(12)『奈良県二上山丙種迷宮第一回侵入調査実況配信』~沸騰~
ダンジョンから退去する時に、持ちきれない鹵獲品や採集物を抱え込んでいる事は珍しくない。
そういう状況に備えて、荷物だけでエントリーコードを流せる様な
既に日が沈んだ時間だが、それを待つ間にも、武志達には心積もりをしておく必要が有った。
「くっくっくっくっ」
「あははははは」
「どう収拾付けるの、これ?」
スマホを見て笑っているのは、大臣と京子と陽一。
恵美は成る様に成ると達観して澄まし顔。
そういった調べ物も苦手ながらリーダーとして逃げられない武志は、しれっとカナへ指示を出す。
「カナ、俺達がダンジョンに潜っている間の動きを、要約して教えてくれないか?」
カナは即座に返事を返した。
『はい。世の中は混沌として阿鼻叫喚の有り様です』
「ちょっとカナちゃん要約し過ぎ!?」
自作物語のワンシーンをAIに描いて貰おうとしたら、本を見ながら目をキラキラさせている子供の絵を返された様な答えに、恵美が叫んだ。
『――誰も迷宮の真実に辿り着けていなかった事を今更ながらに世界が認識して、活発な議論が巻き起こっています。
現在真夜中のアメリカを除いて世界中からアクセスされている為に、この配信も既に一度サーバーがダウンしてしまった様ですね。現在は複数のミラーサーバーを設けて配信されています。
数多くの質問が寄せられていますから、大会議室に戻ったら質問攻めに遭うでしょうね』
「……一番多い質問は?」
『一体何が起こっているんだ』
「……せーの――」
「知らん!」「分かるか!」「幾ら出す?」「分かりません!」「小鬼に訊いてよ~」
「……おい、屁っブバーン、その幾ら出すってのは何だ? 金を提示されたらどうすんだコラ」
「そ・の・と・き・は♥ この動画のリンクを教えて上げるわよ♪」
「うざっ!」
「あー……カナ、次に多い質問は?」
『こんな画像は信じられない。フェイクに違い無い。一体何を企んでいるんだ』
「阿呆か……せーの――」
「そう思うなら俺達に訊くな!」「根拠の無い憶測は後で痛い目に合うぞ」「詰まんない質問~」「企んでません!」「冷静になろうよ~」
「カナ、次に多い質問は?」
『――次の質問は、どうやら改竄された画像が出回っていて、それに関する質問ですので答える必要は無いと思われます』
「おー……コラ? ミーム?」
『いえ、ボス部屋での映像に青い小鬼が合成されて、それが本当のボスでは無いかといった説や、小鬼の長老ではとの憶測が投げ掛けられています。その様な特異な小鬼が居れば私が気付いていますので、配信に便乗した
「ふーん……では次は?」
『次からは小鬼の装飾の様式といった細かな質問になりますので、これもこちらで答える必要の無い質問ですね』
「良し。これ以上質問されても何も分からんぞと釘を刺したところで、丁度良く
「見た目は美味しそうだよね~」
「がっぽがっぽだね!」
「いや……調査で来てんだから、これ含めて調査の一環だぞ?」
「ええ~!?」
そんな事を話しながらも、彼らはエントリーコードを滑走して大会議室に戻り着く。
其処には煌々と明かりが灯り、今も喧喧諤諤の議論が巻き起こっていた。
「静粛に! 静粛にお願い致します!
調査員が帰還しましたので、先ずは調査員への確認を進めたく、どうぞご静粛にお願いします!」
電話で遣り取りする人も多数居る中で、司会進行の局員が声を張り上げる。
武志達は他の局員に促されるままに、用意されていたビニールシートに回収してきた物品を並べるのだった。
その中には、当然壁からほじくり出した装飾も有れば、ゴロンゴから貰った緑の液が入った入れ物も有る。そしてそれ以外の全ては、ボス部屋で貰った作物類だ。
「調査が終わった後でいいから、装飾はそれぞれ一つずつ貰ってもいいか?」
「……それは今直ぐは答えられないが、善処しよう」
「いや、駄目なら駄目で、次に潜った時に貰えないか訊くだけだがな。
正直何度も要求するのは心証も良くないだろうから、出来れば次の調査員にでも回して欲しいとは思うが」
「それに、これを調べて本当に意味が有るのか? 小鬼にしても発掘するだけの代物って事は、小鬼の文明では無く、小鬼の指導者一人の趣味だぜ?」
「作風は大分違っているが……」
「知ってる! ピカソも時代によって全然作風違うんだよね?」
「……申し訳無いが、今は明確な回答は出来無い。ただ、善処はしよう」
武志達は、一人を除いて、それも仕方が無いと肩を竦める。
それで話は終わりかと思えば、迷宮局の楢橋氏は、丁度良い話題が出たと言葉を続けた。
「それは兎も角として、カナに確認したい。
カナの内部保存映像で、ボス部屋に入ってからのシーンをスクリーンに映してくれないか?
