第15話 ドラゴンと戦う
僕らは全速力で霧の森を抜けツヴィーバックに戻り迎撃準備を整えた。街の手前で戦車を降りてあたりを確かめ市街地から少し離れた見晴らの良い丘にある小さく古い風車に誘導した。
「なにか見えるか?」
「街に人影はない。避難したようだ」
僕は隣に立つタウンゼントに双眼鏡を渡して魔法望遠鏡を覗いた。戦車の砲塔から顔を出すと街を見渡すことができたが、この望遠鏡を使っても誰一人見つけることはできなかった。冬のこれほど心地の良い日差しの仕事日和に誰一人として表にいないというのは考えられない。そしてどの家の煙突も煙を吹いていない。つまり市長にも計画があったということだ。
「よかった」
だが辺りに誰もいないということは砲兵隊も見当たらないということだ。到着予想時間はとうに過ぎている、彼らはどこに居るのだろうか。こことは別の場所で対処する予定なのだろうか。そうなると厄介だがそれが彼らの仕事だ。
「ドラゴンはまだか?」
エランドがタウンゼントを下から覗いていると、
「まだだ」
「クッソ!鼻が」
タウンゼントはその頭を踏みつけてハッチに押し込みながら答えた。
「まだ時間じゃない」
僕がタウンゼントに魔法望遠鏡を預け砲手席に戻ると、
「弾はどうする?」
エランドは鼻についた土を払いながらしゃがみ床下の弾薬庫の蓋を開けた。
ドラゴンへの攻撃にはエリッシュが大量の魔法を充填した特別な徹甲弾を用いることになっていた。魔法防御と同等以上の魔法を詰めることによって、魔法としての質量のようなものを上げ砲弾の減速を防ごうということらしい。高速徹甲弾と通常の徹甲弾に施したものの二種類を用意しており、弾芯に超硬タングステンを用いる高速徹甲弾の方が材質の関係でより多くの魔法が充填されていた。
「高速徹甲弾にするよ」
「高速徹甲弾?」
「そうだ」
「そいつは次の精度が下がるから嫌いなんじゃなかったか?」
「500ヤード以内なら問題ないよ。それに、次はない予定なんだ」
「あぁいいね!勝負は一度切り、一撃必殺」
「……あと徹甲弾と、榴弾、発煙弾も、念のためだ」
「腰抜け」
「なにか言ったか?」
「何も。榴弾取るから砲塔回せ」
僕は上に乗っている二人に戻るよう言ってから砲塔を旋回させた。
「こいつが金に変わるわけだ。お前はどう使う?Up」
エランドは高速徹甲弾の弾頭を嬉しそうに撫でてから砲尾栓んに押し込んだ。
「そうだな--
僕は更に砲塔を旋回させ射界を確認しながら質問の答えを考えた。しかし特に思い浮かばなかったので質問をそのまま返すと彼は世界を見て回ると楽しげに語りだした。僕らは暫く今後のことについての話で盛り上がった。
--もう時間か?」
僕が時計を覗くとエランドは話を切り上げた。
「まだだ、でも猫からの連絡は8になった」
8の定時連絡は猫がドラゴンを目視したことを意味する。僕は最後の確認をすることにした。
『無線をチェック、エリッシュ?』
『はっきり聞こえます』
『エランド?』
『よく聞こえません……冗談だよ』
『タウンゼント?』
『良好』
『よし、作戦はさっき説明した通り。タウンゼント、運転できそうか?』
『問題ない』
『エリッシュ、君は車長だ。さっき教えた仕事と注意事項は覚えてるか?』
『はい、私の役割は外の様子を伝えることで注意することは砲尾栓に触らない。戦いが始まったらハッチは閉める。後はフレディがオンザウェイと言ったら目をつむる』
『素晴らしい。作戦はうまくいくだろう』
『俺は?』
『……トイレはすませたか?』
『ケツは引き締まってる』
僕はすぐ後ろのエリッシュに双眼鏡を預けて潜望鏡を覗き砲塔を西に向けた。
『名前、まだ決めてない。お前決めろよ』
『そうだな、アーサー王伝説のドラゴンは白と赤どっちが勝つんだったか』
