REALITYから生まれた物語

AkitO

初恋①

さよならって嫌いな言葉。


凛音りおんの心とは裏腹に別れを告げた日は、快晴だった。


白い壁、電子音、冷たくなる肌。

大好きな人がこの世から、いなくなる悲しみを知った彼。

あの温かい手、美味しい手料理、すべて「愛」を貰った。

また、会いたい。けど。もうこの世にはいない人。


凛音が中学一年生の夏、祖母は亡くなった。

両親は共働きで幼いころから、遊んでくれた祖母。

凛音は悲しみにふける。。



ブレザーのネクタイを締めなおす凛音。

チャイムが鳴り、先ほどまで賑やかだった教室が落ち着きを見せる。

「ほら、授業始まるぞー、席につけー」

そんな先生の言葉はどこか遠くに感じながら

凛音はまるで作業をしているかのように教科書を開く。

彼の時間はまだ未だあの日から動いていない。


隣の席にいる花織かおりが小さな声で

「おーい、凛音君、先生が呼んでいるよ?」

その一声で、自分がまたぼーっとしていると気づく凛音。


「はい、あぁ、聞いてませんでした」

「ちゃんと授業に集中しろー」

教室の中に笑い声がみちる。

その中で花織だけは心配そうに凛音を見つめていた。


昼食を一人で食べている凛音に駆け寄る花織

「大丈夫?まだ二か月しか、経ってないから心が追いつかないよね」

「あぁ、あまり寝れないし、食べてもあまり味がしなんだ」

「これ、凛音君が好きって言ってた林檎だよ」

「林檎かぁ、ありがとう。しかもウサギの形してるし」

「初めて作ったんだけど、、、、、下手だったらごめんね、、、?」

「可愛いウサギさんだ、食べるのがもったいないかも」

「凛音のために、作ったから食べてくれないと困る」

「食べる食べるよ」


微笑む彼女の人差し指に絆創膏があることに凛音は気づていない。


凛音は笑顔でご馳走様を伝えると、恥ずかしいそうにしながら

「ありがとう」


午後の授業を終え、急ぎ足で教室から出ていく生徒たち。

教室に残っていた凛音に花織は元気よく

「また明日ね!」

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