特に、入り口付近に着目し、他と様子の違う小鬼が現れたなら、それを追跡して欲しい」
『はい。了解しました。映像を再生します』
武志は、ボス部屋の映像と言われた所で一度掌で顔を覆ってしまったが、続く言葉に顔を上げて、仲間と一緒にスクリーンを見上げる事になった。
何が引っ掛かってこの様な確認をしているのかとの疑問を含めて、全天球カメラならではの視点を変えての確認には、何処か新鮮味を感じている。
だが、映像の武志達が大広間に入った直ぐのタイミング、それこそ映像の再生が始まって十秒もしない時点で、思いも寄らない物が映し出された事に、武志達は驚愕する。
それこそ、大広間の大扉が閉まり始めたその時、武志達が振り返っていたそのタイミングで、大扉脇の隧道から、他の小鬼とは違い、帽子を被ってジャケットを着てズボンを穿いた青い小鬼が、姿を現していたのだ。
杖を突きながら辺りを鋭く見回す小鬼の姿は、もしもその目にしていたなら決して放置は出来なかった筈だ。
そんな不可解な小鬼――いや、間違い無く小鬼の指導者の姿が、映像にはしっかりと残されていた。
『――発着場での発言を訂正致します。
しかし、私に気付かれずに内部保存データ並びに配信データを編集可能な存在を想定するのは、現実的では有りません。
同じく、私を含めた迷宮内の人間及びAIの認識に干渉し、見た物を見ていないと誤認させ得る存在を想定するのも、現実的では有りません。
但し、何れかを採用しなければならないとすれば、私は66%の確度で後者が妥当と考えます』
「……此処で映像を見ていた人間も、誰も気付かなかった。
映像が流れるまでに数秒のラグが有る海外の視聴者、それから巻き戻して見返そうとした視聴者からの問い合わせで、この青小鬼の存在が判明した。
配信の画角からは分かり辛かったが、しっかりと映っているな」
気付けば、先程まで煩い程だった大会議室の中は、しんと静まり返っている。
その静けさは、小鬼に囲まれた映像の武志達が隧道を通るのに伴い、武志達を見送った青小鬼がゴーベンの下へと向かおうとしているのが見切れる形で映像が終わるまで続いた。
そして、そこで
「一応確認するが、君達はこの青小鬼には全く気付かなかったという事で良いね?」
「
「私としては、今回の調査を君達が請け負ってくれていたのは、本当に僥倖だと感じているよ。君達が餓鬼と侮らず、友好関係を築く事を第一に考えてくれたからこそ今の状況が有るが、一つ間違えば偉い事になっていたのは間違い無い。
例えば、餓鬼の一体や二体は討伐しても構わないと、その反応も調査の一環と考える者が調査に当たっていたとするなら。
例えば、餓鬼を傷付ける事は無くとも、猿か何かの様に扱い集落からも平気で略奪する者が調査に当たっていたとするなら。
私は映像の中に、突然何の前兆も無く倒れ、息を引き取る調査員の姿を見ていたかも知れない。
特に最前線を攻略する探索者程、その傾向が強いからねぇ。
学生を採用したのも、良い方向に働いたのかも知れないな」
「それは違うよ? お兄ちゃんだからだよ?」
「そうだな。武志だからこの結果を引き出せたし、そういう武志だからこそ私達のリーダーを任せている。ダンジョンに引き籠もって人間性を無くした奴らを、探索者の代表みたいに言うのは間違っているぞ」
「殺伐としたのなんて、うちは嫌よ」
武志を周り中から讃える場面だったが、当の武志は苦い顔だ。
「おいコラお前ら、滅多な事を言うな。
本当に最前線を進んで行ける奴らってのは、ちゃんとスイッチを切り替えてんだよ。
お前らも四年の
「?? あの
