お手紙届けに三千里

第9話

地図で、人攫いの拠点を探すが見つからない。馬車の移動は基本日が出ているうち行うが、後ろ暗いことの移動は夜に行うかもしれない。より強い奴らに売りに出す前の商品を乗せていることがバレると奪われることがある。目立つ行動はしないはずだ。キャンプと奴隷商人がいる村をつなぐ街道全体が見れるように地図を設定し、馬車がないか確認する。

(ずっとこの街道を監視するのは厳しいが、起きているうちはできうる限り見張っておこう)

しばらく監視したのち、拡大表示を解除し、休憩する。するとすぐ眠気が襲ってきた。抵抗できない。

(すぴー……)

朝がきた。

(ぐぬぬ……)

起きて、ご飯を食べながら、リングの魔道具を起動し、地図を街道を見張れるように動かす。

(馬車は1台も走ってないか……、今日は村に侵入して奴隷市を探ろう……)

魔力は万が一に備え温存しておく。村への侵入後、まず飯や服などの物資を買い集め、奴隷市へと向かう。結構買い込んだが、財布の中身はまだまだあった。

奴隷市に着いたがそのまま通りすぎる。外から中を覗った結果、用心棒が1人店前に立っていて、店頭にはカウンターのみが置いてあり、店主らしき人物が座っていた。路地裏に入り、店舗の後ろ側を確認すると壁には鉄格子が並んでいた。近くに置いてあった木箱を積み、鉄格子から中を覗く。大人が数人、子供が2人牢屋に閉じ込められていた。誰も知らない顔だ。

(まだ、運ばれていないな……さらった人間の食費もただじゃない、人数も多いから人攫いたちは、近いうちに必ず売りに出すはずだ)

村から脱出し、街道近くの物陰に身を隠す。地図で街道全体を監視したり、キャンプにあると思われる人攫いの拠点を探すが、見つからない。

(人攫いが行動するとしたら夜だろう。襲ってきた人攫いは、一晩中俺を探していたはずなのに、眠そうになかったから夜型だと考えられる。人攫いが昼に働いていてほしくない勝手なイメージだ)

人攫いが夜型だろうが、奴隷市は夜遅くまでやっていないことに気が付いた。店が閉まる前に運び出すはずだ。腕によっぽど自信がなければ、商品を乗せた馬車を一晩中奴隷市の前に晒すようなことはしないだろう。

(運び出す時間は、日暮れから奴隷市が閉まるまでの間だろう。その時間はしっかり監視しよう)

冒険者や傭兵の手も借りたいが、依頼できるギルドがどこにあるのかも分からない。ギルドを介せず、質の悪い護衛を雇っても、状況が悪化する可能性がある。今は、手を借りるのは辞めておこう。

日暮れまでは、街道を軽く監視する程度にし、リングの魔道具を検討することにする。

(地図の機能は絶大だった。他にも素晴らしい機能があるかもしれない)

昨日はステータス全体を注視したが変化はなかった。今日は1項目ずつ注視していくことにする。まずは1番上にある謎の「user 7」の項目だ。注視して魔力を流すと早速変化がありステータスが切り替わる。

user 7

適正属性：風・生成

闘気色：なし

システム：魔法

(適正属性！)

風属性は知っていたが、俺にはもう一つ生成属性の適正があるらしい。初めて聞く、きっと最上位属性か特殊属性のどちらかだろう。自分に才能があることにうれしくなるが、生成属性の魔法を登録しなければ魔法は使えない。宝の持ち腐れだ。将来に期待しよう。

再度、1項目ずつ注視するが変化はない。最後の欄である「魔法」を注視する。

魔法

風魔法：ウィンドアーマー、ウィンドカッター、ウィンドバースト

(俺が使える魔法一覧か……さらに詳しく見れるのか…？)

「ウィンドアーマー」を注視すると、魔法陣が表示された。

(内容ではなく魔法陣か。いや、これは立派な情報なのだろう。魔法陣には魔法の内容がすべて詰まっているはずだ……驚くことばかりだな)

さらに、魔法陣を注視するが、変化はない。

(ここまでか……この魔法陣、模写して売りつければ金になるだろうか……後で運用方法を考えよう)

ステータスが元に戻るように念じると、すぐ元の表示に戻る。相変わらずキャンセルは簡単らしい。情報過多だが、すぐ戦力になるような情報はないので、そのまま「MP」の項目の検証に移る。注視し魔力を流すとまたもステータスが切り替わる。

MP

最大魔力　110(758/1100)

火属性効率　50/50x2(50/10000)

水属性効率　50/50(150/10000)

風属性効率　50/48x4(1032/10000)

生成属性効率　150/150x4(32/10000)

(最大魔力に各属性効率か……数値の詳細が分からない、後で変化があったとき比較できるよう書き留めておこう)

(最大魔力は110だ…MPの分母の値だな。おそらく(758/1100)の分子の値が0か1100になれば最大魔力が増えるのだろう。属性効率は初めて聞く単語だ。計算すると火が2、水が1で適正属性の風、生成の値がほぼ4だ。効率ということは、適正属性は水属性の4倍、火属性は水属性の2倍多く発動できるということだろうか…)

安直に考えて、各属性魔法は使用魔力に各属性効率が掛けられた値が必要魔力量を超えていれば発動するのだろう。

俺の風魔法の魔力使用量が24なのを考えると、元々風魔法は魔力が100必要なことになる。

(確かに最大魔力が100もない一般人は、適正属性以外1発も撃てないな)

適正属性である風属性効率と生成属性効率にも少し差がある。俺の風属性と生成属性の違いは魔法の使用量だ。生成魔法は1回も使ったことがない。使い続ければ属性効率も上げられるのかもしれない。

火属性効率がなぜ少し高いのかは検討がつかない。

それ以降、ステータスは何を注視しても変化はなかった。

(いろんな情報を知れたが、即戦力になるものはなかったな…)