第7話焼いた肉

ソトナカ:「なあ!今日何の日か覚えてるよなぁ!!」


タニヤマ:「あー…。ごめんなんやっけ?」


ソ:「おいおいおい!!今日という日を忘れるとはええ度胸やんけ!今日は月に1度の焼肉デーやろが!」


タ:「ああ、そっか。あのさ、それ来週とかでもええか?」


ソ:「はあ?なんでや!この日のために1ヶ月頑張ったのに!」


タ:「いや、実はな。一昨日実家で飼ってた犬が死んでん。」


ソ:「」


タ:「10年以上飼っててな。ほぼ兄弟みたいなもんやってん。」


ソ:「…。」


タ:「流石にそこらへんに埋めるのはあかんから。ちゃんとしたとこで火葬してもろたらしくて。」


ソ:「…。」


タ:「今、焼肉食うと、火葬された実家の犬、連想してしまうねん。」


ソ:「…。」


タ:「急にスイッチ切れたように喋らんやん。遊び疲れた子供のように。」


ソ:「…その、ごめん。」


タ:「いやええよ、こっちこそすまんな。今日のために頑張ってたのに。」


ソ:「…いや、全然ええよ、そんなこと気にしやんで。」


タ:「なんか、先週お前のじいちゃんが骨折したの笑ってたのに、思い切り罰が当たってもうたわ。」


ソ:「…その、焼肉はあれやけど、別のもん食べに行こうや。飯食わんと気分もへこみやすくなるし。多少無理にでも食った方がええよ。」


タ:「まあ、そうよな。なんか食いに行くか。ソトナカ食いたいもんある?」


ソ:「焼き鳥とかどう?」


タ:「焼肉に引っ張られてるやん。」


ソ:「」


タ:「焼肉を諦めきれてない結果、マイナーチェンジしとるだけやんけ。」


ソ:「いや、あれやん。焼肉で食う牛とか豚は4足歩行やから犬に近いかもやけど、鳥ならもう違うカテゴリかなって。」


タ:「ペットというカテゴリで考えれば、寧ろ近くなってるけどな。」


ソ:「悪かったって。じゃああれよ、寿司食いに行こ。駅前の回転寿司。」


タ:「魚も生き物やん。」


ソ:「魚もダメなん⁉」


タ:「ペットというカテゴリで考えてるから寧ろ焼肉よりあかんかもしれんわ。」


ソ:「じゃあもうあれやん。野菜しか食えんやん。今はやりのヴィーガンになるしかないやん。」


タ:「植物だって生きてるやん。」


ソ:「もう全部だめやん。」


タ:「生きとし生けるものは、すべからくこの宇宙船地球号に乗る兄弟やん。」


ソ:「メルヘンチックな女みたいな理屈こねやがって。じゃあ、あれか。人工的に作られた甘味料とかで我慢するしかないやん。ゼリー的な何かで。」


タ:「うちの寝たきりのじいちゃん思い出してまうやん。」


ソ:「」


タ:「ゼリーみたいな流動食は寝たきりのじいちゃん思い出してまうやん。先週話したのに、もう忘れてもうたん?」


ソ:「ワンピースの伏線ばりに付け入る隙がなさすぎてちょっと驚いてるわ。マジでなんも食えんやん。」


タ:「なんや、ここで諦めるんか。俺を慰める気があるんなら、俺が食えそうなもんを考えてみい。」


ソ:「何ゆえに上から目線やねん。」


タ:「実はな、一昨日の夜に実家から連絡あって、そっからなんも食ってないねん。ほぼ丸1日。気分も腹の具合も限界やねん。」


ソ:「ほぼ断食やん。そらテンションもおかしくなるわ。」


タ:「でも、こんなに悲しくて落ち込んでるのに、情けないことに腹は減ってきてな。人間の背負う宿命・因果・カルマを感じずにはいられへんっていうか。」


ソ:「全部ほぼ同じ意味やけどな。」


タ:「せやから、なるべく殺生が絡まない形の飯が食いたいなって。」


ソ:「まあ、じゃああれちゃう?ほぼ断食状態だったわけやし。精進料理とか食うか?」


タ:「いや、腹減ってるしもっとがっつりしたもん食べたい。」


ソ:「横暴が過ぎるやろ。あんだけ肉も魚も食えんと言っときながら。」


タ:「あれや、お前がその~お前と喋ってるうちに、元気という名のスイッチが押された気がしなくもなくて。」


ソ:「序盤から打って変わって、例えが下手になるやん。」


タ:「とにかく、お前と喋ってるうちに、気分も落ち着いて腹もいい具合にすいてきたって話や。ありがとうな。」


ソ:「タニヤマ…。」


タ:「…さ。湿っぽい話はここまでにして、なんか食いたいもんある?」


ソ:「う~ん。」


タ:「なんでもええで。」


ソ:「じゃあ焼肉食いに行k」


タ:「それは無理。」

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