「は? 明峰大学の金串翔と言えば、あの鬼神の金串では無いのか!?」
「――と、これくらい認識が変わる。防御機構から出るまでは、気が立った探索者が周りに居るままだから、スイッチは入ったままなんだろうな。迷宮局が知らなくても無理は無い」
「ほへ~……あの金串さんが、キジンとか呼ばれてるんだ。気の刃? それとも鬼の神?」
「後の方よ~。でも、あいつが変態なのは変わりないじゃ~ん?」
口を動かしながらも手も動かして、いややはり口の方が手よりも余計に動いているなと武志は京子に呆れる。
金串先輩が来ると予想していたのは、京子では無かったのかと。
「おいおい、ったくブバーンめ、言うに事欠いて変態は無いだろが」
「うひゃう!? ――うぇ、あ、か、金串先輩! お疲れ様っす!」
案の定、寄って来ていた金串翔に見付かって、呆れた視線を向けられている。
「ぶー、でも変態っしょ? うちは大っ嫌いな糞野郎相手にも、へらへらしたりとか出来ませ~ん!」
「それこそお前がさっき言った奴だぜ? 何でダンジョンの外でまで殺伐とせにゃならんのよ?」
「限度は有ります~。あんなのは、こう、ボキャッとやってから後の事は考えればいいのよ」
何を相手に想定しているのか、シュッシュッとシャドウボクシングを繰り出す京子に、金串翔は益々肩を落とした。
「タケちゃんよぉ、俺はお前を尊敬するぜ。良くこんなブバーンをコントロールしてられるわ」
「コントロールなんて出来んから隔離するんだわ」
「成る程……?
それはそれとして、俺もタケちゃんだったからこその結果ってのには賛成だぜ?
これはスイッチが入っていようがいまいが、皆のお兄ちゃんをやってるお前にしか導けねぇわ」
そんな言葉に、恵美を除いた何人かが噴き出す。
「お前ら知ってっか? 四年の中にも、歳下のこいつをお兄ちゃん扱いしてんのは結構居てんだぜ?」
「先輩、あれは揶揄ってるだけだろうが」
「いや、照れ隠ししてっけど、ガチだな。
まぁ、いいや。ちょっと場所入れ替えるぞ? ――これは、こっちで、それは、向こう……」
「それはどういう基準で?」
楢橋の問いに、金串は答える。
「俺が見掛けた事の有る場所で分けてる。この辺りは餓鬼窟の低層から順に。向こうのは人鳥渓谷の物。それから、怪山。残りは知らん」
「先輩、そんなに植物に詳しかったか?」
「いんや。けどな、
迷宮科なら攻略階層でもう卒業資格は十分だってのに、教授が論文も書けと言いだしてな? 確かに学生やってる俺しか書けんよなって引き受けたが、忙しくて忙しくて……。
お前ら面白そうな依頼引き当てたよなぁ。あー羨まし」
「ふっふ~ん♪ うちの手柄よ!」
「プラスとマイナスが相殺されてとんとんだが、確かにこれは京子の手柄だな」
ここで、疑問を感じた恵美が、金串へと目を向けて手を挙げる。
「……タケちゃんの妹、ちょっとおもろいな。
はい、恵美ちゃん、何かな?」
「ダンジョンの植物は稼げないって回収した事無かったけど、実はお金になったりするの?」
「うん、それはいい質問だね♪ 答えは――稼げ無いんよ~」
「ははは、それについては私が説明しよう。
迷宮時代当初は、当然ながら凡ゆる資源に可能性を夢見て、植物もしっかり採取して来たんだよ。
でもね、分析しようにも出来無かったんだ。塩基配列をデータ化しようとしてもエラーが出て、調べてみたら分析対象とした植物組織の痕跡すら残っていなかった。
動物実験では実験動物達が次々に謎の死を遂げてね、かなりの批判に曝された結果、今ではその殆どの研究が、術者が術の触媒に使えないかと試したり、伝説に残る古文書から使い方を模索したりといった、駄目で元々な内容が多い。それこそ各地の大学の迷宮科が、学生の卒業論文のテーマにするのが関の山のな。
