10守るための力

ガーフがナルディアを殴りかかった。

床に押さえつけ、頭を何度も殴りつける。

ナルディアも必死に抵抗しようとするが、力では敵わない。


僕と盗賊は一瞬唖然としていた。けれど、これは流石にやばい。                          すぐに飛びかかって、ガーフを引き剥がした。


ナルディアは床に伏したまま、髪は乱れ、唇は切れ、息も荒い。

それでも彼女は、半身を起こし、震える手で口元の血を拭う。


「なんで…なんであんた…ッ!」

涙、怒り、悔しさ――混ざった声が震えながら漏れる。


握った拳から、知らぬ間に魔力が漏れはじめていた。

「ルーは、何もやってないんだから…!!」

本当は、自分でも少し疑っていた。けれど、信じたくなかった。


その瞬間――

ゴッ、と重たい音が響いた。

爆ぜたのは、彼女の右手だった。


オレンジの光と熱風がガーフを吹き飛ばす。

「っ……!!」


ガーフの体が壁際まで一瞬で叩きつけられた。

その瞬間、鈍く、低く響く音――ゴッ……。

頭が壁に叩きつけられた音だった。


……沈黙。


誰も何も言えない。

ナルディア自身も、自分が何をしたのか分かっていなかった。


――いつものように、口喧嘩の延長で魔法が出た。

だけど今回は、ガーフはスッと姿を消してリスポーンポータルに戻ることはなかった。


頭から血を流し、ぐったりと倒れたまま。


「え……わ、私……? 今……なにを……えっ……?」

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