大人のための初等科学

curuss

本文

1 科学において厳守のルール


「そうなんだから、そうなんだ」


 これが絶対の掟です。

 観測結果は全てに優先されるであり――


 どんなに立派な理論も、観測結果に反していたら駄目


 となります。



2 数学でいうところの「定義」にあたるもの


 科学にも、数学における「定義」に近い、大前提や世界の法則と呼べるものが存在します。

 あまり聞こえは良くありませんが――


「よく分からないけど、とりあえず、そういうものだとしておこう」


 というルールです。


 たとえば数学の定義では1、2、3、4、5……と続く数が自然数とされ――

 1+1は次の自然数である2、といったルールが設定されています。

 これは人為的に決められた前提であり、議論や理論はそこから始まります。


 ところが科学の世界での「定義」は、決して絶対ではありません。

 時代と共に見直され、更新され続けてきました。

(数学は理論を扱う分野ですから、定義が絶対かつ不変です)


 実例を挙げると、いまや古典とされるニュートン力学では――


「空間と時間は絶対的で、誰にとっても共通」


 とされていました。

 しかし、アインシュタインの相対性理論により、それは否定され――


「宇宙で不変なのは光速だけ」


 と新たな前提へ書き換えられました。

 さらに現代では量子力学の登場により、また揺らぎつつあります。


 ……科学とは仮の「定義」を否定し、更新し続け、最終的にはあらゆる「定義」の捨て去りを目指す学問なのかもしれません。



3 いまのところ「定義」とする他のないもの


・時間は不可逆に、それでいて確かに流れる


 現状、時間の流れない数理モデルは発見されてなく、逆行可能な時間軸モデルも立式不能だとか。

 また「時間は存在しない」という立場の量子力学でさえ、時間が流れる必要あります。



・空間はある


 重力によって歪むのは発見されましたが――

「なぜ、あるのか?」

 という根源的な疑問への回答がありません。



・光速が光速な理由


 一番速いと断定はされてます。

 しかし、なぜ光速なのか――299,792,458m / sなのかは、誰にも分かりません。

 同じく定数扱いするしかないものにプランク定数、電気素量、重力定数なども。



4 二つの区分


 踏まえると科学では「定義」と、それ以外――「実在」に分けて考えられます。

 そして「定義」でなければ、「よく分からないけど、とりあえず、そういうものだとしておこう」ではのです。


 なにより「実在」からは、観測や実験によって干渉できます。

 あくまでも「定義」は仮定したルールであって、それは実体を伴いません。

 ですが「実在」からは現実的な現象といえます。



5 三つの態


 さらに「実在」は、三つの態へ――「場」と「エネルギー」、「物質」へ分けられます。

 それぞれの代表格を挙げていくのであれば―― 

 「場」ならば光や電子を左右する電磁場

 「エネルギー」であれば熱や電気

 「物質」なら質量のあるもの全般

 となります。


 では、なぜ三つに分けるのか。


 相対性理論からE=mc2――つまり、「エネルギー」と「物質」は同じものと証明されています。

 なので「場」も、この二つと同じと説明したいのですが――


 光などは「質量の無いエネルギーを持った粒子」であり、「エネルギー」でも「物質」でもなかったりします。

 つまり、「場」は「場」として認識しないと、著しく理解を阻害してしまうのです。


 また、これらを同じものとするのが「統一理論」だったりします。

 まだまだ先端理論であり、おそらく正しかろう止まりですが――


 現状でも、これら三つの態は互いに変換可能です


 例えば「物質」を燃やし「エネルギー」と共に光――「場」を発生させるなどで。

 そして未来の技術が必須になりますが、この逆すら理論的には成り立ちます。


 よって同じ「実在」の異なる相として、三つの態と称しています。



6 「定義」に最も近いのが「場」


 過去に「定義」から「場」へ更新されたものに、質量があります。

 想像しやすいと思いますが、それまで質量は――


「質量を持つから、持つんだよ」


 と「定義」の扱いでした。

 しかし、光子など質量を持たない粒子らの存在が、様々な矛盾を。

 また電磁場において――


 電子の影響を受けるものと、受けないものがある


 な観測からヒントを受け――


 質量子の影響を受けるものと、受けないものがあるんじゃ?


