このお話は、ひとふしぎな視点から描かれた、とてもユーモラスでちょっぴり切ない物語でした。主人公は、なんと“剣”。しかも、どこにでもあるような、ごく普通の鉄の剣です。
勇者といえば、勇ましくて正義の味方……そんなイメージを思い浮かべるものですが、この物語の勇者はちょっと(いや、かなり)ズレた人物でした。正義感というより「自分ルール」で突っ走り、剣を道具のように、いや、鍛冶屋に何度も持ち込んで「壊れたら修理すればいい」という雑な扱い。読んでいて何度もクスリと笑ってしまいましたが、それ以上に、剣の「ぼくはただの剣だよ~!」という心の声がとても愛おしく思えました。