12後悔の感情

キーーーーーん……


耳鳴りが、世界のすべてを塗り潰していた。

まるで、フラッシュバングを喰らったような感覚。光も、音も、遠くて、近くて、混ざっていて――。


目の前には、倒れたガーフ。

頭からつうっと流れる赤が、信じたくない現実を無理やり押し付けてくる。

さっきまで温もりがあったはずの手には、彼の血がこびりついていた。

それはかつての「光」――希望や優しさを信じたあの頃の光を、ゆっくりと、でも確実に濁らせていく。


「……ホーリー」


震える声で、彼女は呟いた。

血のついた手を、ぎこちなく彼の胸に置いて。

まるで昔のように――あの頃のように。

回復魔法で、全部をなかったことにできると思っていた。


けれど。


魔法陣は浮かばない。

光も、癒しも、何もこない。

ただ、彼の身体は静かに沈黙していた。

動かない。返事もしない。


「ねぇ……なんで、効かないの……?」


もう一度囁く。

「……ホーリー……ホーリー……」


その声は、だんだん泣き声に変わっていった。

涙が溢れた。

彼が立ち上がるのを、信じたかった。

でも、もう動かない。

彼女の手は震え、涙が頬を伝う。


「ごめん……ごめんなさい……」

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