本気で迷宮植物を研究する大学は片手の指の数で足りる程になって、つまり需要が無い。依頼を受けて採取に向かうなら別だが、依頼も受けてないのに採取してきても引き取り手が居ないのが現状だ。
そういう意味で、迷宮植物を採取してくる探索者も居ないんだよ」
「や、やっぱり美味しそうに見えても食べちゃ駄目だったのね! 危ないところだったわ~」
「まぁ、これが
迷宮の生き物は動物も植物も同じだったというのが今の通説だ。動物則ち魔物は、死ねば直ぐにドロップを残して消滅するが、植物は完全に死ぬまでが長い。擂り潰してもまだ再生する可能性が有るならば消滅しないが、流石に分析装置に掛けられる程ともなれば消滅する。もしもその消滅までに体組織に取り込まれてしまったなら……とね。
尤も神話の時代の出来事だ。迷宮時代を迎えた今でも、性病を患い死んだ事にされて隔離されていたのが真相だとする説も有る。
世界中に黄泉戸喫と似た伝説が有るのを考えれば、迷宮起源説に論調は傾いているな。逆に、同じ釜の飯を食う意味での、属するコミュニティの問題に無理に当て嵌めた説は、今は廃れてしまったね。
ただ、私も連絡を貰うまで知らなかったが、このニッチな迷宮植物の研究にも、進展は有ったらしい。
数少ない迷宮植物の本格的な研究を継続しているのが、奈良女子大学だ。そこからネット参加していた佐保教授が、迷宮植物学を専攻している
「真面目な話な、ちゃんと肥料をやって陽光の下で育てた迷宮植物は、分析機に掛けると僅かに成分反応を示す様になったんだと。
といっても完全じゃ無い。一年草だと種らしき物が出来ても芽吹かず、多年草で五年目辺りからやっとそれらしき反応が出たが同じく芽吹かず、しかしそこであの小鬼の畑だ。きっと般若の様に顔を
何と言っても、ダンジョンの中で本当に光っているのは燃える火炎しか無いって言われているところに、あの畑の場面で送られて来たスペクトルデータは煌々とした明かりの存在を示していたからな。
こうなると俺も大学に残留したくなってくるが、うちには研究科が用意されとらんからなぁ」
「何なら助教の席が空いているぞ?」
「うわっ!? 石垣先生、それは勘弁!? 人に教える柄じゃ無いって」
「案外、合っていると思うがね」
石垣教授までやって来る頃には、回収してきた物品の整理も終えて、他に遣り残しが無いか確認しているところだった。
そうなると、一旦区切りとして、全員別室へと案内された。
案内された部屋は、仕出し弁当が並べられた懇親会場だったが、何故か弁当と一緒にマイクも各席に並べられている。
そしてカナの同型機が宙を飛び、スクリーンにはネット会議画面と配信画面が並べて映し出されていた。
因みに、カナは元の部屋で番をしながら、こちらの配信を共有していて居ない。
「おいおい、これじゃ場所を変わっただけで、落ち着かないだろう?」
「私達は明日の調査に備えて、早目に上がると宣言しておいた方がいいな」
「皆、何処に泊まるのかな?」
「それは、宿を取ってると思うよ?」
「うちらは此処ね。カプセルホテルよりましな、二段ベッドの四人部屋が、五つくらい有るんだって」
「どう見ても此処で雑魚寝する気な教授達の姿も有るがなぁ……」
だが、下手に突っ込んで相部屋する事になっては溜まらないと、武志達は口を噤む。
そして、案の定懇親会のその場も、会議のその場と同じく質問が飛び交う場となるのだった。
“お弁当美味しそう! 何食べてるの?”
