第39話

ロイドとのあまりの戦力差に絶望しながらも、魔法陣を充填し戦闘の準備をする。魔法陣は左手がウィンドバースト、右手がウィンドカッターだ。

ついでに魔力も確認しておく。


MP 125/126 デバイス魔力200 デバイス内自己魔力100


カーサルに入ってから、最大魔力上げができなかったので、このような万が一に備えこの魔力分配にしていた。ご都合主義ってやつだ。


(ウィンドバーストで動きを止めてからなら、AGIが高かろうがウィンドカッターも当たるだろう…魔法影響下で闘気は纏えないから、闘気で防御もできないはずだ)


「俺はいつでもいいぞ……」


(後は相手に油断させて、致命傷を与える…それ以外は勝つ方法はない……)


「では、始めるか…ホトス君、合図を頼む…」

「……え?……は、はじめ!」


これ以上に気の抜けた決闘の始まりはないだろう。俺はそんなことは気にせず、ロイドに向けて走る。ロイドが闘気を纏う。案の定、黄色い闘気だ。


(ウィンドバースト)


まずは左手から魔術を同時に2発撃つ。ロイドは魔術を確認してから、俺に向け手をかざす。


「圧波」


黄色い闘気が俺に向け放たれる。


(闘気を飛ばしただと!)


闘気と魔術が互いにぶつかり相殺される。


(驚くことはない!…ただ闘気が飛んだだけだ)

「む?黄気がなぜ……」


ロイドが闘気が相殺されたことに少し驚いている隙に、ウィンドカッターの間合いまで近づくことができた。


(この距離なら当たるだろ!)

「ウィンドカッター!」


右手から魔術と魔法の3重発動のウィンドカッターを撃つ。


「ふ」


ロイドはウィンドカッターをよけずに抜刀した剣で受け流す。


(なんだよ、それ!3重発動だぞ)

「ぐ!」


流石に3重発動には耐えられなかったのか、ウィンドカッターはロイドの剣を弾き飛ばす。


(今、残ったウィンドバーストを放ったら勝っていたか…いや、致命傷にはならないか…)


一度距離を置き、魔法陣を充填する。剣を失わせたのはでかい。


(剣を拾いに行ってみろ…その隙にウィンドカッターで細切れにしてやる…)


ロイドは闘気を纏うと、無刀で向かってくる。どうやら、剣を拾いには行かないようだ。


(ウィンドバースト)

「圧波」


牽制にウィンドバーストを放つ。魔術を確認したロイドが闘気を放ち、闘気と魔術がぶつかる。今回は魔術のみが掻き消え、放たれた闘気が向かってくる。


(ウィンドカッター!ウィンドバースト!)


先に放ったウィンドカッターが闘気の波を霧散させ、ウィンドバーストがロイドに当たる。


(ダメか!)


ロイドはすでに闘気を纏い直しており、ウィンドバーストが霧散される。


(これで、動きが止まればウィンドカッターで致命傷を与えられたのに……)


デバイス魔力が少なくなってきたのでウィンドバーストの魔法陣のみを充填する。残る魔力はたぶんこんな感じだ。


MP 41/126 デバイス魔力100 デバイス内自己魔力100


充填している隙にロイドがすぐそこまで迫ってきた。


(この距離ならウィンドバーストは避けられないだろ!)

「ウィンドバースト!」

「圧波」


ウィンドバーストの3重発動が闘気の波をかき消し、ロイドの動きを止める。この魔法影響下では闘気を纏うことができず動けないようだ。


「ぐぅ」

(勝った!)

「ウィンドカッター!」


ウィンドカッターを足に向けて放つ。


「アクアシールド!アクアアーマー!」


ロイドの放った2つの魔法がウィンドカッターを阻む。


(な!魔法が使えるのか!…魔法影響下で闘気は纏えないが、魔力は纏えるのか……)


ロイドが迫りくる前になんとか魔法陣を充填しようとするが、間に合わず蹴りが繰り出される。


(速い!)

ドッ!

「うっ…がぁぁ!」


避けられずに蹴り飛ばされ、意識も飛びかける。骨が折れたかもしれない。


(闘気を纏ってなくてもこの威力かよ……)


「ぐ……」


起き上がることができず、ロイドが転がっていた俺の体を踏みつける。


「うぐっ」

「勝負あったな…危うかったぞ…」

「くそ……」

「魔法と魔術を同時に放っているのか?それにあの魔纏の速度……恐ろしい才能だな」


ロイドが勝利を確信し、悠長に話し出す。

(おいおい…どいつもこいつもなめやがって……勝負はまだついていないだろ……)


「さて、流石に子供に致命傷を与えるのは気が引ける…負けを認めてくれないか?」


(こっから逆転できないとでも思っているのか?…それが油断だっていうんだよ!!)

「うるせー!ウィンドシールド!」


上から下に吹く局所的な突風が、俺ごとロイドを襲う。


「ぐっ!」

「ぬぅぅ!」


ロイドはギリギリ倒れこむのを耐えている。

ウィンドシールドは盾というより、制圧力が売りだと昨日思った。イメージも割と自由が利く。この局所性ならロイドも動けないだろう。それは俺もだが、手を向けることくらいはできる。


「うらぁあああ!」


なんとか両手をロイドに向ける。


(魔力影響下で闘気は纏えない!ロイドは魔法の多重発動はできなく、俺の多重発動をこの距離では防げないはずだ!)


(防がれても何発でも撃ってやる!終わりだ!!)

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