■ Weekend: What She Couldn't Say

***



「来週は戻ってこれないと思うけど、お願いね。」


「……はい。」



 いいから、さっさと行ってよ……。

 と、心の中で呟く。



 玄関まで来ても、なお私に

 小言を続ける “この人” を送り出せば。


 私は再び、平穏を取り戻せる。

 錆びついた首輪から、解放される。



「戸締りはきちんとするのよ?あと夜更かしは……」



 まだ何か言ってる。

 もう、うんざりなんだけどなぁ……。



 ……でも。

 とにかく今は、我慢して頷くしかない。


 もし、話を聞いていないと気づかれたら、

 また厄介なことになるから。



「じゃ、行ってくるから。いい?模擬試験近いんだから、気を抜かないのよ?」


「はい……。」



 ガチャン、と音を立てて。

 玄関が閉まった。


 ……。


 

「はぁ……。」



 力が抜けて、思わず玄関にへたり込む。

 やっと終わった……。



 疲れた。

 何も考えたくなかった。


 ……今日は早めに寝てしまおう。



 いつもならまだ

 机に向かっている時間だけど……。


 今日はたぶん、集中できそうにない。



「……。」



 2日間、本当に長かった。

 これで私は……私に戻れる。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る