あとがき
この掌編集は、日々の中にある小さな出来事をすくい上げながら、
「君」と「僕」がともに過ごしてきた時間を、そっと言葉にしたものです。
洗濯物を干す朝、ふたりで笑った昼下がり、
ささやかな口喧嘩、夜中の夢、そして懐かしい町を歩いた日。
どの一篇にも共通していたのは、
何気ない時間の中にひそむ、確かなぬくもりでした。
派手なドラマはないけれど、
だからこそ大切にしておきたいと思える瞬間たち。
それは、たとえば手をつなぐような感覚に似ていて――
言葉にせずとも伝わる、けれど言葉にすればもっと伝わる、
そんな愛しさのかたちです。
「君」はときに甘く、ときに手厳しく、
でもいつも「僕」のそばにいてくれる存在。
この短編集のすべては、君との日々を、
記憶の箱にそっとしまっていく作業でした。
そして、最後の詩「手をつなぐように」では、
これまで編んできた思い出と、これから迎える未来とを、
言葉でやさしくつないでみました。
読んでくださったあなたの心にも、
どこか似たような時間や誰かとの記憶が、
そっと浮かんできたなら――
これ以上の幸せはありません。
最後まで読んでいただき、有難うございました。
またどこかで、お会いしましょう。
君と僕 ある夫婦の軌跡 風見 理央 @rio_kazami
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