第18話愛を伝える言葉は決まって気持ち悪い

タニヤマ「あー緊張してきた。酒飲も。」


ソトナカ「どうしたアル中。ついに警察にばれたか?」


タ「まだ何もしてへんわ。」


ソ「まだってことは、これからやるんけ?」


タ「やらんわ!いや、ある意味ではやるんやけども。」


ソ「え?」


タ「実はな、今日同じサークルの子に告白しようと思っててん。」


ソ「マジか。初耳なんやけど。」


タ「言ってないからな。同じキャンプサークルなんやけど、森ガールって感じの子で、仕草がいちいち可愛いんや。」


ソ「瞳を奪われたってわけか。」


タ「ああ。さしずめ恋泥棒ってとこやな。」


ソ「キモ。」


タ「お前から振ってきたくせに、なんやその言い草は。」


ソ「いやだってキモイから。どうやって告白するか考えとるん?」


タ「そらもちろん。まず2人で遊びに行ったら結ばれるってジンクスのある公園で散歩するやろ。」


ソ「おん。」


タ「で、噴水の前のベンチでしばらく談笑して、頃合いになったらスタンバイしているスタッフにサインを送るやろ。」


ソ「おん。」


タ「そしたら、フラッシュモブが始まって一緒に踊るねん。で、準備しておいた手紙をその子の目の前で読んで告白ってわけよ。どうよ?この完璧な計画。」


ソ「うーん。キモイ!」


タ「はあ?」


ソ「素晴らしいほどに、全てが丁度良くキモイ!」


タ「なんでや!どこがキモイねん!」


ソ「大学生がジンクス気にしてんのもキモイし、フラッシュモブすんのもキモイし、告白で手紙読むのもぜーんぶキモイ!」


タ「噓やん、もうほとんど用意してもーてるんやけど。」


ソ「なんでキモイやつって、行動力だけはあるんやろなぁ。」


タ「えーどうしよ。手紙はまだ用意してないんやけど、ここで完成度高めたら一発逆転できんかな?」


ソ「だいぶ厳しいけど、やる価値はあるかもな。」


タ「せやけど、一昨日くらいから考えてるんやけど、途中で引っかかって一向に完成せんのや。」


ソ「何を引っかかることがあるねん。」


タ「いや~愛をどうやって伝えるかって部分で。なんか、愛を伝える慣用句って基本全部キモくない?」


ソ「はあ?」


タ「例えばさ、『目に入れても痛くない』とか。いや痛いやろ。あと、目に入れようとすなって感じやん?」


ソ「ああ、そういうこと。」


タ「他にも、『食べちゃいたいくらい』とか。なんで食べようとすんねん。カニバリズムやんけ。」


ソ「まあ確かにな。」


タ「それに、調べたら『なめるように可愛がる』って言葉もあるらしいねん。キモすぎやろ。もう普通に変質者やん。」


ソ「どの口がキモイキモイって言うとるんやとは思うけど。ほんなら、もう手紙はなしでええんちゃう?お前、文才なさそうやし。」


タ「え~。フラッシュモブだけで勝負すんの?」


ソ「いや、フラッシュモブも中止にして、ドラマの告白シーンとかパクったら?スタッフさんにエキストラとして協力してもらって。」


タ「ほう。例えば?」


ソ「101回目のプロポーズとかは?トラックに轢かれそうになるのは無理やから、スタッフさんに悪漢を演じてもらって、そいつらをタニヤマが倒して最後に『僕は死にましぇん!あなたが好きだから!』って言うのはどう?」


タ「もうめちゃくちゃやん。ならフラッシュモブでキモがられた方がマシだわ。」


ソ「そうか。まあよくよく考えてみれば、愛を伝えるって行為そのものがキモイしな。せっかくなら当たって砕けて弾け死ね。」


タ「当たって砕ける程度でええやろ。てか失敗するつもりないし。」


ピロン


タ「あ、話してたらその子からLINEきた!」


ソ「おお、何て?」


タ「ええと、なになに?『彼氏も一緒にいいか?』…だって。」


ソ「おぅ…。」


タ「彼氏…おったんか…。」


ソ「当たって砕けることもできんかったな。」


タ「うぅ…。あんまりや…。」


ソ「なんか、ドンマイ。今日飲み行こうや奢ったるで。」


タ「ソトナカ…。お前ええやつやなぁ…。なめるように可愛がったるわ。」


ソ「キモ。」

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