ねこねここねこなお医者さん 転生して仔猫になったぼくが夢の獣医になる話 第３部

第379話 原虫性肺炎

　それではさっそく、『走査（そうさ）』に案内してもらおう。

　そういえば、『走査（そうさ）』を使うのは久し振りだな。

『走査（そうさ）』は、基本的にぼくが呼び掛けた時しか発動しない。

　病気のネコがいる時や危険が迫（せま）っている時には、自動的に発動することもあるけど。

　イチモツの集落（しゅうらく）の周りに生（は）える薬草やキノコは、調べ尽（つ）くしちゃったし。

　軽いケガや病気なら、茶トラ先生が診（み）てくれるし。

　だから『走査（そうさ）』の出番は、ほとんどなかったんだ。

　集落（しゅうらく）にいる間は、キャリコと一緒にハーブティーを作っていた。

　寒い日には火を起こして、ハーブティーを淹（い）れたり、温石（おんじゃく）を作ったりしていた。

　温石（おんじゃく）は、石を焼いて作るカイロ。　

　ネコは寒さに弱い動物だから、体が冷えると免疫力（めんえきりょく）が下がっちゃうんだ。

　免疫力（めんえきりょく）が下がるとネコ風邪を引きやすくなるし、おなかも壊しやすくなるし、お年寄りのネコは冷え性（しょう）になる。

　あったかくしてたくさん寝れば、健康を保つことが出来る。

　ネコにとって、睡眠は何よりも大事だからね。　

　それに、寒くなると食欲も落ちてしまう。

　人間だって、寒い時に冷たいごはんは食べたくないよね。

　そんな時は、ごはんをあっためると良い。

　ネコの食欲は、匂（にお）いが重要なんだよ。

　お肉がこんがりと焼ける匂（にお）いは、食欲がそそられるよね。

　あったかい物を食べると、おなかの中からあったかくなる。

　熱いと火傷（やけど）しちゃうから、少し冷ましてから食べさせているよ。　　

　ぼくの努力の甲斐（かい）あって、イチモツの集落（しゅうらく）のネコたちは、みんな元気でのんびりと幸せそうに生きている。

　病気やケガで苦しむことは、不幸だ。

　他の集落（しゅうらく）のネコたちも、幸せになって欲しい。

　という訳で、『走査（そうさ）』

　ぼくが今まで訪れたことのない集落（しゅうらく）まで、案内してくれる？

　もし、近くに病気やケガで苦しんでいるネコがいたら、優先でお願い。

『走査開始（そうさかいし）』

『走査完了（そうさかんりょう）。結果表示』

『対象：食肉目（しょくにくもく）ネコ科ネコ属リビアヤマネコ』

『病名：原虫性肺炎（げんちゅうせいはいえん）』

『概要（がいよう）：寄生性原生生物（きせいせいげんせいせいぶつ）Toxoplasma（トキソプラズマ）が、肺に寄生（きせい）することによって発症する。また、肺水腫（はいすいしゅ）も併発（へいはつ）』　

『処置（しょち）：抗菌薬（こうきんやく）、抗真菌薬（こうしんきんやく）、駆虫薬（くちゅうやく）、抗生物質（こうせいぶっしつ）、サルファ剤（ざい）、利尿薬（りにょうやく）の投与（とうよ）』

『位置情報（いちじょうほう）：直進７００ｍ、右折２０ｍ、直進６０ｍ』

　また、知らない病気が出てきたぞ。

　でも、薬は分かる。

　抗菌薬（こうきんやく）は、ヨモギ。

　駆虫薬（くちゅうやく）は、ニガヨモギ。

　抗生物質（こうせいぶっしつ）と抗真菌薬（こうしんきんやく）は、ムラサキバレンギク。

　利尿作用（りにょうさよう）がある薬草は、たくさんあるんだよね。

　・ドクダミ

　・アサガオ

　・ローズヒップ

　・ナズナ

　・ノアザミ

　・オオバコ

　・ムラサキツメクサ

　・サルナシ

　・タンポポ

　この中から、すぐ手に入りそうな薬草を使おう。

　あと、サルファ剤（ざい）ってのは？

『合成抗菌剤（ごうせいこうきんざい）、化学療法薬（かがくりょうほうやく）の総称（そうしょう）。生物由来ではない為、抗生物質（こうせいぶっしつ）とは呼ばれない』

　抗生物質（こうせいぶっしつ）なら、ムラサキバレンギクでいけるな。

　よし、薬草を集めて病気のネコを救おうっ！