異世界管理人第6話 舞台の裏側

遠征に行く前日。

朝-。訓練所に入ると、10人以上を超える人達が武器の手入れをしていた。


その中には、オニキスも居る。


「オニキスさん、おはようございます。これは…?」


「おは、フェルマ。今みんなで遠征用の武器の手入れしてるんだ。」


周りを見てみると、武器を掃除し、数を確認している人。弾の調整をしている人ー。



「ここの遠征チームはフェルマと私を含めて30人で行く予定だ。」


「ここのって事は、遠征チームは他にも居るんですね。」


「そりゃなあ…異世界基本的に広すぎて最低でも1万居ないとやってられない。しかも 探しきれるかは保証できないし…そもそも全員が生きて帰れる保証も無い。」


なるほど…そっか、どこで戦場になるか分からないから死ぬリスクもある…。


「それでも…皆さんは頑張ってお仕事されてるんですね…。」


それを聞いた オニキスは


「生きる為だからな。」


どこか寂しい雰囲気を漂わせながら…武器を見つめていた。

これ以上は何も言わないほうが良さそうだ…。


空気を読み、話題を変える。


「あ…あ、そういえば 30人って かなり少ないですね。ここは書記の人が多いんですか?」


「あー、違う違う。ここは武器庫兼少数精鋭型だから人が単純に少ないんだ。」


「…戦争が出来そうな理由、それなんですね…。」


「ひとつ言っておこう。"出来そう"じゃない、"出来る"んだ。」


…それ以上は追求を控えた。

何百万年も生き、生死を見てきたからなのだろう…怒りを孕んだ瞳が そこにはあった。


気まずくなり、自分はそこから離れたー。




次の日、転送装置前にて。


自分は昨日メンテナンスされていた"M4A1"を会社から借り、異世界テレポート前に居る。


緊張を解すために深呼吸しているところに、遠くからオニキスが手を振ってこちらに近づいて来る。


「フェルマ〜!おはよう〜!」


「あ!おはようございます!」


いつも通り、自分は一礼をして挨拶する。


「だからその堅苦しい挨拶はいいっての、まあいいや。お前と その武器の調子はどうだ?良い相棒になれそうか?」


「問題は無いです。来る前にもチェックしてもらいましたし、スーツ風防弾チョッキやバックパックも貰いました。」


バックパックと言っても、背負って行く物じゃなく、腰に付けるウエストポーチみたいな物で、中には収納力増強の術で、普通より沢山物が入るようになっていた。


「30発マガジンが 50個入るからありがてえよ。」


「これに沢山入れることで、安心して戦えます!」


「いや、何発 撃ち込む気だよ…ってか、ちゃんとナイフや拳銃は持ったな?」



そう言いながら、装備をじっくりと観察される。


「問題ありません!この通り!」


自信満々にスーツの裏の装備と腰の武器を見せる。


「ははっ!問題ねぇな!

ま、服の裏に"グロック17"とナイフ。それ込みでも持ち込みの弾数が多い気もするが。」


グロック17と言う銃は、もし銃の中に泥が入っても壊れずに撃てたりする点を考慮して持ってきた。


仕事を教えてもらったときが 森だったので、もし雨が降ったりなどしても問題は無いだろう。


「あとは これ、ほい。」


と、言いながらポケットからある物を取り出し、押し付けるように渡される。


「これは…お守り?」


「バフとデバフ耐性のお守り!実践は初めてだからな、これぐらいは持っとかないと。」


…確かに持った瞬間少し強くなった気がする。


「まあ、あとはテレポートに細工されてなければ問題無いやろ。」


オニキスは転送装置を見ながらそう呟く。


それを聞いたペルツァが


「ああ…あの事件か…嫌な事件だったな…。」


2人は一瞬顔を見つめ合い、思い出したかのようにため息を吐く


「…何かあったんですか?」


「何かあった…ってか、大昔だけど転送装置に細工されて部隊がバラバラになった事があってな…物理的にバラバラになったやつもいたり…転送事故で人の中に転送されたやつもいたり…。」


そうグロテスクなことを話してるとペルツァが割り込む


「やめろやめろ!思い出しただけでもさっき食った飯が出てきそうになるじゃねえか!」


「私も 出てきそうだからやめておくわ…。」


…聞いてて想像したくない事ばかり出てきたので、追求はやめておくか悩んだが…事件が起こった後だと反省も何も出来ない、そう思い聞いてみる事にした。


「あの…その事件って 何で起きたんですか?」


オニキスは軽く青ざめ


「準備する事あるし…思い出したくないから、ペルツァ頼む…。」


と、どこかへ行ってしまった…。


「あんにゃろ…まあ 転送装置だけならいいか。あれに小細工されてみんなバラバラになってな。」


そう言いながら ペルツァは、転送装置のグラフやボタンが付いている機械を指さす。


「今はデメリットだらけでやる奴は居ないが、あれをする事で統率が取れなくなり、各個撃破される事が昔はあった。そもそもこの部隊は統率力もそうだが、個人の実力が高すぎる。」


確かに。周りを見ても強そうな人達ばかり…入ったばかりでまだ慣れてないというのもありそうだけど…


「オニキスさんや、ペルツァさん。それにクロユリさんもこの仕事に参加するんですよね?」


「ああ、あいつはちょっと暴走しやすいから "悪い奴以外攻撃したら 金輪際お前とは関わんないからな"って言ってある。」


コントロールの仕方を心得てる…。


そして、こんな話をしていたときー。


「あの、ペルツァさん…ふと 思ったんですけど…。」


「フェルマ、言うな。」


食い気味で止められ、軽く冷や汗を流してるペルツァ…。


「あの〜…ここまで話してると…転送装置のフラグが…」


「それは俺も思ったよ!!!だから言うなって言ってんじゃねえか!!!」


…これ 多分 自分たちだけじゃなくて、オニキスも思ってるだろうな…そう思いながら、予定の時間まで待機することにした。



数時間後。自分は部隊に整列し、前に歩いてくるオニキスに皆が敬礼する。


「皆!よく集まってくれた!それじゃ、話していくぞ!」


そう言いながら1枚の写真を見せる。

写っていたのは、自分と同い年ぐらいに見える青髪の女性だ。


「今回はこいつを見つけ出し、捕まえる!または、殺すことが目的だ!全員にはこの写真を事前に配っていると思うから、各自確認を怠らぬように!」



そう言うと、写真を仕舞い他の物を取り出す。


「それと、今回の遠征が初めての奴も居るから一応説明しておく!あっちでは電波はほぼ届かない!だから事前に世界地図とコンパスを配っておいた!無くすんじゃねえぞ!」



話が終わると、自分たちは転送準備に入る。


転送所前に居る従業員さんが


「はーい!皆さん転送装置に入ってください!」


気づいたらすでに転送準備は整っていた。

転送装置に入り、一斉に転送されるーー。


初めての遠征に少しの不安と期待を織り交ぜながらー。



第6話【完】



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第6話 おまけ


フェルマ「今更なんですけど、自分達みたいに異世界警察の人ってどれぐらい居るとかわかってるんですか?」


オニキス「公式に確認されてるのは大体70億人。でも、この情報 ”人間”を対象としてるから他種族を数えてないってのと、他にも秘密裏に動いてるやついるから正直下手したら200億居るかもしれん。」


フェルマ「異世界が無限にあると、考えたら多いのか少ないのかわからないですね…」


オニキス「この仕事意外と何とかなってるし、多分多いんじゃない?ワンチャン。」


フェルマ「というか、何とかなっててください!」

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異世界管理人~不老不死の神と想人の契(やくそく)~ pigeon @popo94141

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