第8話
北に向かう。他にもいるかもしれない追っ手を撒くためにも、軽く駆ける。
リングの魔道具で、他人のステータスを観ることができた。アクションは、他人を注視してリング魔力を注ぐことだった。
(後者は流れていた魔力をリングが勝手に使っただけだが……)
注視や魔力を過剰に注ぐ行為は、一度別々に試したことがあるが、同時に行ったことはなかった。それを踏まえ、リングに魔力を流しながら左上のステータス全体を注視する。
(特に変わりないか……次は地図だ……)
同様に、リングに魔力を流しながら左下の地図を注視する。
「うお!」
地図が目の前いっぱいに拡大され、駆けていた足が止まる。
(でかくて見やすいが、流石に邪魔すぎる…)
意識して元に戻そうとすると、地図は元の大きさに戻る。
(元に戻すのに魔力は必要ないのか、魔道具の効果を消すときと同じだな……)
地図の拡大に使った魔力は1だった。もう少し距離を確保してから検証しようと再度駆ける。
数時間後、昼の休憩がてら、拡大地図の検証を行う。
地図は拡大前と同様に現在の状況を即時に反映している。右下には小さく100と数値が書かれており、その隣には◀と▶のマークがある。おそらく、100は地図に描かれている距離を示しているのだろう。自分を中心に半径100mってところだ。数値を注視しても値は変わらなかったが、◀と▶のマークを注視すると、値を変えることができた。下は5から、上は7000000まで、地図の倍率を変えられる。この星は綺麗な真ん丸だ。
値を10ぐらいにすれば、自分の周辺をより詳細にすれば、地図を拡大したままでも辛うじて動けるようになる。自分を真上から俯瞰している状態だ。
(このまま戦えば死角なしだな。ものすごく動きにくいし、足元が疎かになるのがデメリットだが)
右上にも、▲、◀、〇、▶、▼のマークがある。〇の上に▲、下に▼、右に▶、左に◀の配置だ。それぞれ注視すると、地図の中心を自分から外して上、左、右、下に移動することができるようだ。そのまま地図の倍率も変えることもでき、1番近くの村を探して見てみると人が動いているのも反映されていた。動かし放題、盗み見放題だ。〇を注視すると、自分に地図の中心が戻ってくる。
(……この機能があれば、みんなを探すことができる。キャンプには奴隷商人はいない。売り払うには移動が必要だ。護衛はいるだろうが、人攫いの拠点に乗り込むよりは確実に少ないはず。護衛が2人以下なら魔法で倒して、みんなを救出できる。今なら、ポーションを売れば金があるし、冒険者や傭兵を雇うことも可能だ)
それから地図で、近くの奴隷商人がいる村を探すためキャンプ周辺を見る。
(あった!家の前に無造作に檻が置いてある。おそらくこの村だろう)
簡単に見つけることができた。キャンプから1番距離が近く、他の村には倍以上の距離がある。それに周辺の他の村は小さく、檻が置いてある家もない。
(地図に建物の中を見る機能があれば完璧だったのに……これ以上は望みすぎか……、とりあえず今は、この村付近まで移動しよう)
午後は日が暮れるまで、村への移動に費やした。奴隷商人がいるかもしれない村に子供1人で入るのは危険すぎる。明日、日が出ているうちに、こっそり入って確認することにした。
今日も平原で寝れるところを見つけ、ご飯とシャワーを済ます。
(村への移動、つまり手紙を届けるのとは逆の行為で契約からの罰則はなかった。結構緩そうだが、この契約は罰則を受けるラインが分からないから怖すぎる。早く自由の身になりたいぜ……)
寝床に入り、拡大地図を表示する。次は、キャンプを中心にし、人攫いの拠点を探る。
(執着しないと誓った。でも救える可能性があるなら、諦めたくない……死なない程度にできるだけ頑張ろう)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます