物語の原資。それは個人の記憶なのかもしれない。

本作には、カクヨムで作品を投稿されている橘夏影さんが物語を書きはじめた経緯や物語を書くこと、その周辺について考えた事柄が記されています。

橘夏影さんは、豊富な語彙を背景にした特徴的で人を惹きつける文体を持つ書き手の方です。

この方の考えを知ることができるだけでも興味深いのですが。
本作のなかの〝文章を書くこと〟を軸に綴れた各エピソード。
これは物語としても、普通に面白いのです。

例えば。
子どもの頃の橘さんは、ナイーブな性格の子かな? 
等と思わせる雰囲気なのに、なにかしらの切っ掛けで心にのブレーキを踏み込んだ文章を書いたりします。
その感じが微笑ましいのです。
文章的にピーキーな子なのです。
褒めております。

個性ある書き手の方の内面を窺える本作。
人間心理の不可思議さや妙味が楽しめます。
ぜひご一読ください。