梅干しと味噌と、ちょっとだけ素直(2)
昼休み、教室の隅。
カケルがポケットからごそごそと何かを取り出した。
「お前、今日もパンだけ? 腹減るだろ」
「ありがと。でも、これ、どうせ梅干しでしょ」
「お前、梅干しナメんなよ。ビタミンCなめんなよ」
半笑いのカケルからおにぎりを受け取った。
ほんとはすごく嬉しいけど、それは顔に出さない主義。
「どうせなら、ツナマヨがよかったなー」
「文句言うな、あるだけありがたく思え」
「えらそう」
カケルはちょっとだけ口元を緩めて、俺に目を向ける。
わたしはおにぎりにかぶりついた。
やっぱり梅干し、でもめっちゃうまい。
「なに見てんの?」
「見てねえし」
「ウソだ〜」
わざとからかうと、カケルがわかりやすくムキになる。
そういうとこ、すごくカワイイと思う。
「見てたのはお前がちゃんと食ってるかって、それだけだから」
「ふーん。心配性だね」
思わず笑っちゃった。
そしたらカケルが、妙にそわそわしはじめる。
「……味噌、うめえ」
「それ、私が好きなやつ!」
「さっきツナマヨって言ったよな」
「ツナマヨはツナマヨで好きだし、味噌は味噌で好きなの!」
好きなもんは、好きってだけ。
それ以上でも、それ以下でもないのに。
昼休みのチャイムが鳴った。
ちょっとだけ、名残惜しい気持ちを胸にしまって立ち上がる。
「また作ってきてよ」
「なんでだよ」
「べっつに? なんとなく?」
カケルが目を細める。
わたしは大きく手を振った。
きっと、明日もまた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます