第16話 悪魔の手法、TTPとは
TTP。
初めてこの言葉を聞いたとき、多くの方はこう思うだろう。
「え? なにそれ?」
実際、検索してみると最初に出てくるのはこれだ。
> Thrombotic Thrombocytopenic Purpura(TTP)
全身の毛細血管に小さな血栓が多発し、血小板が急激に減少する危険な疾患。
……。
いや、違う。やたら物騒なものが出てきてしまった。
私が言ってるTTPはそれじゃない。
今回語るTTPとは、ビジネスの世界でよく使われる、ある意味では“悪魔の手法”だ。
**TTP = 徹底的にパクる**
そう。
うまくいっているものの“構造”をとことん真似しろ、という考え方だ。
所謂「二番煎じ」だが、世の中を見渡すと意外とうまくいっている事柄って多いことに気づく。
スマホであればApple「iPhone」とSamsung「Galaxyシリーズ」
飲み物なら「レッドブル」と「モンスターエナジー」
ゲームなら「PUBG」と「荒野行動」
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で、「徹底的にパクってやろう」と思ったのが、前回も語った『片田舎のおっさん、剣聖になる』の「構造」である。
おっさんが、実は強かった。
おっさんが、実は尊敬される人物だった。
このように中年読者層の心をくすぐる“芯”が、非常に明確だった。
ただし、当然そのまんまパクることは出来ない。
そのまま書いたら、本当にただのパクリだ。
**パクるのは、表層ではなく構造。**
つまり、“美味しい型”だけを取り出して、そこに自分なりの具材を詰め込む。そういう発想だ。
実際、元カプコンの取締役だったゲームデザイナー、岡本吉起さんは自身のYouTubeチャンネルの中で
「全くのゼロからアイデアが生まれることはほとんどない」
「他のアイデアと他のアイデアを合体させたり、元のアイデアの不満点などを他のアイデアで補強することで新しいものは作られる」
と語っていた。
では、自分も「片田舎おっさん」の構造に何を加えるべきか?
そこで思い出したのが、あるマンガだった。
『マッシュル』
魔法社会に生きながら、魔力ゼロの筋肉バカ主人公が理不尽を力でねじ伏せていく。あの異常筋肉ギャグバトルマンガ。
この「魔法の中で異質なフィジカルキャラ」という構造が、まさに今回のパーツに使えそうだと思った。
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で、そこから生まれた自分のプロットがこれ。
* 主人公は40代のおっさん。
* 魔力が“才能”そのものとされる社会で、**魔力ゼロ**という致命的ハンデを持って生まれてしまった。
* そのせいで、田舎でゴミ掃除だけを任されて、存在を無視されて生きてきた。
* しかし、魔力の代わりに、**とんでもない格闘能力**を持っていた。
* 長い年月、誰にも認められないまま、ひたすら肉体を磨き続けた。
* やがて、魔法だけでは対処できない“魔法無効の魔物”が現れる。
* 困った弟子たち(全員女の子)が、あのおっさんのもとを訪ねてくる――!
……という感じ。
「追放 → 実はすごかった → 再評価 → 女の子が慕ってくる」という「片田舎のおっさん」ラインに、「魔法×格闘」という異質要素を乗せて差別化。
我ながら、これはいけるんじゃないかと思った。
“なんか書けそうだぞ”という久しぶりの高揚感。
この勢いで、一気に**あらすじとプロローグ**を書き上げた。
そうなると、誰かの意見を聞いてみたくなる。
「ちょっと読んでくれない?」
と、創作に理解のある友人に送ってみた。
……数日後、返事が来た。
その内容は――
つづく
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ここまで読んでくださって、本当にありがとうございます。
物語を思いついた瞬間のあの火の出るような、閃光が走ったような感覚。
あの感覚が好きで捜索を始めてしまったのかもしれません。
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