【昼休みシリーズ】第三話 「午後への小さな準備」
午前の仕事を終えた翔は、大きく伸びをした。
今日もなんとか乗り切ったけれど、午後に控えている課題発表のことを考えると、少しだけ気が重い。
「ふぅ……」
ついこぼれたため息を聞きつけたのか、隣の席に座っていた田辺が、ちらりと翔の方を見る。
「午後、発表だろ? ちゃんと準備したのか?」
「まあ……一応はね。でも、やっぱり緊張するな」
午前中に確認したメモを頭の中で繰り返しながらも、どこか落ち着かない。
そんな自分の様子を察したのか、田辺はさりげなく話題を変えた。
「ところでさ、最近あのゲームやってる? 『スローライフの森』ってやつ」
「ああ、あれか。癒されるって評判の……まだ手をつけられてないんだよね」
「今ちょうどイベント期間でさ、島に新しい施設を建てられるんだ。結構ハマるぞ」
普段は仕事の話が多い田辺から、こんなゲームの話題が出るのは少し意外だった。
けれど、そういった「何気ない話」が、いつの間にか心を軽くしてくれる。
「いいなぁ。こういう時こそ、のんびりできるゲームって必要かもな。
仕事終わりにゆっくりやってみようかな」
「そうだな。発表終わったらご褒美ってことで」
笑い合いながら、二人はいつもの食堂へ向かう。
カレーの香りが漂う中、少しずつ緊張も和らいでいく。
「そういえば、今日のメニューは日替わりの唐揚げ定食らしいぞ」
「お、いいね。午後も頑張れそうだ」
短い昼休みの間にも、こうして少しずつ心の準備が整っていく。
午後に向けて、背筋を伸ばしながら――。
(つづく)
歴史書六韜を抱えて信の道 高見 翔 高見 翔 @kushoukakuyom
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