第378話 ぼくはぼくだから

 ぼくは大きくなれない病気で、ずっと仔猫こねこのまま生きてきた。


 転生してから自分がオスかメスかなんて、気にしたことがなかった。


「やったー! ネコだーっ! 可愛い~っ!」としか思わなかったな。


 メスネコだったら、性同一性障害せいどういつせいしょうがいになるのかな?


 生後まもない仔猫こねこは、オスメスを見分けるのがとても難しい。


 獣医さんでも、仔猫こねこのオスメスの識別率しきべつりつは80%くらいと言われている。 


 どうしてかって言うと、産まれたばかりの仔猫こねこには〇〇タマタマがないから。


 生後3ヶ月頃になると、〇〇タマタマえてくる。 


 オスネコのイチモツは通常時つうじょうじ、穴の中にしまわれていて見えない。


 必要な時だけ、ピョコッと出てくる。


 他にも顔の大きさとか体付きとか、見分ける方法はいろいろあるんだけどね。


 それでもネコにも個性があるから、判別はんべつは難しいんだ。


 ぼくの体には〇〇タマタマがないし、メスのように発情期が来たこともない。


 正直、オスでもメスでもどっちでもいいと思っている。


 だって、ぼくはぼくだから。


 今までもこれからも、何も変わらない。


 お医者さんとしてネコを救う、それだけだ。


 それにネコは、性別も年齢も関係なくみんな可愛い。


 つまり、可愛いは正義。


 🐾ฅ^・ω・^ฅ🐾  


 お父さんとお母さんは、ぼくが心配で心配で仕方がないらしい。


 グレイさんは絶対にぼくを守ると約束してくれたけど、それでも心配は尽きないみたい。


 小さな仔猫こねこだから、ふたりが心配する気持ちも分かるけどね。


「シロちゃん、グレイさんとふたりで大丈夫かニャ……」


「そうニャー! ここから近い集落しゅうらくまでだったら、送って行くニャーッ!」


「それが良いニャッ!」


 話し合いの結果、途中までお父さんとお母さんがついて来てくれることになった。


 それを伝えたら、グレイさんもしっぽを振って喜んでくれた。


『そうか! またお父さんとお母さんと一緒に、旅が出来るのかっ!』


「次の集落しゅうらくまでだけどミャ」


『それでも、嬉しいぞ!』


「じゃあ、今度こそ集落しゅうらくのみんなとお別れの挨拶あいさつをしてくるから、ここで待っててミャ」


『ああ、分かった! 待っているっ!』


 グレイさんをその場に残して、ぼくとお父さんとお母さんはもう一度イチモツの集落しゅうらくへ戻った。


 イチモツの集落しゅうらくのネコたちは、ぼくたちが旅へ出ることはもうすっかり慣れっこだ。


 お別れの挨拶あいさつをしに行けば、「また行くの?」くらいの反応。


 長老の茶トラ先生もキャリコも、みんなでお見送りしてくれた。


「シロちゃん、元気でいってらっしゃいニャ~」


「シロ先生、絶対に帰ってきてくださいにゃう」


「皆さんも、どうか元気でミャ。寒くなる前に、帰りますミャ。いってきますミャ~」


 こうして、また新しい旅が始まった。

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性同一性障害せいどういつせいしょうがいとは?】


 体は男で、心は女。


 あるいは、体は女で心は男という状態。


 英語では、Genderジェンダー Identityアイデンティティ Disorderディソーダー=略してGID


 近年は、ジェンダー(性別の役割)問題が問いただされている。


 ちなみに性転換せいてんかんあつかった作品は、Transトランス Sexualセクシャル Fantasyファンタジー=略してTSF


 一般的に、TSと言うことが多い。

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