第4話

 一方白雪は知らない土地を歩き回り、どうすればいいのか教えてくれる人を探し求めた末に、僻地の中で異彩を放つコンクリートの建物に辿り着いた。


 そこは生活困窮者が集団生活を送る施設で、人に呼ばれて来たがここがどこだかわからないという白雪を中に受け入れてくれた。


 職員は白雪の事情を聞き、まず父親に連絡を入れた。そして父親が事務所に連絡を取ったところ、そのような事実はないと判明した。


 この事件はアイドル活動が原因と見て間違いない。父親は会社での立場から仕事で家を空けることが多く、白雪を連れ去った犯人がいるかもしれない生活圏に戻ることは危険。そう判断し、アイドル活動は終了、学校は休学し、父が費用を出してこの施設で過ごすことが決まった。


 ここで生活することになった白雪は、学校から送られてくる課題をしながら、施設の仕事を手伝った。利用者の立場だから必ずしも仕事を求められる訳ではないのだが、白雪は同じ施設で過ごすメンバーなのだからと進んで手伝った。


 白雪は日常的に家事をこなしていたため仕事ぶりも良く、職員や、ここにいる七人の小柄な利用者たちに慕われた。


 白雪が頑張ると利用者たちも作業を頑張り、施設内には良い空気が流れていた。

 職員が高校卒業後はここで働かないかと誘うほどだった。



 白雪が施設で過ごす間、美麗はアイドル食いの男と白雪が関係を持っていたという噂を流した。しかし炎上上等のグループを応援するファンたちは、白雪が清純でないことを知っても評価を下げなかった。白雪もこのグループのメンバーだったかと納得した。


 その後白雪のグループ脱退が発表された。

 最初は悲しんでも時間が経てば風化するだろう、と美麗はファンの掲示板をチェックした。


 そして美麗が掲示板で一番見た目のいいアイドルを聞くと、ファンたちは次々に白雪と答えた。


 ファンたちは白雪への未練を断ち切れず、インターネットのあらゆるアイドルのサイトから白雪の姿を探し始めた。


 どのグループの情報を見ても白雪らしき人物はデビューしていないが、あるとき施設のサイトに掲載された写真で白雪らしき人物が写っているのが確認された。


 ファンは思いがけない場所で見つけた白雪に狂喜乱舞し、その施設の性質から現在の白雪についてはそっとしておこうと約束した。そして白雪の短い活動の思い出を何度も振り返っていた。


 白雪は心を打ち砕かれたと思いきや、写真では心穏やかそうに暮らしている。


 惨めなやつらに囲まれて生活しているのに、白雪は全く苦しむ様子を見せず、ファンは白雪に幻滅しない。


 今の思い出のままでは白雪は永遠にファンの心の残り続ける。


 もっと完膚なきまでに社会的に白雪を殺さなければならない。


 美麗は殺意を固め、今度は自らの手で手を下すことに決めた。

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