第三章 恋は実る

第一話 初めてのパンケーキ

 久しぶりの休日。

 私は焼肉プレートに続き、ホットプレートを作った。


 「サラ、パンケーキを作るわよ」

 「パンケーキ? 何ですか? それは」

 

 パンケーキとは、卵と牛乳、薄力粉とベーキングパウダー、グラニュー糖を使って作ったケーキ。この世にはまだない代物だ。

 私も数回しか作ったことがない。よし、今日のお昼ごはんのために頑張って作るぞ。


 「サラ、卵と牛乳と薄力粉はある?」

 「卵と牛乳はありますが、薄力粉とは?」

 「小麦粉のことよ。あとお砂糖は?」

 「ありますよ」


 ベーキングパウダーはこの世にないから創造の力で作るしかない。確か、重曹とクエン酸を少量混ぜ合わせれば良かったはず。よし、作ろう。


 「サラ、卵を卵黄と卵白に分けて」

 「かしこまりました。早速分けますね」

 

 ベーキングパウダーはこれでよし。

 

 「いでよ。ベーキングパウダー」


 紙の上にベーキングパウダーが現れた。しかも、紙袋にちゃんと入っている。不思議だ。


 「サラ、分けた?」

 「はい、こちらが卵黄で、こちらが卵白です」


 私のパンケーキ作りが始まった。

 卵黄と牛乳、振るった小麦粉とベーキングパウダーをよく混ぜ合わせる。一方、卵白は砂糖を加えてメレンゲにし、よく混ぜ合わせた卵黄などに少し加え、更に混ぜ合わせる。

 そして、残りのメレンゲを混ぜ合わせたものに加え、ふわふわの生地を作る。次にホットプレートに油を敷き、生地をのせて熱湯を少々加え、蓋をして弱火でじっくり焼く。

 最後に底に焼色がついたら優しくひっくり返し、再度熱湯を加えて蓋をして焼けば完成。

  

 「上手くできたかしら」

 「ふわふわですね。美味しそうです」


 あとはお好みにメイプルシロップをかければオーケー。だけど、食べてみないと上手くできたか分からない。よし、味見してみよう。


 「ひとつ食べてみるわね」

 

 メイプルシロップをかけて食べてみた。ふわっとろだ。


 「結構いけるわね。美味しいわ」


 お皿に分けてフォークを添えた。

 スレナとマリアは自室にいる。サラに呼んできてもらおう。

 

 「サラ、ふたりを呼んできて」

 「分かりました」


 味見用のパンケーキを平らげた。

 結構お腹が膨れるな。二個でお腹がいっぱいになるかも。


 「シルヴィア様、ふたりを呼んできました」


 ふたりとも、寝ぼけた顔をしている。久しぶりの休日だから寝ていたのかな。


 「おはよう」

 「おはよう御座います。遅くまで寝ていてすみません」

 「謝らないで。それより、お昼ごはんを作ったの。食べて」

 

 マリアの目が見開いた。パンケーキを眺めている。


 「このふわふわしたものは?」

 「ふわっとろパンケーキよ。メイプルシロップをかけて食べて」

 「では、頂きます」


 皆で一斉に食べてみた。

 スレナも驚いた表情を浮かべている。初めての食感だから驚くのも無理はない。


 「ふわふわしていますね。まるで雲を食べているようです」

 「初めて作ってみたの。美味しい?」

 「はい、美味しいです」


 マリアがお腹を擦っている。お腹いっぱいになったかな?


 「マリア、お腹がいっぱいになった?」

 「このパンケーキというもの、見かけより量が多いですね。ふたつでお腹いっぱいになってしまいました」

 「そうでしょう。私も味見でひとつ食べたらそうなったわ」

 「でも、美味しかったです。また機会があったら食べたいです」


 スレナとサラも美味しそうに食べている。でも、材料がもうないから作れない。少し残念だ。


 「シルヴィア。そう言えば、この道具は何をするためのものなのですか?」

 「これは、テーブルで調理をするときに使うものよ」

 「以前使った焼肉プレートと同じようなものですか?」

 「焼くことに関しては同じね。だけど、煙が出るわ」


 焼肉プレートは煙の発生を抑える機能が付いている。ホットプレートは煮たり、焼いたりできるけど、煙が部屋中に充満してしまう。それを除けば大体同じだ。

 

 「そうだ。今度、すき焼きを作ってあげる」

 「すき焼き? どんな料理ですか?」

 「煮込み料理よ。お肉と野菜を使うの」

 「美味しそうですね。楽しみにしておきます」


 ホットプレートは焼くプレートの他に、煮るときに使う深型のプレートがある。 あとおまけにたこ焼きプレートも作った。

 粉物を作るのもありかもしれない。たこ焼きパーティーをするのもいいな。

 って、たこがないわね。ここ。


 「ご馳走様でした。美味しかったです」

 「お粗末様でした。ふたりとも、部屋に戻って休んで」

 「いえ、後片付けを手伝います」


 皆で後片付けをした。まあ、お皿とフォークとプレートだけだから早く終わる。


 「では、私達は部屋に戻ります」

 「夕食も私が作るから楽しみにしていて」

 「分かりました。では、失礼致します」


 スレナとマリアが部屋に戻った。

 さて、私はサラを連れて買い物に行こうかな。


 「サラ、一緒に買い物に行きましょう」

 「え? シルヴィア様もですか?」

 「うん」


 サラと出掛ける準備を整え、プリム村へ買い物に出掛けた。

 最初は必要最小限の電化製品を作ろうと考えていたけど、贅沢品まで手を出してしまっている。そんなところがクリフォード様に目を付けられる原因になったのかもしれない。

 私は自由気ままにスローライフを送りたい。けど、ロイ様のことが気になる。


 会いたい。無性に会いたい。


 私の心がそう叫んだ。

 

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