第2話
恭介は優衣が他の二人を起こしている間、コーヒーを飲みながら調理をしていた。
すると、一人、キッチンにそーっと入って来る。
「気付いてますよ、
「バレちゃったかー」
キッチンに入ってきていた
「つまんないなー、最初はもっとびっくりしてたのに」
「そう何度も同じ手には引っ掛かりませんよ」
「すっかり生意気になちゃって……」
調理する手を止めず返事をしていたが、それがピタっと止まる。
夏帆が後ろから抱き着いてきたのだ。ウルフカットの髪が恭介の首をチクチクと刺してくる。
「あの……」
「おー、これには動揺するんだ。よかったよかった」
「なにも良くないですよ。早く離れてください」
「三嶋のお守りも真っ黒だって言ってたけど、やっぱ狐が原因なんかねー。それに誰が化けてんだろ」
「聞いてたんですか?」
「もちろん。この家の中じゃ全部聞こえるからね。……ごめんねえ、優衣との会話聞いちゃって」
顔を見ずともニヤニヤとしているであろうことが分かった恭介は、イラっとした。
「早く離れてください。夏帆さんだけ朝食抜きにしますよ」
「はいはーい」
夏帆が離れたタイミングで二人、人がリビングに入って来る。優衣と
彼女たちはキッチン前にあるリビングのテーブルの椅子に座った。そこへ夏帆が合流する。
「……仲いいね」
少し寂しそうに優衣が夏帆に向かって言う。
調理しながらも聞こえたその声に、思わず反応してしまう。
「優衣先輩?」
「……やっぱり、夏帆の方が教育係っぽい?」
「やめてください。俺は優衣先輩の方が良いです」
「そう?」
首を傾げる優衣に彼女の部下であることは譲れないと語ろうとすると、明日香が先に口を開いた。
「優衣さん、そんなこと言っちゃダメですよ。後輩くんがしょげしょげになっちゃいます」
真面目な顔で言い切る明日香に、夏帆だけが笑う。優衣はきょとんとしており、いまいち意味が伝わっていないようだった。
「勝手な事言わないでください……」
「別に外れてないでしょ?」
明日香の問いに、恭介はなにも言えなかった。無言で調理を続ける。
やがて調理を終え、全員でテーブルに料理を並べる。
夏帆と明日香が起きてきて一気に賑やかになったリビング。
明日香の隣に座り、全員での夕食が始まったのだが。
「なんですか? 明日香さん」
彼女は食事もせずに、すんすんと恭介の首元を嗅いでくる。
「……いえ、後輩くん、コーヒーを飲んだ?」
「……飲みました」
「やっぱり」
したり顔で彼女は頷く。
「コーヒーを飲む時は私の分も淹れてよ。一人でずるい」
「分かりました分かりました、次はそうしますから離れてください」
明日香は恭介の淹れるコーヒーが気に入っているようだった。理由はよくわからないが、断ることもできなかった。
「絶対だよー?」
なぜか首元を人差し指でつついて、明日香が離れる。
さあ、やっと食べられる、と恭介は料理に意識を向けようとした。
そこで恭介は――違和感を覚えた。
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