PVも欲しい。でも書きたいものもある。そんなときの話

雨宮 徹

PVも欲しい。でも書きたいものもある。そんなときの話

 皆さんは小説を書くからには「多くの人に読まれたい」と思うでしょう。自然な感情です。しかし、「書きたいように書く」と両立させるのは難しいです。「書きたいように書いて読まれる」ということを実現するのはプロ作家でも難しいと考えます。では、カクヨムなどにおいて、どのようにすれば両立を目指せるか。今回は、その方法を探ります。



 結論から書きます。

・ネタを思いついても、すぐに書かない

・「読まれたい」という気持ちに際限はない



 まず一つ目。ネタを思いついても、すぐに書かない方がいい理由は「一つのネタ単体では読まれない」からです。具体例を出します。下記は私が考えたネタです。



あらすじ

 近未来の日本。そこは、「七つの大罪」によって支配されていた。北海道は「暴食」を司る魔王の力によって、人々は食べ物は食い尽くし、飢えが当たり前となっている。七つの大罪は各地方を支配し、関東地方はボスである「傲慢」が支配している。


 主人公はタイムマシンを発明し、「七つの大罪」の支配が始まる前にタイムトラベルをする。果たして、「七つの大罪」を打ち倒すことはできるのか。



 このあらすじを面白いと取るかは人次第です。私はネタを思いついた時に「これはウケる」と思いました。しかし、少し寝かせた時に「これ、自分の書きたい内容じゃない」と思いました。このあらすじは、ドラゴンノベルスコンテストの中編テーマ「現代ファンタジー×SF」に沿ったものだからです。つまり、「読まれたい」だけを意識したあらすじなのです。



 このあらすじを思いついた時、「タイムマシンはどうするか?」という問題にぶつかりました。そこで、「コンビニのレジをタイムマシンにするのはどうか?」と考えました。そして、レジを通した商品だけしか武器にできない。「七つの大罪」の部分は自分には合わなくても、このタイムマシンの仕組みは使えると考えました。しかし、これ単体では面白い作品を書けそうにありません。



 しばらく経ってから、歴史ものを書きたいと思いました。それは、過去に歴史ものでヒットして「読まれた」と「書きたい」がうまく両立できたからです。その作品は「日本が近代化に成功して、アラスカを購入して無双する」というあらすじです。嬉しいことに11万PV、歴史ジャンルで週間ランキング3位を記録しました。



 新作歴史ジャンルを書くにあたって、今川義元を主役にするのはどうかと考えました。彼は油断して織田信長に負けたことにより、「間抜け」だと評価されています。しかし、生前には武将の一人として様々な取り組みをしていました。ですから、彼が信長を打ち負かして、天下統一すれば面白そうと考えました。しかし、戦国時代の知識が高校生レベルの私には書けそうにもありません。歴史ジャンルは史実と大きく矛盾すると批判が飛んできます。このネタもそっと胸の中にしまいました。



 さらに日が経ち、急に「今川義元の子孫がタイムトラベルをして、レジを通した商品のみで今川義元を天下統一に導くのはどうか」と思いつきました。つまり、先ほど没にしたネタ二つの掛け合わせです。このあらすじは「書きたい」と「読まれる」を両立できると考えました。現在、11話で2300PV、星26、ブックマーク57です。私の中では読まれている部類です。11万PVには遠く及びませんが、「あれは偶然だった」と考えるようにしました。



 二つ目について。「読まれたい」という気持ちに際限はありません。100PVを達成して満足する人もいれば、1万PVで満足する人もいます。しかし、人は欲深い生き物ですから、さらに上を目指します。ですが、上には上がいるわけで、どこかで心が折れます。「自分には才能がない」と。



 ここで少し視点を変えましょう。「PVが多い=読まれた」なのでしょうか。私は半分正しく半分違うと思います。PVは読まれた証です。しかし、それが読者に刺さったかは別問題です。PVが少なくても、星が合計30で、すべて星3評価なら100PVでも読者に刺さったと言えるはずです。PVだけを追うならば、「読まれる」ように書けばいいのですが、それはあくまでも「読者に消費される」だけです。小説は非日常を「体験する・提供する」ものだと考えます。消費と体験には大きな違いがあります。



 長くなったので、簡潔にまとめます。

・ネタを思いついても少し寝かせる。すぐに書き出すとネタ一つでの勝負になり、せっかくのアイデアが読まれずに終わる。

・「読まれる」について、視点を変えてみる。



 これはあくまでも「書きたい」と「読まれる」を両立できるかもしれない方法です。うまくいくとは限りません。でも、すぐに書き出す前に少し寝かせてみるだけで、あなたの作品が「消費される小説」から「刺さる物語」に変わるかもしれません。



参考


大日本帝国、アラスカを購入して無双する

https://kakuyomu.jp/works/16818093077601861143


レジ打ち今川義元伝〜コンビニ商品で戦国無双〜

https://kakuyomu.jp/works/16818622172528592436

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

PVも欲しい。でも書きたいものもある。そんなときの話 雨宮 徹 @AmemiyaTooru1993

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

同じコレクションの次の小説