第18話 コンビニ

お待たせしました。


※重力魔法使いちゃんの名前は“ミオ”です。

前回書きそびれたので、ここに書いときます。


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桜が散って初夏になった。

その間俺は重力魔法使いのミオちゃんへ、入学式の日から声をかけ続けた。

[魅了]スキルのお陰もあってか、お喋りしながら駅まで一緒に帰るくらいには仲良くなった。

前世のコミュ力からは考えられない大戦果である。やったぜ。



「今日もコンビニ、寄っていい?」

「うん」



うむむ、どうしても少しぶっきらぼうな喋り方になるな。読点も多いし。

ビリーのおっさんの喋り方が少し移ったんだろう···コミュ症ではないぞ?

コミュ症ではないぞ??



「いらっしゃいませー」



気の抜けた店員さんの挨拶を聞きながら、俺は何を買おうか考える。



まずは入口の左側にある飲み物コーナーへ。

···お、新しい味のフラッペが出てる。

有名チョコレートメーカーとのコラボ商品ってのは心惹かれるけど、値段が高いし量も多い。

ハーフサイズを出してから出直して下さい。



次は乾麺コーナーだけど、ここはスルー。

放課後すぐにカップ麺は胃に入らないし、家にストックもある。

ちなみに俺は激辛のやつが好き。



惣菜も今日はスルー。

スーパーで冷凍食品をまとめ買いしてるから、数日はそれが夕食になる予定だ。



そして本命の1つ、スイーツコーナー。

シュークリーム、チーズケーキ、フルーツゼリー、カスタードタルト、エトセトラエトセトラ。

カタカナばかりで目が回る。



菓子パンも気になるな。

大きくてふわふわな蒸しパンが好きなんだよ。

ドーナツも美味しそうだ。

悩む、実に悩むぞ。



···そんな調子で5分ほど店内をうろつき、何も商品を取らずにレジへ向かう。



「···ハッシュドポテト、ください」

「はい、ハッシュドポテトをお一つ」



うん、今日はホットスナックの気分。

レジ横の棚にはコロッケやチキンも並んでるけど、今日の俺はハッシュドポテトだ。

細かく刻まれたじゃがいもがサクサクで美味。

しかも比較的安価なのが良い。

生活費は国から支給されてるけど、俺ってほとんど自炊しないから、食費が地味に嵩むんよ。



「ミオは、何も買わなくていいの?」

「あ、私はちょっとダイエット中だから···」

「···必要ある?」

「えっ」



つい口に出しちゃったけど、かなり失言だったかもしれん。

まあいいや。



「ミオはそのままで良い、と思う」

「···そうかな」



ダイエットって言ってもなー、ミオちゃんは別に太ってないぞ?

胸はデカいけどお腹は引っ込んでるし、むしろ理想的な身体と言って良い。

ミオちゃんの努力は否定しないし、買い食いしすぎるのも身体に毒だけどさ。

え、俺? 俺は別に多少早死にしても良いんだよ、2度目の人生だから。



「そのままで、かわいい」

「かわっ···!?」



うん、かわいい(愉悦)

これしきで照れるとはウブいやつじゃのう···。

チョロすぎて少し心配になるレベル。



「1人で全部は多いなら、私と半分こ。···好きなの選んで。私のおごり」

「え、え、······じゃあ、チキンで」



これぞシェアハピだな。

マソリアでも良くやったわ。

俺はたくさん食べたいのに少食という、悲しきモンスターだからな···金も無いし。



☆☆



アカリちゃんはあまり口数が多くない。

日本語に慣れていないから···というより、人と長く話すのが少しつらいように見えた。



可愛い見た目も相まって、彼女の事を簡潔に言い表すなら“寡黙なお嬢様”。というか幼女···?

そんな彼女が自分からコンビニに入って、商品を心から楽しそうに見て回るのは、初めのうちは少し意外だった。



···アカリちゃんから受け取ったチキンを食べながら考える。

私には放課後も話すほど親密な、“友達”と呼べる子はずっといなかった。



「ミオ、一口ちょうだい」

「···はい、どうぞ」



背伸びをしながら可愛らしくせがむ彼女を見ると、それだけで心が温かくなる。

自然と微笑みがこぼれる。



「今度は私が奢るね」

「!!! やったぁ」



やべえ、母性が溢れる。



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部活+試験のコンボにつき、5月中は週に1〜2回のみの更新となる予定です。

ただ、6月からは毎日投稿を再開して、そのまま完結まで突っ走るつもりです。

よろしくお願いします。


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