怖で足を震わせ、地面に水たまりを作ってしまった。

「くそっ、まとめて相手してやる！」

私は剣を構え、怪物たちに立ち向かった。

こうして、私たちの異世界での戦いが始まった。

私のチートスキルが、この世界でどれほどの力を発揮するのか。

そして、彼女たちがこの恐怖を乗り越えられるのか。

まだ、何もわからない。

ただ一つ確かなのは、この物語が、簡単には終わらないということだ。