第20話 戦果と静けさ

夕暮れが街を茜色に染める頃、冒険者ギルドのテーブルには、久々の静けさがあった。


「いやー……久しぶりに、まともに働いた気がするな」


カズマが椅子に背を預け、ジョッキの中身をゴクリと飲み干す。その隣で、めぐみんは両手でマグカップを抱え、上機嫌に紅茶を啜っていた。


「報酬もたくさんもらえましたし、依頼も無事にこなせましたし……何より、爆裂魔法も気持ちよく撃てましたからね」


「いや、そこが一番なのかよ……」


めぐみんはくすくすと笑う。


「もちろん、皆さんと一緒に無事に帰ってこられたことも、うれしいですよ」


「……うん。そういうの、もっと早く言え」


「ふふっ、そういうのはタイミングが大事なんですよ、カズマ」


めぐみんの口調は軽やかで、けれどどこか嬉しそうだった。カズマはそんな彼女をチラリと見やり、頭をかいた。


「ま、でもよかったよな。無事で。お前も最近、爆発しても転倒の仕方が安定してきたし」


「なんですかその褒め方は。転倒のプロみたいな言い方じゃないですか」


「いや事実だろ。お前、以前は派手に顔面から突っ込んでたけど、最近はスッと横に倒れるし」


「倒れ方の美しさなんて求めてないんですよ私は!」


いつものようなやり取りに、周囲の冒険者たちが苦笑している。だがカズマはふと真面目な顔になり、静かに言った。


「でも、お前の爆裂魔法があったから勝てたのは、マジで間違いないからな」


めぐみんは少し目を丸くしたあと、照れたように視線を逸らした。


「……当然ですよ。私はアークウィザードですからね。カズマの援護があってこそでしたけど」


「そっか。ありがとな、めぐみん」


カズマが素直に礼を言うと、めぐみんは少し口ごもったあと、小さな声で呟いた。


「……また、冒険行きたいですね。皆さんと、カズマと……」


「ん? 聞こえなかったぞ」


「な、なんでもないですっ!」


耳まで真っ赤にして紅茶を啜るめぐみんに、カズマは小さく笑った。


静かな時間。戦いのあとに訪れる、ごく普通の日常。


だが――そんな何気ない時間こそが、彼らにとって一番のご褒美なのかもしれない。

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