第7話
「まぶ……」
日差しの眩しさで目が覚める。日が出てから起きてしまった。ご飯を食べながら、回らない頭をたたき起こす。
(1時間で魔力が6回復するなら、朝のうちに魔法を2回使ってもいいな……)
荷物をまとめ、何を検証するか考えながら歩きだす。
(リングの魔道具は使い方がわからない、絶対に他の機能はあるはずだ。地道に検証していくしかないか。今はウィンドアーマーの検証でもしよう)
リングの魔道具に必要以上に魔力を流したり、左下の地図を注視したりしてみたが何も変化は起こらなかった。タッチも物理的にできなく、地図が大きくなるように念じたり声に出しても変わりない。諦めてウィンドアーマーを起動しようとする。
(ん?人か……)
ウィンドアーマー発動前に索敵すると、キャンプがある南東方向から人が来ていることが分かった。向こうもこちらに気づいたのか向かってくる。
(狙いは、俺か……、俺の痕跡をたどってきたのか?この距離だと闘気持ちかも分からないな)
俺は反対方向に走り出す。ウィンドアーマーは使わない。使える魔法は4発、1発も無駄にはできない。全力で逃げるが、ステータスが負けているのか、差は広がらない。
(逃げられないなら、戦うしかないな)
逃げるスピード落とし息を整えてから立ち止まる。追いつかれたようだ。敵は赤いオーラを纏っている。
(オーラ…闘気使いか…)
「ハァハァ……まてよ」
距離は10m程だ。相手に手を向けて止まるように促す。
「よく1日でここまで逃げられたな、一晩中探したんだぜ」
「それ以上近づくな」
敵が止まる。人攫いの一味だろう。いつでも魔法が撃てるように両手を構え魔力を流す。魔法が外れないように相手を注視する。そのとき、リングの魔道具に魔力が少し持っていかれ、人攫いの近くにステータスが表示される。
MP 40/40
STR 25
VIT 22
DEX 20
AGI 17
(おお!人のステータスもみれるのか!よし、AGIは低いな)
「お前が魔法を使えるのは知っている。だが、俺は闘気が使えるんだ。魔法を放ったって無駄だぞ」
「……目的はなんだ?」
闘気と魔法はお互いに消し合う。魔法のほうが距離の有利が取れるが2発目を放つ前に、闘気を纏い直される。スタミナは闘気使いのほうが圧倒的に上だ。
「ボスがお前をお望みなんだ」
「ボス?」
「やっと会話が成り立ったな!ハハッ!魔法が使えるスカベンジャーってのはお前だろ、ボスが兵隊としてお前を傍に置いておきたいらしい」
「なるほど……他のスカベンジャーたちは?」
「殺してはないが、全員売り払っちまうだろうな。自分の人質として残してほしいなら早くしたほうがいいぞ。交渉次第じゃ何人か残してもらえるかもな!」
人攫いがニヤリと笑う。むかつく野郎だ。少し考えるふりをする。
「く……分かった。抵抗はしない。連れてってくれ」
「話がはやいな!いいぞ、ついて来い」
「ああ……」
人攫いが後ろを向き歩いていく。俺はそれについていく。後ろ姿には隙がない。
(まだ警戒している……油断すると思ったが、話をうまく運びすぎたか…?ただの脳筋ではなさそうだ……)
「あー……それはそうと、こっちはお前を探すために一晩中走り回ったんだ…」
人攫いが右肩を回しながら呟く。
「一発くらい殴らせろ!」
後ろを振り向き殴りつけてくる。
(なにかするのはよんでたし、AGIも低いから簡単に躱せる)
軽くステップバックして躱す。そして魔力を流したままにしていた両手を向け、魔法を放つ。
「ウィンドカッター」
「なっ!」
高出力の風が闘気の鎧を破り、人攫いを上下に分かつ。真っ二つだ、もう反撃もできないだろう。残身を解き、念のため索敵をする。人攫いが今も訳が分からず問いかけてくる。
「ど……どうして……?」
最後の質問には答えず、人攫いの息が止まるのを待ってから、戦利品を回収し北へと移動する。
「じゃあな…」
種は簡単だ、一回の詠唱で両手からウィンドカッターを一発ずつ放っただけ。おそらくイメージが完璧なら誰でもできるだろう。片方の魔法が闘気の鎧を破り、もう片方の魔法が体を分かつ。
俺はこの闘気使いも屠る魔法の運用で紛争地帯を生き延びてきた。このとっておきをいつでも放つためにも魔力は魔法2発分残しておきたかったのだ。
MP 60/110
魔力もしっかり2発分消費されていた。
(真偽は不明だが人攫いによると、みんなはまだ生きているらしい。殺さず奴隷にしたほうが金になるしな)
助けることは不可能だろう。敵の数は不明だし、こっちは魔法4発で何もできなくなる。
(執着せず、諦めると決めたんだ……俺が弱いからだ……強くなるしかない)
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