転生後のすり合わせ
ウェザーは魔術による転生をした。
自我が目覚めると魔術以外のチカラが、この肉体に芽生えているのを自覚する。
それは超能力。サイコメトリーやサイコキネシス等が、大雑把に使えるみたいだ。魔術との併用も可能で、魔力ではなく精神力を消耗するようだ。
今世は魔法や魔術が無い、現代社会に限りなく近い世界だった。
ちなみに、魔術と魔法の違いは事前準備と効果の範囲である。魔法の中に魔術、魔術の中に魔法となる事もあるくらいには似ている。
それぞれ差違はあるものの、魔力量が高いと同等の威力と規模の破壊を持つ。
なので魔法と魔術はほとんど同じで、違いが分かる人はその道に一家言ある者のみだ。
この世界では
なので、何となくというか、ほぼ必然的にというか、ご近所の夫婦が自分達の子供と一緒に育ててくれた。
ちょっと理不尽。
彩華の父親はロシア人で、彩華をアーニャと読ませたり、アーニャの当て字としてあやかにする事も考えたが、妻に却下された。何であやかがダメなのか、全くもって分からないままだ。
ロシア人と日本人のハーフである為か、彩華は赤毛に色白な女の子。
天気は普通の日本人らしく、平たい顔に黒髪。親が日本人だから仕方ないのだ。
出会ったのは二歳頃と天気は記憶している。
一緒に積木とかで遊んだ。
彩華の親にバレないように、超能力で積木を浮かせる。
「
「風遁、風立ちぬ!」(赤ちゃん言葉)
対抗して彩華も積木を浮かせた。
しかし、積木を浮かせるつもりが、二人の積木は天井に舞い上がっていき、バウンドしてお互いの積木で建てたオブジェにヒット。
「あー! プリウスが突っ込んだ!」(赤ちゃん言葉)
「えーん! メテオは聞いてないよー!」(赤ちゃん言葉)
赤ちゃん言葉だがお互いに理解していない。彩華の親も、彩華達が何を言っているのか分からない。
だが、天気は彩華が何かしようとしたのは分かる。
彩華の母親や天気の母親の心は読めるも、彩華の心は読めないからだ。
いや、盛りました。自分の母親の心は子育てダルいという感情が読み取れるだけで、彩華の母親は、天井が凹んだ事にちょっとショックを受けていた。
そして、赤ちゃんである彩華の心なんて、読める訳がない。二歳児が何か考えて動く生物だと思うな!
遊び疲れて昼寝タイム。
彩華と一緒に寝る天気は、彩華の手足をそれとなく防ぐ。
(クソッ、ぷにぷにお手々が首の中に! 足をズボンの中に入れるなー!)
「むにゃむにゃ。水のない場所で、この規模の水遁……」(赤ちゃん言葉)
「暑い、生暖かい?」(赤ちゃん言葉)
彩華は天気に組み付いて、そのまま失禁する。つられて天気も失禁してしまう。
自我はそこそこあるも、肉体は欲求に正直なのだ。
世界地図、いや、大航海図の処理に追われる彩華の母親。彩華の父親の手によって、着替えと新しいオムツをはく。
ロシア語は読めないッス。
月日は経ち、彩華の誕生日が来た。
生まれた日は彩華が先なので、ちょっとだけお姉さんだ。
天気も参加して、家族総出で祝う。
「ピザ食う亀は邪道」(赤ちゃん言葉)
「オー、亀のクッションは気に入ったカ」
「まだニンジャのグッズは早いと思うけど。クッションとか探せばあるものね~」
ニンジャヲタクな父親による英才教育は既に始まっている。
アニメ、読み聞かせのマンガは勿論、遊び道具もニンジャ・モチーフの柄やシールが貼ってあるし、コスプレの小道具の如く自作する。
「鳴門より子忍がいい」(赤ちゃん言葉)
「まだ小さいからか、亀やカエルにもモノオジしないゾ」
「ぬいぐるみだからじゃない?」
月日は流れ、天気の誕生日がやって来た。
母親はコンビニのケーキを出して、簡単に祝うと天気にプレゼントを渡す。
「緑の猫のぬいぐるみか」(赤ちゃん言葉)
「これ持って、彩華ちゃんと仲良くしてなさい。向こうの親御さんの言うことは、ちゃんと聞きなさいよ?」
「うーん、ガチャ失敗というヤツかな?」(赤ちゃん言葉)
ようつべでたまに違う動画を見るのだが、毒親の可能性が天気の母親にはあるようだ。
「育ててくれるだけマシか。衣食住あるし」(赤ちゃん言葉)
前世と比べると、生活面は豊かだ。日本は特に。
質素な食べ物でも、コンビニやスーパーでは最低限の品質が保証されている。
前世は貴族だったが、三男は予備の予備。家族が誕生日を祝う事は無かった。
育児を他人任せなのは、前世もメイド任せだったので特に思うところはない。
父親はろくに顔も見せないし、母親は愛情抜きでも衣食住の面倒見れば、法律違反にはならない。
まぁ、そんなものだろう。放任主義はむしろありがたい方だね。
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