■ Weekend: What She Couldn't Say

***



 よし……っ。



 最終ページまで解き終えて、

 テキストを閉じる。


 時刻は午後7時。


 今日は休日だから、学校もない。

 食材は金曜日の帰りにまとめ買いした。


 

 だから、朝から夜まで。

 ゆっくり試験勉強ができた。


 もちろん、途中でお昼食べたり、

 洗濯物したりもしてたから、

 “勉強漬け” って訳じゃなかったけど。



 それにしても……。



「う~~。肩凝った……。」



 軽く肩を動かすと、

 ゴリゴリとした感覚。


 なんか私、おばあちゃんみたい。



 今日は、出かける気もなかったから、

 服装も部屋着のままだし。


 髪も梳いてないし。

 顔だって……。


 ……うん。こんな姿。

 間違っても幡豆さんには見せられない。



 慌ててミラーを取り出して。

 絡まった毛先をほぐしてみたりして。


 溜息を吐く。



 何やってるんだか、私。



「……。」



 ……明日はたぶん、あの人が帰ってくる。



 私は「試験勉強しないといけないから」って言って、部屋に引きこもるつもりだし。


 あの人も「市役所に手続きに行く」とか電話で言ってたし。



 だから余計な接触も少ないと思うけど。

 それでもやっぱり、憂鬱なものは憂鬱。


 あの人が家にいると思っただけで。

 きっと勉強にも身が入らない。



 だとするなら……。



「ん゛~~~~っ。」



 背筋を伸ばして、軽くストレッチ。


 やっぱり今日のうちに、

 もう少しだけ進めておこう。



 でも、まだ晩ごはん食べてないし。

 お風呂にも入りたいし。


 あと……。


  

 ♪♪~



「っ!?」



 びっくりした……。

 今、意識飛んでたかも。私。


 自分のスマホの着信音に驚くなんて……。

 やっぱり、疲れてるのかな。



「あ♪」



 画面に表示された名前を見て。

 心が躍る。



(……やっぱり、今日はここまでかな。)



 まだ晩ごはん食べてないし。

 お風呂にも入りたいし。


 それに試験勉強も、

 もう少し進めないといけないけど。



 わかってる。

 全て、理解してる。




 でも。





 今は何より先に、

 メッセージの返事をしたかった。





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