正しく美しい白雪
夢枕
第1話
都内某所のライブスタジオ。そこではアイドルグループがライブを行なっていた。
歌の合間にアイドルが客席にコールをしていき、最後に一人のアイドルが前に出て声を上げる。
「鏡よ鏡、世界で一番美しいのは〜」
すると皆が自分の
ファンからの答えを聞いた
ライブ後の物販が終わり、本日のプログラムは終了して後はもう何もないが、一部のファンが会場近くの広場に集まって交流していた。
ライブの感想を思い思いに口に出す彼ら。そこから少し離れたところで影から美麗が覗き込んでいた。
「鏡よ鏡、世界で一番美しいのは〜」
ライブの時とは違う声でそのコールを発すると、ファンたちはライブの時と同じように「みれい」と答えた。
美麗は時々、ファンの集まりにこっそりと声をかけて反応を楽しんでいた。最初の内は急に声がして驚いていたファンだったが、ライブ後の熱気に浮かされており、内輪で盛り上がるのが好きな彼らは、「みれい」と声を上げ、引き続きライブの時の美麗を褒め称えるのだった。
美麗はインフルエンサーを集めたアイドルグループ「誘惑サーペント」に所属し、そのルックスでグループでも一番の人気を誇っていた。そして美容にかかる資金を稼ぐため夜は高級ラウンジで働いている。
美麗は生まれた時から整った顔をしており、美しさを磨くことに全てをかけていた。子どもの頃から今に至るまであらゆる美容法を試し、化粧品も服も全て一流、美の頂点を目指して美容整形もしていた。
地上波のテレビに出るようなアイドルグループのオーディションにも受かる自信があったが、ファン層が手付かずの可愛さや清純さを求めていて目が肥えてないから自分向きでない、夜職などの過去が知られると大事になるということで避けた。
誘惑サーペントはメンバーにインフルエンサーを集めており、有名人には炎上もつきもの、一芸あれば何でもOKといった価値観のアイドルグループで、SNSでの評価と同時にリアルでの注目を集めたい美麗にはぴったりの船だった。
ある日、ライブの打ち合わせで誘惑サーペントのメンバーが集まった。
プロデューサーが簡単に挨拶をすると、彼は新しいメンバーをスカウトしたと切り出す。
「新しいメンバーは誘惑サーペントを更にバズらせてくれる! じゃ、自己紹介どうぞ!」
「はじめまして。
「白枝さんは
やけに落ち着かず興奮した様子で話すプロデューサーの横で白雪は大人しくしていた。
白雪は顔から足までどこを見ても真っ白な肌で、見る人の目に白々とした光を浴びせてきた。
髪はこの世の黒いものを全て投じたかのように真っ黒で、唇は新鮮な血を花弁に塗り重ねたかのように赤く、頬は赤々と滲んでいた。
人前に立てる容姿の者しかいないこのグループにおいても、白雪の容姿は非常に美しく、異端だった。
プロデューサーが場を離れると、美麗以外のメンバーは白雪を取り囲んで口々に声をかけた。
どこから来たの? 休日は何してる? どんなコスメ使ってるの? 家族はどんな感じ?
質問攻めにされる白雪は、その一つ一つに、一途に、正直に答えた。
そんな白雪がメンバーたちの関心を集めないわけがなかった。彼女らの声は止む気配がなかった。
美麗はその様子を気に食わない思いで見ていた。
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