■ Weekend: What She Couldn't Say
***
♪♪♪
36度7分。
まだ少し怠いけど……
どうやら熱は下がったみたい。
でも。
まさか、だった。
幡豆さんに会うとは思わなかった。
風邪ひいてるの見抜かれてしまった。
毎日顔を合わせてるからかな?
それでも最初は「大丈夫です」って。
「大したこと無いですから。」って。
そう言って、帰るつもりだったのに。
幡豆さん、買い物袋を持ってくれて。
「送ってくから」って言ってくれて。
その好意に……甘えたくなってしまって。
……その結果。
成り行きで、そのまま。
幡豆さんを家の中まで上げてしまって。
しかも、お昼ご飯を作ってもらって。
しかもあろうことか、
パジャマ姿まで見られて。
……パジャマは、自分で着たんだけど。
きっと熱のせいで、頭がぼぅっとしてて。
うっかり着てしまったんだ。
そう思うことにする。
とにかく、このことは万が一にも、
あの人には知られてはいけない。
もし知られたりしたら。
一体どんな言葉で責められるか……。
想像するのも嫌だ。
……。
嫌。
考えたくない。
せっかく楽しい思い出に浸っていたのに。
どうして、いつもいつも。
暗い感情に落ちて行ってしまうんだろう?
私は……。
「えっと……。」
とりあえず、幡豆さんには
ちゃんと報告しないと……かな?
気を取り直して、
枕元に置かれたスマホを手に取る。
メッセージアプリをタップして。
昨日登録した、幡豆さんの連絡先を――
……そこで再び、躊躇する。
ついに、私と幡豆さんは、
連絡先まで交換する仲になってしまった。
これ以上、近づいて良いんだろうか?
だって、私は……。
……再び沈んでいく感情。
どうして私は、
いつもこうなんだろう。
どうして私は、こんな思いを……
いつも、しなければならないんだろう。
……。
……でも。不思議なことに。
今日は顔を上げることができた。
近づきたいと、ハッキリ思えた。
ここまでお世話になったんだから。
「熱が下がりました。」ってことくらい、
ちゃんと伝えるべきだよね?
きっとそれは間違ってない。
そう自分に言い聞かせる。
そう。
それだけのこと。
これは、報告だから。
それ以上でも以下でも、ないんだから。
……そうして自分を納得させると。
私は、幡豆さんにメッセージを送った。
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