 との仮説が立てられました。

 つまり、電磁場から電荷を与えられるかのように、質量場から質量を与えられてると考えた訳です。

 この質量を与えている場がヒッグス場であり、その媒介粒子がヒッグス粒子です。

 ちなみに陽子衝突実験でヒッグス粒子の崩壊パターンが検出され、この仮説は立証されています。


 ……もしかしたら時間場や空間場――あるいは統合された時空場なども、あるのかもしれません。



7 「エネルギー」に近い「場」


 対照的に、限りなく「エネルギー」に近い「場」もあります。

 それは電磁場というか、電気場です。

 電子は質量とエネルギーを持つ粒子なので、もう限りなく「エネルギー」に近い振る舞いをします。


 ですが、あくまでも「場」です。

 その理解に粒子を介さなきゃならない段階で、もう「エネルギー」の領域に留まっていません。



8 「場」と「粒子」の把握案


 最も「場」を直観的に例えるのなら、漫画などにでてくる「念力」だったりします。

 なんと思念だけで物理現象を起こすというオカルトですが、これが「場」の説明に最も近いのです。

 条件を整えると、そういう不思議な力が発生する。

 ものによっては影響距離が宇宙全体だったり、形や物理的な実態がなくても作用するけど――


 そういうものだと理解するのが、もっとも正しい


 からです。

 また、これが「場」は「定義」に近いとした理由でもあります。

 さらに「場」の力を介在する粒子は、波であり粒であると説明されますが――


 粒子という妖精さんがいる


 と考えるのが、実は最も誤解のない理解だったりも。

 なぜなら粒子というのは「波打ってる粒」じゃないし、かといって波でも粒でもなく、そのどちらでもあります。

 ……イメージ湧きました?


 ヒッグス場という念力は、ヒッグス粒子という妖精さんを介し、万物に質量を与えている


 この方が正しい理解に近いといえます。

 なぜなら、すでに扱っているのは量子力学のスケールであり、全ては数学的に記述されます。

 「モノ」に例えての理解では、常に間違えてしまうからです。


 たとえば粒子はスピン数で分類されてますが、あれは2×スピン数+1のモードを持つという意味で――


 粒子が実際に回転している訳じゃありません

 

 また、この世のほとんどはスピン1/2の粒子となりますが、それは二つのモードを持ち得るというだけですし――


 そのモードだって人間の把握力では区別できません


 やはり「スピン1/2な妖精さんは、二つのモードがあるんだね」の方が、正解に近いくらいです。

 突き詰めたら――


 「場」は「場」なんだよ!


 でしょうか?



9 学習の始まりへ


 電流を学ぶとき、水路に例えることがあります。

 あれはあれで理解を簡単にしてくれますが――


 ようするに電磁場だから「場」であり、物へ例え過ぎてはいけません


 例え話での把握が困難になったら、そのイメージは捨て去らねばなりませんし――

 直観的には奇妙でも「その「場」は、そのように振る舞うのだな」と素直に受け取った方が良かったりもします。

 なぜなら――


 そう振る舞うというのは、観測結果だからです。



10 水槽の魚


 ここからは誰もが知りたいであろう――


「万物の最小構成要素は何か?」


 を説明しようと思います。

 残念ながら原子は、最小構成要素から滑り落ちてますし、それが原子核と電子というのも、まだ途中! さらに小さな世界があるんです!


 しかし、これの学びは、かなりの人が躓きがち。

 なぜなら原子や原子核より小さな世界を把握しなくてはならず、それで「場」と粒子を扱い始めます。

 ……なのに大多数の先生は、「場」の説明なしで始めるんですよね。


 そして、さらに「場」や粒子の把握に加え――


 確率的に存在する


 という表現も。

 「陽子でできた原子核の周りを、電子が確率的に存在する」の、アレです。

 これって実は、スケール的にも起きていること的にも、「場」だったりします。

 また「場」として認識してないと、不思議なことしか起きないので頭がこんがらがってしまいます。

 さて、この「確率的に存在する」ですが、イメージ的には――


 凄く大きな水槽の中心あたりに原子核が浮いている


 と考えて下さい。

 まず原子核があるので電子という魚が棲んでいるのが担保されます。

 なぜなら、原子というものは陽子(+)と電子(-)の電荷が釣り合ってこそ安定して存在できるからです。


 では、いま魚は水槽のどこにいて、どのように泳いでいるのでしょう?


 ……こんなの難しく考えたらダメです。

 素直に考えて下さい。


「そりゃ水槽のどこかにいるだろうし、まあ魚が泳ぐように泳いでるだろうよ」


 が正解ですし、それを量子力学的に小難しく言うと――


「確率的に存在し、波のように振る舞っている」


 になります。

 そして水槽へ手を突っ込んで魚を掴み取れば――


「魚(電子)が粒として特定された」


 とも。

 これも小難しくは場の励起といいますが、とくに凄いことは起きてません。


 また、この原子核と電子は、電磁場――光子に拠って両者は互いに縛り付けられています。



11 原子核


 そして原子核は一つ以上の陽子と、中性子でできています。

(中性子単独だとベータ崩壊を起こし、お供の電子を産みつつ陽子へ変わってしまう)

 これらの構成パーツがクォークです。

 そして色んな教本では6つのクォークが、マニアックだと反クォークまで紹介されますが――


 アップクォークとダウンクォーク以外は、天然で存在しません!


 つまり、全12種類中、一般教養範囲は二つだけです。

 また、アップクォークとダウンクォークは、それぞれ2/3と-2/3の電荷を持ちますが――


 それはペアでなくトリオでしか安定しないから


 つまり――


 アップ(2/3)+アップ(2/3)+ダウン(-1/3)で陽子(+1)


 アップ(2/3)+ダウン(-1/3)+ダウン(-1/3)で中性子(±0)


 の二パターンのみ!

