第3話 ツンデレと素直のあいだ

翌日。町のギルド前で、カズマはめぐみんと合流していた。


「おはよ、めぐみん。今日はどこ行くか決めたか?」


「おはようございます、カズマ。今日は…少し遠くの方で爆裂魔法を撃てる場所があるので、そこに行きたいんです」


「また爆裂かよ。毎日撃ってよく飽きないな、お前」


「飽きるわけないじゃないですか! 爆裂魔法は私の魂そのものなんですよ!」


「はいはい、爆裂バカめ…」


「なんですか、その言い方は!」


ぷんすか怒るめぐみんに、カズマはちょっとニヤつきながら歩き出す。


こういうテンポのいい会話――カズマにとっては、最近少しだけ心地よく感じる時間だった。


郊外の崖の上。眼下には森と湖が広がり、空気が澄んでいて気持ちがいい。


めぐみんは両手を広げて立ち、風に髪をなびかせながら叫んだ。


「我が名はめぐみん! 爆裂魔法を操りし者! 今日もこの美しき世界に、爆裂の華を――!」


「もうその詠唱、何度目だよ…」


「カズマ、黙って見守るのが礼儀ですよ」


「はいはい。じゃあ、撃ってこいよ」


「行ってきます!」

めぐみんは満面の笑みを浮かべ、駆けていった。


しばらくして、あの爆音と共に、崖の下に赤黒い爆炎が広がる。


そして当然――


「カズマぁ~~~、迎えに来てください~~~~~!」


「ったく…また転がってやがる…」


カズマはため息をつきながら崖の下へと降りていく。


めぐみんは爆心地近くで、ぐったりとうつ伏せになっていた。


「大丈夫か?」


「はい…今日も最高の爆裂でした…」


「いや、聞いてねぇよ。ほら、肩貸すから立て」


「すみません、カズマ。毎回…こうしてもらってばかりで」


「別にいいけどな。どうせまたすぐ撃ちに来るんだろ?」


「はい。でも…今日は、ちょっとだけ気が引けてたんです」


「ん?」


「なんでもないです。ただ…私、もっと強くなって、カズマに迷惑をかけないようになりたいんですよ」


「めぐみん…」


カズマはその言葉に少し驚きつつも、口元を緩めた。


「だったら、俺が毎回お前を背負うことで、筋トレ代わりってことでいいんじゃねぇか?」


「え? それはつまり…?」


「お前を爆心地から毎回運ぶのも悪くないって話だよ。文句あっか?」


「…ふふっ。いえ、カズマのそういうところ、私は嫌いじゃないですよ」


「なっ…!」


またからかわれたのかと思いきや、今度のめぐみんは、そっとカズマの腕に寄りかかってきた。


「……ありがと、カズマ」


その言葉だけは、少しだけ素直に聞こえた。

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