第24話

10日後、ようやく国境にたどり着いた。馬鹿正直に関所を通る必要はない。密入国ってやつだ。

ここからは村に通い手紙の宛名人を探しながら、首都を目指す。手紙の宛名はマリアとカナリアだ。マリアは差出人の妹で、手掛かりに懐中時計があるが、カナリアに至っては、なんの情報もない。


(ファミリーネームくらい書いとけよ…)


まずは、マリアを見つけ出し、マリアからカナリアに繋がるしかないだろう。マリアがカナリアに心当たりがなければ、お手上げだ。ノービア在中のカナリア1人1人に手紙を持ってもらい、見つけ出すしかない。


(配達もきちんと熟さなければならないが、強くなることも必須だ。もう、なにも失うことがないように努力はこのまま継続しよう…)


魔力の無駄撃ちによる最大魔力と属性効率上げは順調だ。今のMP詳細は以下のようになった。


MP

最大魔力 126(934/1260)

火属性効率 50/50x2(100/10000)

水属性効率 50/50(1150/10000)

風属性効率 50/47x4(733/10000)

光属性効率 50/50(150/10000)

氷属性効率 100/100(200/10000)

生成属性効率 150/150x4(108/10000)


(最大魔力は14上がった。魔術1発分だ。少ない気もするが100日後にはさらに10発分ぐらい増えると考えると大きい。風属性効率もちょっと上がった。こちらのほうが微々たるものだ。風魔術の使用魔力は相変わらず12のままだ。地道に頑張ろう)


しばらく走っていると、村を見つけた。


(久方ぶりの村だ。まずは食料補給だ、もう残り少ない。ずっと野外で寝てきたし、毎日走りっぱなしで疲労困憊だ…今日は宿もとろう…もちろんマリアを探しながら)


この大陸で食料を買うには、食料屋、素材屋、料理屋の選択肢がある。食料屋は穀物や芋を使った比較的保存のきく料理を安く購入できる。素材屋は、穀物や野菜、肉などの料理する前の材料を買える。料理屋は上手い料理がすぐ食べられるが高い。それぞれ一緒になってたり、兼業しているところもあるようだ。宿屋は特に料理屋と一緒になっている。


村に難なく入ることができたので、食料屋で数日分の食料を買うことにする。食料屋はすぐ見つけることができた。


「10日分の食料が欲しい」

「10日分?もてるのか?」

「大丈夫…この中に入れてほしい」


マジックポーチを開き、中が広いことを見せる。


「マジックポーチか…この村で悪さする奴はいねーと思うが、あんまり見せびらかすなよ」

「分かってる…」

「はいよ、10日分10リカだ。中に入れちまうぞ」


店主が、ポーチに10食分の食料を入れるのを見届け、あらかじめ用意していた金額を渡す。

この大陸の通貨はリカだ。食料屋は1食1リカで、料理屋は1食5〜10リカかかる。料理屋はやはり高い。


「10食分買ってくれたから、おまけにこれやるよ。野菜食わなきゃ大きくなれねーぞ」

「ありがと…」


店主からおまけだとは思えない量の野菜をもらい受ける。


(野菜なんて当分食べていない、あらがたいな)

「いいんだ。どこも戦争で大変だから助け合わないとな…この村の者じゃないんだろ?」

「そうだけど…」

「どこに向かってるんだ?」

「マリアって人を探してる…」

「マリア…マリアねぇ…この村にはいないと思うぞ?親戚か?」

「いないのか…わかった…、まあそんな感じ…」

「力になれなくて悪いな…」

「いいよ、野菜もらったし…情報ありがとう…」


いい感じに勘違いをしていたので、この村にマリアがいないのは正しい情報なのだろう。

ねんのため、他にも数名質問しようとは思うが、今日はもう宿を探して休みたい。明日にしよう。


しばらく歩くと、いい感じの宿屋を見つけ、中に入る。


「一泊したいんだが、いくらだ?」

「1泊だけなら30リカだよ。うちは寝具に力入れてんだ。ちと高いが寝るだけなら最高よ」


店番をしていた女性が、店の特色を自慢げに話す。


(一泊30リカという値段は、一泊10リカの安宿にしか泊まったことがない俺にはどのくらいの高さなのか分からないが、今日はゆっくり休みたいと思っていた。金も売れるポーションもまだまだある…今日はここでいいか…)


「じゃあ、とりあえず一泊頼む」

「はいよ、二階の5番の部屋ね。これが鍵よ」


店番から25と書かれた鍵を受け取る。


「水浴びしたいんだけど、いいとこある?」

(きもちよく寝るなら、シャワーは必須だ…ないなら村の外まで浴びに行く覚悟だぞ…)

「裏庭を使いな、水は桶1杯までサービスだよ。二杯目から金かかるからね…大事に使いな」

「分かった…ありがとう…ちなみにマリアって人、この村にいるか?」

「マリア?聞いたことはないね…」

「そうか…わかった…」


やはりこの村に、マリアはいないようだ。


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