うちの庭にもレモン生ってますけど!【エッセイ】

マレブル

レモン!うちの庭にもなっていますけど!

リアクション出来なかったのが今となっては悔しい。

ん、悔しいのかな。分かんないけど。


マルシェで新宮町産のレモンを売っていた。

新宮町の”いわくま果樹園”のレモン。

プロが作るレモンは、刺々しいすっぱさがない。

でもまろやかでもない、レモン中のレモンって感じ。


当時、1個150円。

福岡市内では「安いね!」「え、福岡産なの?すごっ」と、

みんないいリアクション。財布がポンポン飛び出す。

「得した顔」で買っていく。

目が、レモンよりつやつや輝いてた。


でも「修羅の国」実家のある地域で売ってみたらどうか。

「高っ!」「1個?1個150円?」「カゴ全部で150円かと思ったわ」

声、大きいね。目の前にいるから聞こえてますよ。


妻には、よく「声大きいよ?」と注意される。

ここは私の生まれた地。


スーパーの店員さんにも言うんだろうか。

「ヨーグルト高いね〜」

「このチョコ1箱で648円?買う人おる?あら本当~」


今ならたぶん「米が高いね〜!2倍ばい2倍」って、米売り場で叫んでる。

絶対に聞こえる声量で。


さて、いまだ語り継がれる伝説のレモンおばさま登場。

レモンをひとつ、またひとつ、じーっくり眺める女性がいた。

合計15個くらい、順番に念入りに。

頭の中であの曲が「なんでも鑑定団」。いかん笑ってしまう。


正直、コロナ禍だったので(そんなに触らんでくれ…)と思っていた。

ずっと直売していると分かるようになってくる。

「この人、買うな」「この人、買わんな」


最後の一個を棚に戻した彼女が、こう言った。


「うちの!庭にも!レモン生ってますけど!」


…え? なにその情報。

かなりの声量で吐き捨て、そのままターン!退場。


となりにいた妻と顔を見合わせて即・爆笑。

他のお客さんが驚いてこっちを見ている。


「高い」「小さい」「傷がある」「いらない」とかじゃない。

斬新すぎる、新しい切り口の捨て台詞。

レモンだけに。


「地産地消おばけ」の最終形態?

…彼女の霊は、我々に何を伝えたかったのか。。。


呼び止めて聞けばよかった。

「今のは、どういう意図ですか?」

今となっては後悔している。

ん、後悔?分かんないけど。


庭レモンばぁさん。


買ったのは、記憶でした。

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