第5話 王都ブラックドラゴンの襲撃

星菓子亭を出発し、私たちは王都を目指していた。カイザーの本拠地に近づくには、まず王都を経由する必要がある。


森を抜け、石畳の街道を進むと、ついに見えた。巨大な城壁に囲まれ、空にそびえる尖塔。はためく旗が風に揺れる。


「王都だ……! やっと帰ってきたよ」


思わず、私はつぶやく。

私、彩華はリリアナ。騎士であり、この王都の城は、私の家でもある。


門をくぐれば、石造りの家々、市場の喧騒。「新鮮なリンゴだよー!」と商人の声が飛び交う。


「リンゴ食べたいよー!」

パンちゃんが跳ね回る。


「にゃ! 市場、キラキラにゃ!」

ミャウリンの目も輝く。


「ここでカイザーの動きを探りましょう」

ティアラが真剣な表情で言う。


「……なんか、空気が重くねえか?」

カイルの言葉に、私も眉をひそめた。


「確かに、不穏な感じがする。守ってきた街なのに――」


その時だった。

空が暗転し、地響きが鳴る。


「ゴゴゴゴゴ……!」


市民たちが顔を上げる。中央広場に、巨大な影が降り立った。


「ブラックドラゴン……!」


黒い鱗、赤く光る眼、バサッと翼を広げるその姿――間違いない。カイザーが差し向けた魔獣だ!


「カイザーの刺客だ! 王都が危ないっ!」


「グオオオオオオッ!!」


ドラゴンの咆哮とともに、黒煙がモクモクと噴き出す。市場はパニック! 屋台がバタバタ倒れ、市民は「逃げろー!」と叫びながら逃げ惑う。


「街が襲われてる! 騎士として、黙っていられない!」


私は剣を抜いた。ティアラは杖を握りしめる。


「マフィン爆弾でやっつけるよー!」

パンちゃんが構える。


「にゃー! 怖いにゃ!」

ミャウリンが尻尾を丸める。


「俺、こういうの苦手なんだけど……」

カイルがボヤくと、


「カイル、カレースパイスミストはやめてよ!」

私は思わず笑ってしまった。


――そんな混乱の中、妙な声が響いた。


「おおっと、ここでカレーの出番だな!」


登場したのは……頭に毛のない中年のおじさん。

顔と手だけ出てるナンのコスプレ姿だ。


「ワシはナン・カレディ。カレー評論家だ! お前をカレーの具材にしてくれよう!」


「何!? ナンのおじさん!? 変な人きたーーー!」


市民も「誰だコイツ!?」と唖然。

私は「カレー評論家って……カイルと気が合いそうだね」と笑ってしまう。


「グオオオ!」

ドラゴンの爪が振り下ろされる!


「うおっ!」

ナンのおじさんが風圧でヒュー!と空を舞った。


「ナンのおじさん、飛んだ!?」


私が叫ぶ中、地面がガガッと削られる。


「ストームダッシュ!」

私は一瞬で間合いを取り、


「スターフォール・テンペスト!」

ティアラが星の雨を降らせる!


だが――


「ガキンッ!」


星の魔法すら跳ね返される硬さ!


「クロワッサンミサイルーッ!」

パンちゃんの援護射撃、


「ニャンニャン乱打にゃ!」

ミャウリンの爪攻撃も通じない。


「硬い……やばい……!」


その時だった。


「ドサッ!」


ナンのおじさんが地面に落ち、叫ぶ。


「カイル君、受け取れええ!」


飛んできたのは――ナンだった。


「えっ!? ナン!? 食うのか!?」


「食べるんじゃないよカイルッ!!」


「そのナンは特別製だ! 使えぇえ!」


「どうやってだよナンのおっさん!!」


「信じて、カイル! 絶対、何かに使える!」


「灼熱の炎」がドラゴンの口から吐き出される!


「カイル、危ないっ!!」


「うわあああっ!」


カイルがナンを前に掲げると――


「キラーン!」


ナンが輝いた!?

そして変形する!


「鋼鉄のナン・イージス!!」


巨大なナンの盾が炎を「ズゴゴゴ!」と吸収していく!


「ええっ!? ナンが炎を吸ってる!? なにそれ!」


「これはワシのカレー魂が込められた一品……今こそ、カウンターを決めるのじゃ!」


「カウンター!? 俺にできるのか!?」


エネルギーが渦巻く。


「カイル、今だ! やれるよ!」


「よし、やるしかねえ! 俺のスパイス魂、見せてやる!」


「スパイスカウンター・リフレクション!!」


ナンが跳ね返した炎は、なんと倍の威力でドラゴンを直撃!


「グギャアアアアアアアアア!!」


焦げる鱗、広がるカレーの香り。


「すごい……カレーでドラゴンに勝ったよ!」


「カイル、すごい……威力ね」


「カイルお兄ちゃん、やったよー!」


「にゃーっ! カレー強すぎにゃ!」


ボロボロになったドラゴンは「グオオ……」と唸り、空へバサッと飛び去った。


「ナンのおじさん、ありがとう。あなたの死は無駄にしない――」


「ワシ、生きておる!」


「えぇっ!? 生きてたの!?」


「ナンのこれしき、パンピロシキ!」


「え? 何?」


「コメはササニシキだ!」


よく分からないことを言いながら、ナンのおじさんは立ち去った。


「ナンのおじさん、意味不明すぎる!」


カイルは呆れたように笑った。


市民が「助かったぞー!」と歓声を上げる。


「カレーの勇者だー!!」


商人や子どもたちがカイルに駆け寄る。


「カイル、人気者だね!」


「いや、俺、そんなつもりじゃ……」


「カレーの香りが最高だ!」


衛兵が現れ、こう告げた。


「王都を救ってくれて感謝する。“カレーの英雄”の称号を授けよう!」


「やったね、カイル! かっこいい!」


「カイルお兄ちゃん、かっこいいよー!」


「にゃー! カレーお兄ちゃん大好きにゃ!」


「あなたの力が、カイザーにとって脅威となるでしょう」


「……初めて、誰かの役に立てた気がするな。スパイスとカレー、すげぇな」


「うん、カイル、最高だったよ!」


平和が戻った王都に、カレーの香りがふわりと漂う。


その夜、私は城の上に立ち、星空を見上げていた――。

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【異世界マスター】異世界ハーレム?そんなものは幻想です!~最強吸収スキルと異次元アイテムボックスで悪徳転生者を粛清します!~ マカロニ @macaroni0327

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