 ようするにプラスマイナスなんだけど、それだとおかしいから特別表記なだけです。


 これらは強い力(グルーオン場)でグルーオン粒子を介して結びついています。


 ……また「場」かよと思われたでしょう。

 でも、だいたい「場」なんだもの!


 なので原子核も水槽の比喩ができます。

 つまり、普段は波のように振る舞っていて、粒のように特定されるわけです。

 しかし、電子に比べて原子核は非常に大きく、量子力学的な揺らぎも小さく――水槽も小さくなります。


 ……実のところ万物は原子で構成されていて、それらが量子力学的な以上、なにもかもが波であり、粒であるとも。

 ただ、分子より大きくなる辺りから、揺らぎは極端に小さく、ほぼ無視可能となります。



12 ついでに電子


 電子も細分化可能です!

 専門的にはレプトンと呼ばれ、6つの種類が!

 ……しかし、そのうち三つはニュートリノで、レアな上に原子構成には関わりません。

 というか検出すら至難で、よく分かってもいなかったり

 残りの三つのうち二つは、例によって人工粒子で、天然で存在しない上、極端に短い寿命しかありません。


 つまり、事実上、電子は電子しかないのです。

 そして原子が原子核と電子で構成され、原子核はアップクォークとダウンクォークで構成ですから――


 万物はアップクォークとダウンクォーク、電子で出来ている


 といえます。

 ……これの理解に必要ないクォークとレプトンを15種類も教えるのは、さすがに理不尽でしょう。

(念の為に付記しておくと、いまのところクォークや電子は分解できてません)


 そして順序が逆となりますが、それらの粒子はスピン1/2!

 あらゆる物質は、スピン1/2の粒子だけで構成されているとも!



13 実は整数スピンは全部が力


 じゃあ、「場」は万物でないのかよ?

 と思われるでしょうが――


 万物――「物質」は、スピン1/2の粒子で出来ていて、他のスピン――整数スピンの全ては力である


 だったりも。

 というか整数スピンな粒子は少なくて――


 フォトン(光子)  スピン1  電磁力の媒介粒子


 クルーオン     スピン1  強い力の媒介粒子。陽子と中性子を作る


 ヒッグス粒子    スピン0  質量を与える


 重力子(仮説)   スピン2  重力を媒介する仮想粒子(未発見)


 Wボソン、Zボソン スピン1  後述


 だけだったりも。

 特にWボゾンはZボゾンは――


 長らく理論上存在が必要とされていたが、めでたく生成に成功

 しかし、天然状況では、宇宙天体イベントでしか発生しない


 であり、一般教養レベルでは深く考えなくてOKです。


 これを踏まえたらスピン1/2以外――整数スピンの粒子は、すべて「場」の力を伝達する粒子といえますし――


 スピン1/2の粒子は重なり合わないので、これが理由で「物質」であるとも。

(パウリの排他原理といいます。これまた色々と物証があり、成立済みです)



14 なんでもかんでも「場」かよ!


 そうだよ?

 最初に三つの態は互いに変換可能といいましたが――


 すでに全ては「場」として数式表記できます


 これは「エネルギー」も「物質」も、量子力学では「場」として表記可能ということ。

 もはや量子力学では全てが「場」ですし、この世界認識を――


 「量子場理論」といいます



※ なぜ統一理論が未完成なのか?

 ミクロなスケールを扱っていた量子力学には、重力が存在しません。

 なぜならミクロなスケールでは無視可能なほど弱いから。

 しかし、マクロなスケールでは重力が影響してきますから――


 マクロとミクロの力学を統一するために量子力学は、新たに重力というパラメータを追加せねばならなくなった


 ということです。

 もう2Dから3Dへの移動にも近いですから、凄い先生たちでも難航です。



 万物の最小パーツも粒子と、それを縛る「場」と介在粒子!

 「エネルギー」でも「物質」でもないものは「場」! それも介在粒子が!


 結局、世界は粒子と「場」で出来ているのです!



15 「時間」の説明から逃げるな!


 すでに「定義」とする他がないって説明したじゃないですかぁッ!

 が、それでも量子力学的な時間の解釈を。

 時間とは関係性――ようするにパラメータの一つとなります。


 これを将棋やチェスで例えてみましょう。

 ゲーム開始から駒を動かした履歴――棋譜は認識可能です。

 しかし、存在はしません。

 また現在から動かし得る範囲――未来は予想可能ですが、やはり実在はしていません。

 あるのは、ただ今という盤面だけ。

 つまり、量子力学でいうところの関係性――駒と駒の相関関係だけとなります。


 しかし、それでも波動関数の収束――現実を数式化するには、時間が流れる必要があります。

 また時間の逆行が許されたり、なくても良い数理モデルは発見されてません。

 ……だから、とりあえず「定義」で棚置きしてる訳ですし。

 


 最後に科学的な世界認識とは――


 「定義」 ; 「場」 ⇔ 「エネルギー」 ⇔ 「物質」


 であり――


 ようするに全ては粒子と「場」である


 と提示し、今回は終わろうと思います。

 ……蛇足ですが、学習困難な時は「自分が学ぼうとしいてる単元は、何であるか確認」すると理解への道標になるかと。

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