第21話 溜まりに溜まった借金と、爆裂少女の欲望

冒険者ギルドの掲示板前。

報酬を受け取り、帰ろうとしたカズマの目の前に、突然ギルドの受付嬢ルナが現れた。


「カズマさん、少しお話が……」


「え? おれ、なんかしましたっけ」


「いいえ。ただ、こちらにお心当たりがあるかと思いまして……」


そう言って渡されたのは、一通の封筒。そこには、見覚えのある文字でこう書かれていた。


『カズマ様御一行 爆裂魔法による森林破壊および周辺住民からの苦情について』


「おい待て待て待て、なんだこのタイトル」


「はい、あの一帯の森は魔獣討伐対象区域ではあるのですが……あまりに派手な爆裂魔法で、近くの畑や木材資源にも被害が出たそうです。賠償金は、えーっと……」


ルナは申し訳なさそうに、金額の書かれた紙をカズマに手渡した。


「……にじゅうまんエリス」


「ふざけんなあああああ!!」


カズマの叫びがギルド内に響く。


「ま、待ってくださいカズマ! 確かに少し爆発は大きかったかもしれませんが、魔獣は討伐できましたし、被害はほんのちょっとで――」


「“ほんのちょっと”で二十万も請求されるかあああ!? お前どんな爆発したの!? もう地形変わってるレベルだったぞ!」


めぐみんが「えへへ……」と小さく笑ってごまかす。ウィズとダクネスも後ろから心配そうに覗き込んでいた。


「でも、今回の討伐報酬は結構な額だったはず……その分でどうにかなるんじゃないですか?」


「全部差し引いたら、手元に残ったのはこれだけだ!」


カズマが机に叩きつけたのは、小銭が数枚入った小袋だった。


「くっ……! なんということだ……魔王軍と戦っても、日常の金欠からは逃れられないのか……!」


「いや、戦ったのは下っ端だし、主な原因は爆裂魔法の規模だからな」


ため息をつくカズマ。その横で、めぐみんが急に目を輝かせた。


「……ねえ、カズマ。じゃあ、節約生活しながら、今度は“建物を壊さずに爆裂魔法を撃つ訓練”をしてみるっていうのはどうですか?」


「何その“爆裂魔法ありき”な前提。やらないって選択肢が最初からないのおかしくない?」


「私は“撃つ場所を考える”という譲歩をしてますよ? 大きな進歩ですよ?」


「それを進歩って言うお前の頭が心配だわ!」


それでも、めぐみんの顔は楽しそうだった。カズマは呆れながらも、小さく笑う。


「はぁ……ま、訓練って言っても、撃ったら即ダウンなんだから意味ないけどな。背負うのは、結局俺だし……」


「……でも、それでもカズマが付き合ってくれるなら、私はうれしいですよ」


「……お前な」


照れくさそうに笑うその顔は、どこか子供のようで。

カズマは小さくため息をついてから、そっと彼女の頭を軽くぽんぽんと撫でた。


「せめて、もうちょっとだけ節約って言葉覚えような。……俺の財布が先に爆裂する」

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