第3話
「白雪さん、急だけど実は社長から大事な話があるんだ。今から社長のところに行くから車に乗って欲しい」
車窓を開けた男は関係者のふりをして車に乗るよう促した。
見覚えのない男の話に普通なら警戒するが、人を疑うことを知らない白雪は「それは大変です」と乗り込んでしまった。
車に乗っている間、「わざわざ迎えに来るだなんてそんなに大事な話なんですね」「事務所に何かあったのですか?」としきりに心配していた。
白雪の知らない遠い場所に行こうとする男は、「僕もよく知らないんだ、事務所ではちょっと話せないから違うところに行くよ」などと適当に話を合わせていた。
それから白雪は、社長さんが直接話すなら社長さんの身に大事はないのですね、と関係者の身を案じていた。
一目につかないところを見つけたら犯行に移ろうと考えていた男は、意思を固めることなく、ひたすら車で流していた。
やがて男は人気のない郊外にたどり着いた。
犯行に良さそうな場所に着き、車外に出ると、白雪も後から出て来た。
そしてぶらぶらと歩む男に白雪がついていく。白雪は都内と違って自然の残る光景に無邪気に感心していた。
男は白雪の人を疑わない性格と妹を彷彿とする
ような表情に情が湧いてきた。
妹と同じような少女に酷いことはできない。
男は白雪に、忘れ物を取りに行ってくるからこの辺を歩いて待っているようにいい、白雪を置いて車に戻り走り去った。
そして陰謀の中心地、東京24区に戻って来た男は、夜の繁華街に足を運んだ。
街の中で手首を切り力なく壁にもたれかかる少女を見つけ、少女に声をかけて一拭いの血をもらった。
そして血を拭ったティッシュに自分の体液をつけて、美麗の元に行き差し出した。
それを見た美麗は喜んでひったくり、男に約束の金を渡した。
男は恐ろしい思いで美麗の元を去る。
美麗は携帯からある人物に電話をかけた。
美麗の家に真面目そうな20代の青年が来て、美麗の顔を見ると嬉しそうにする。
そして二人は一夜を共にして、美麗は「こういうことをするのは初めて」と言い、最後に血の付いたティッシュを見せつけた。
当然ながら行為の経験のある美麗は必ずしも破瓜で血が出るわけでないと知っていた。白雪の血を求めたのは白雪が手酷く扱われた証拠が欲しかったのである。
大手企業に勤める将来有望で純粋な青年は、美麗の言葉を信じて喜んだ。
白雪の純潔を自分のものにした美麗は、今日の噂話を流せばファンからの評価も自分のものになるとほくそ笑んだ。
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