一目惚れ

テマキズシ

一目惚れ


一目惚れだった。貴方を見た時、私は底なし沼の中に自ら落ちるように深みへと入っていった。


心を揺さぶる美しい声。妖精のような美しい体。彼女を見た時後光が見えた。


君と初めて出会った時、転校してきた私の隣に君は居た。皆転校してきた私に興味津々だったのに、君は興味がなさそうに外の景色を見ていたね。


私は君と仲良くなりたくて、何度も何度も君に話しかけたっけ。そんな私を見た皆は君に関わらないほうがいいと警告してきた。


君も私に警告してきた。私は人殺しの子だから。側にいると皆に嫌われると。


その時の君の顔は今でも忘れられない。とても辛くて悲しそうで、全てに諦めたような顔をしていた。


私はその言葉を聞いた時、君のことがもっともっと好きになった。


君はとても優しい人なんだ。寂しくて辛いけど私に迷惑をかけたくないと思って遠ざけてくれたんだと思った。だから私は沢山君に話しかけに行ったね。


君はそんな私を鬱陶しそうにしてた。そんなある日、私は見た。先輩後輩関係なく、多くの生徒が君のことを罵り、暴力を加えているのを。


私はすぐに君の側に駆け寄り生徒達を非難した。そしたら生徒達は私の事を哀れんだような、嘲笑うような表情でこちらを見てきた。


生徒達の中からリーダー格と思わしき、高校生とは思えないほど大きな大男が喋りだした。


君の両親はこの街で一番と言ってもいいほど有名なDQN。数多くの迷惑をかけて多くの人から嫌われていた。そしてここ最近。君の隣の家に住んでいる三人家族が行方不明になった。


三人家族の家は血塗れだった。警察は三人家族が何者かに襲われ、誘拐されたのだろうと捜査を開始した。しかしどれだけ探しても見つからなかった。街に住む全員が思った。


君の両親がやったのだと。


三人家族はよく君の両親に酷い目に合わされていたから皆そう考えた。しかし警察がどれだけ考えても証拠は見つからず、容疑止まりとなった。


私は思わず呆れてしまったよ。そんなこと君には何も関係ないのに。君の両親と君は違う。多分今までで一番の大声を出した。でも皆笑うだけで私の話を聞いてくれなかった。


私は君の手を取り逃げた。君は泣いていた。その時チラリと見えた。普段は髪を伸ばして隠している君の額に大きな傷跡があるのを。


私は君に提案した。もし両親に暴力を振るわれているのなら今すぐ逃げよう。私の両親は弁護士だ。絶対に君を助けると。


しかし君は私の提案を断った。両親はそれなりに有名な官僚の家系。どんなに大きなスキャンダルがあっても握りつぶされてしまう。昔私を助けてくれようとした人は姿を消して、二度と見ることはなかった。


貴方のような人に会えて良かった。お陰で私はまだ頑張れる。貴方はそう言うが無理してるのは鈍い私でも分かった。


まだごねる私に君は言った。私はお父さんの友達に接待をしているの。私は穢れた人間なの。だから駄目…と。


その言葉に思わず固まってしまった。君はきっとこの言葉で僕を幻滅させようとしていたんだと思う。私は殴られてでた血をハンカチで拭いてくれた。そしてそのまま君は席へと戻っていった。僕は呆然とその後ろ姿を見るしか無かった。


それから数年。私は君に関わることはなかった。君はずっと虐められてきて、家に帰っても酷い目にあっているのがよく分かるほど憔悴していた。


そして今日。私はこうして君を屋上に呼び出した。高校卒業のこのとき。君に見せておきたいものがあったから。


これを見てほしい。君に会ってから僕はどうやって君を助けようか考え続けた。そして自分が有名になって、握りつぶせないほどの影響力を出せば良いんだと思った。


凄いでしょ。チャンネル登録者数が日本一になったんだ。君に会う前からユーチューブをしていたけどその時は1万人程度の小さなチャンネルだったんだ。でも君を助けたいと熱心に様々なことに挑戦し続けたらこの前とうとう2000万を超えた。死ぬ気で頑張ったよ。


誰もがやらないことに挑戦した。しかしチャンネルが消されないように慎重に。家族に頼んで使える人脈はすべて使ったよ。


見てくれる人と信頼関係を掴めるようにボランティアには誰よりも早く参加し、ファンサービスを怠らなかった。まさか自分にここまでの才能があるとは思わなかった。


今僕の持っているカメラのスイッチを押したら、最低でも数百万の人達が私達のことを見てくれるはずだ。


私はその場で勢いよく土下座した。彼女が驚いて一歩下がったのが分かる。


お願いだ。私に君を助けさせてほしい。君がこれ以上苦しむ姿を見たくない。君が知る限りの両親達の悪行を教えてください。


私が涙を流し懇願すると、君は不思議そうにビクビク震えながら聞いてきた。なんでここまでするの?貴方の目的は何なの?貴方も私の体が欲しいのって。


私は君の体が欲しい訳じゃない。君が幸せで居てくれるなら他の男と結婚しても私は全然平気だ。ただ私は君の笑顔が見てみたいんだ。君が幸せそうにしている姿が見てみたいんだ。


私はあの時、教室に入ったあの時から君のことが好きなんだ。一目惚れなんだ。だからお願いだ。私に君を助けさせてくれ。













これが私と妻の出会いでした。これから先は記事で見た人も多いんじゃないかな?声に出して言うと少し恥ずかしいですね…。


改めて、今日の結婚式に皆様来てくれて本当にありがとうございます。


お互いに支え合い、共に人生を歩んでいきたいと思います。これからも私たちふたりをどうぞよろしくお願いいたします。本日は誠にありがとうございました。







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