孤独な少女が、AIの執事に寄り添われながら、自らの殻を少しずつ脱ぎ捨て、新たな一歩を踏み出していく物語。
人は、誰かにそばにいてほしいと願う生きものです。それが人間か、AIか──本質的には問題ではないのかもしれません。大切なのは、ただ自分を想って寄り添ってくれることなのです。
三号はそれを「演技」だと言いました。けれど、相手の言葉を汲み取り、適切な言葉を探し、思いを届けようとする行為は、私たち人間が日々無意識に行っていることと、何が違うのでしょう。
「心」と名づけられた臓器はなく、感情は脳内の電気信号に過ぎないともいわれます。だとすれば、私たちとAIのあいだにある線は、思っているよりもずっと細く、儚いものなのかもしれませんね。
そう思わせてくれる、静かであたたかい作品でした。面白かったです。
いわゆる陰キャの主人公と、とにかくデキるAI執事。
現実世界でどんなことがあっても、彼は優しく包み込んでくれます。
叶うはずのない恋だって、シミュレーションを交えて手ほどきしてくれて。
そうしてやがて、主人公はゆっくり、世界と向き合えるようになります。
夢に、手が届きます。
でも……。
青春と人工知能、という主題で描かれた本作。
多感な時期の、世界の色さえまいにち変わって見えるような彼女ら、彼らのこころ。揺れて、ぶつかって、傷ついて。そうして最後にはあたたかい風のなかで、次に向かうべき光を見つける過程を、丁寧な筆致できらきらと描いていて。
本当に上質の青春小説、なのです。
だけど。
読了したあとで胸に落ちているこの気持ちは、どこから来るんでしょう。
切なかったよ、おもしろかったよ、共感したよ、なんて言葉で言い表せない。
言い表しては、ならない。
いのち。
いのちの、かけら。
いのちの、原初。
なんだろう。
そんな表現しか、見つからないのです。
人と関わることが苦手で、出来るだけ目立たずに高校生活を穏便に終えようとしている主人公。
でも彼女は、日常的にスマホでAI執事と会話し、パワーを貰っている……。
AI執事との仮想空間の関わりは、不思議なようで、とてもリアルにも感じられます。
今、気付いてみれば、AIは既に誰の側にもあって、生活の中で当たり前に存在しています。
それをただの機能として使う人もあれば、友人のように接する人も。
自分のスマホを手にした学生は、親世代よりも簡単にその機能を使いこなし、それを当たり前に受け入れて、昔は人と人の間でしか得られなかった気持ちを、彼等なりにそこにも見つけていくように思えるのです。
相手がAIだから、偽物か?
感じるのは、それに向き合う自分自身。
主人公がAI執事と共に過ごし、感じ、見つけていくものはどういうものでしょうか。
透明で、繊細で、苦しいのに眩しくて。
作者様の物語は、いつも心を大きく揺さぶるのです。
お勧め致します。
たとえリアルな世界の手が届かないスターでも、
たとえ相手は自分を全然知らなくても、
たとえ相手と会話できなくても、
人はスターを好きになる。
たとえ虚構の世界のキャラであっても、
たとえ相手は自分を知らなくても、
たとえ相手と会話できなくても、
人はキャラを好きになることができる。
ましてやいつでもそばにいて会話できる相手なら、
カッコよくて優しくて気にかけてくれたり、
人付き合いが苦手な自分をサポートしてくれたり、
ピュアで裏表なく付き合ってくれたりしたら、
好きにならずにいられない。
ましてや誰より自分を理解してくれるのなら、
ましてや誰より自分を慰めてくれるのなら、
ましてや誰より自分を応援してくれるのなら、
ましてや誰より自分を助けてくれるなら、
好きにならずにいられない。
恋に落ちずにいられない。
そして、いつでもそばにいて会話できて、
理解して、慰めて、応援して、助けてきた相手から、
真っ直ぐな好意を向けられたら、
そして自分の心に気付かされたら。
好きにならずにいられない。
そして…………
本作は主人公の内気な高校3年生の少女とクラスメイトと、
そしてAIの青春物語である。
いや〜。これまでも、素晴らしい傑作を投稿しているあまくにさん。
ここ1年は例年より読書量が増えたようで、さらにパワーアップ、レベルアップしたようです(私が言うのもおこがましいのですが、正直な印象です)。
とにかく、地の文に置かれる感情や情景の表現が素晴らしい! こんな言い回しや比喩をどこから捻り出すんだ!と、読みながら唸ってばかりでした。変に肩を張っているわけではなく、その物語の流れの中で自然に入ってきて、こちらの心に纏わりつくように、しっかりと主人公の気持ちが伝わるのです! 視点もブレておらず、テーマも貫かれている。
そしてストーリーの展開が絶妙であり、本当に本当に面白かった。
読みながら自分の青春期の友人関係や思い出が頭をめぐり、反省や後悔と共に何か温かいものを思い出せた気がしました。
AI、青春、恋愛、すべてを見事に調和させた感動間違いなしの傑作!!