「弁当? 普通に家庭料理っぽい弁当だぞ? ――筑前煮に、お浸しに、これは何だ? 魚の唐揚げ? ――と、炊込み御飯だな」
“豪華~♥”
「美味しいよ♪」
そんな平和な会話が出来ていたのは、初めの内だけだった。
「君達は小鬼達とも随分意思疎通が図れていたが、あの文字と同じ様に言っている内容が頭に浮かんできたのかな?」
「いや、そんな事は無かったな。声の調子と身振りでの推測だ。と言うより、配信を見ていても大体何が言いたいか分かったんじゃ無いか? 素直で裏も無いから見たまんまだと思うんだが」
「それで分かるのはお兄ちゃんだけですぅ~」
「まぁ、お兄ちゃんだから、で納得出来てしまいそうだが、武志に恵美以外の弟妹は聞いた事が無いな」
「不思議よねぇ~」
だとか、
「乾坤一擲が使えるとは驚いた。あれは最前線に出る様な探索者しか使えない神通力では無かったか?」
「いや、俺のは使えているとは言えないので。一回こっきり一秒保たない猫騙しの様な技になっては、ああいったはったりに活かせれば御の字だな」
「では、あのまま続けば負けていた可能性も?」
「いや、流石に六階層をホームグラウンドにしている以上、強化無しでも後れを取る事は無いな。その場合は何が勝利条件になったのか分からんが」
だとかを言っている内は良かった。
しかし中には、
「餓鬼窟の六階層に潜っているにしては、活躍していたのは武志君だけじゃ無いかね。他の者は寄生しているのでは無いかね? 私は探索者は同じレベルの者でパーティを組むべきと思うんだがね」
という感じでややこしい事を言ってくる人も居る。
「いやいや、さっきも言ったが俺は乾坤一擲を一秒保たせられない程度だぞ? そもそも、今回の調査で余興は有っても戦闘は起きていないと理解している。まぁ、俺達の戦闘が見たければ、この依頼が完了したらその報酬のカメラドローンで俺達も配信を始める予定だから、それを見てくれ。
今回の調査で言えば、俺がリーダーとして出した重要な指示は、言ってみれば一つだけだ。敵意を見せずに友好を築く事。これに尽きる。
そして仲間達は完璧にその指示に答えてくれた。六階層を探索している以上、ちょっとした油断が命に関わると知っていながらな。
欠片でも敵意を見せたり、相手を侮って見下したりしていれば、今の結果は得られていない。背中を任せるに足る、最高の仲間だろ?」
「だが、空気が読めていない者も約一名居た様に思うが!?」
「ほ~ん――居たっけ?」
「お前の事だぞ、ったく。
まぁ、確かにこの京子は空気を読まずに要らん事をしでかすが、それはこいつが優秀で、やるべき事をあっと言う間に終わらせて、暇をするからだ。
今回は安全な探索だったからその悪いところが出た。六階層で馬鹿をやった覚えは一度も無い。
こいつの優秀なところを見たければ、俺達の配信でも後日見てくれればいい」
武志は無難に遣り過ごしながら、夜の部の会議が始まると途中での中座を宣言して、そして調査員への確認事項が無くなったとみたら、宣言通りに仲間を連れて退席する。
「いや、君達にも議論に参加して貰えると助かるのだが」
「困るな。歴史的発見の重要な役割を担っているとの自覚無く、無責任に動かれるのは」
「……俺達の役目は、二上山ダンジョン内部の状況を調査し、可能ならば二上山ダンジョンが
そして、既に
魔力濃度が高めな理由はまだ出せていないが、魔力を蓄積しそうな装飾品や植物があれだけあればな。内部の魔力濃度のデータも既に転送されているのだから、AIに訊けば何か答えを出してくれる材料は揃っているのでは?
つまり、俺達が元々予定していた調査分は既に完了していて、此処からはサービスタイムだ。そして今の俺達の役割は、あんた達の出した調査目標に出来るだけ応えられる様、体調管理して調査に臨む事だと捉えている。
あんた達の役割は、俺達の調査結果を元に分析し、次の調査目標を定める事じゃないのか?
役割分担を履き違えて、無意味に俺達を残らせたなら、恐らく明日の調査は潰れるに違い無い。ちょっと腹に手を当てていただけであれだけ大騒ぎした小鬼達だ。寝不足な様子を見せたなら、何もさせて貰えなくなっても不思議では無いな。
それが無くても寝不足でダンジョンに入るなど有り得ん。法令にも違反する事を考えると、八時間はきっちり休ませて貰うから、それは承知しておいてくれ」
武志は探索中のリーダーで有り、仲間の命にも責任を持つ故に、答えは初めから決まっている。
それを、無茶を言う人間相手にも通じる理屈を組み立てて、必ず押し通してくれるとの信頼が有った。
だから、彼らのパーティは揺るがない。
今回は、どうやら迷宮局員が無茶を言った人達を取り成して引き下がらせているが、もしも相手がごねていた時は、逆にその迷宮局員に相手をこのプロジェクトから外す様に訴え掛けていたのだろう。
そして恐らくそれは、実現させられていた筈だ。
武志は、背中を任せる事が出来る最高の仲間だと口にしたが、その仲間達にとっても、武志は命を預けるに足る最高のリーダーだった。
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