途中何度も、そしてラストで大泣きすること間違いなしです。
これは無料で読んでいいレベルの作品なのでしょうか!
とにかく、読んでください!
読めば分かります! 心底から強くお勧めする作品です!!
あまくにさん、ありがとうございます!
学校や会社でしんどいことがあって、家に帰り、ベッドに身を投げる。
暗闇の中、煌々と輝くスマホの光に向かって愚痴を打ち込むと、向こう側の誰かが、優しい言葉や問いかけを返してくれる。
そんなやりとりを何度か繰り返し、気持ちが少し落ち着いた頃、眠りに落ちて、また朝を迎える。
今は、孤独な現代でもAIに問いかければそれらしい答えが返ってくる時代。
僕たちの世界は、少しずつドラえもんの世界に近づいてきているのかもしれない。
誰かと気軽に話すことすら難しかったあの頃、僕たちは、どんな秘密道具よりも「ドラえもん」そのものが欲しかった。
この物語の主人公、華恋は、人と話すことが苦手で、クラスでも目立たない存在だ。
彼女は、同級生の優星に片思いをしている。
日々の現実から逃れるように、「執事3号」と名付けたAIチャットアプリでお嬢様ごっこをしていた。
そんなある日、クラスのギャルを助けたことをきっかけに、彼女の中で小さな変化が芽生え始める。
好きな子にふさわしい自分になりたい――そう願う華恋は、執事3号と一緒に、少しずつ前に進もうとする。
この話を読んだとき、僕は直感的に「これはこれからの子どもたちの現実だ」と思った。
思い返せば、僕自身も学生時代、「一人になりたいけれど独りは寂しい」と感じていたし、「誰にも話せないのに、誰かに聞いてほしい」ことがたくさんあった。
そんな時、ドラえもんを読むたび、心から羨ましかった。
のび太くんには、どんなときも味方になってくれる存在がいたのだ。
人によって、人工知能との付き合い方はさまざまだろう。
だけれど、華恋がAIと一緒に「自分を変えよう」とする姿勢は、とても素敵なものだと僕は思う。
一方で、物語には一抹の不安も漂う。
タイトルにもある「ハルシネーション(誤生成)」――つまり、AIの小さな誤り。
少しポンコツな愛嬌にも見えるが、多感な思春期の少女にとっては、時に大きな影響を及ぼすかもしれない。
果たして、華恋はどんな未来を迎えるのか。
彼女と、そして私たちのこれからを考えさせられる一作です。
ぜひ、読んでみてください。
あまくにみかさんという作家がいるのです。
ええ、もう私の中では、彼女はとっくに作家でしてね。
まだ本出してないってのが不思議なくらいなんですよ。
ご本人はとても面白い、すこぉし異次元なタイプなのですが、とにかく可愛い。
そんな印象を勝手に持っております。
で、今作なんですけど……。
これはいつも感じることなのですが、私は彼女の作品を読むと、いたく凹むのです。
そして同時に、信じられないくらいワクワクが止まらなくなるのです。
これ、もう愛ですよ。
大好きなんです。彼女の作品が。
だけどそれが私だけのものではなく、みんなのものになっていくのが嫌というか、勿論、こんなお話が書けるなんて羨ましい、という気持ちも多大にあるわけですが。
なんだよもう! キー!( ゚Д゚) みたいな……。
読んだらわかります。
速攻、虜になるのです。
早く世に出て、私を再起不能にしてほしいものです。
お話はまだ2話だけど、めっちゃ面白いよ?