『最終的には赤が優勢になる』
『よし、じゃアイロンレッドドラゴン作戦にしよう』
『後ろです!』
作戦名が決まるのとほぼ同時にエリッシュが叫び数秒の間をおいて背後の森から巨大な影が僕らを通り過ぎていった。影が向かった方向へ砲塔を回すとその主が視界に入った。翼を広げ街へ滑空する姿はまるで着陸態勢に入った戦略爆撃機のように巨大で白銀の翼は陽の光で眩しく輝いていた。
『街に行きました!』
『恐竜だ!』
エリッシュはハッチを閉めて車長用の潜望鏡を握りエランドはハッチから身を乗り出し興奮気味に言った。僕は照準器を覗きまだ何もない場所に狙いをつけてドラゴンが街の上空を抜けるのを待った。すぐに撃ち落とすこともできるが、その場合あの巨体が街に落ちることになる。計画とは違う方角から飛来したが調べた通りならドラゴンは街の周りを数度旋回するはずだ。だからこうしてあらかじめ標的の進行方向に砲を向けておくことで照準器に写ったときに俯仰角を調整するだけで発砲できるようにするのだ。距離は開いてしまうがあの巨体ならたいした問題ではない。僕は文献にあった通り右に旋回する癖があると予想して潜望鏡の左端にドラゴンを置き主砲の発射スイッチの手前に右足を置いた。
『右に行きます』
ドラゴンは体を傾け緩やかに旋回を始めた。ゆっくりと飛んでいるように見えるが街の大きさから計算すると時速200キロは出ていることになる。距離は900メートルだった。
『On the way!』
僕は照準器を覗きスイッチを踏んだ。砲が後退を始め砲口から漏れたガスが衝撃波の中に火の玉を作る。一瞬のうちに吐き出された砲弾はその波の壁をも振り切って標的に向かった。潜望鏡に目を戻すとマズルブレーキに制御されて左右に吹き出した白煙が視界を覆っていた。
『ウッソだろ!そこで外す?』
『当たりました!首の真ん中です!でも飛んでます!』
『徹甲弾を装填しろ』
エランドはハッチを閉めて車内に戻り装填作業に戻る。砲弾は外れたのか。報告通り当たったのか。手応えはあった、が潜望鏡に映るドラゴンはまだ飛んでいた。
『Up!』
ドラゴンは更に大きく体を傾け数度羽ばたいて進路を変えた。
『気づかれたか?』
『興味が、ないみたいです』
僕は同じ場所から砲撃を続けることにした。ドラゴンは街の中心にある大きな協会をじっと見ている。あの塔から砲撃されたと思っているのか。ドラゴンは街の外縁に沿うように飛んだ。このまま行けば次の旋回でこちらに腹を見せることになるだろう。そのときの距離は400メートルもないはずだ。外すとは思えない。僕は砲塔を左へ旋回させ街の北西に照準を置いた。
『On the way!』
今度は距離が近かったため潜望鏡を使って照準し砲撃した。車体を揺さぶる衝撃の後、僕は潜望鏡を覗いた。
『翼に当たりました』
『……』
砲弾が命中したことは地面の土煙からすぐに分かった。エリッシュの報告から考えると砲弾はドラゴンの翼で跳弾し弾道を90度変えてすぐ下の地面に突き刺さったということだろう。そんな馬鹿な。秒速880メートル、重量7.7キロ、距離400メートルなら180ミリの圧延装甲を撃ち抜ける。そんなものをまともに受けても飛んでいられる野生動物なんて居てもらっては困る。
僕の困惑をよそにドラゴンは街の協会を見据えたまま飛び続けた。どうやらドラゴンはこちらに気がついていないのではなくあの建物自体に興味があるようだ。それはつまりヤツにとってこの17ポンド砲は無視できる火力ということだった。
『どうしましょう』
『エランド、もう一度徹甲弾だ』
『砲がイカレてんのか?』
『弾かれたんだ』
『へぇ?』
外の様子が見えないエランドは信じられないといった様子だった。
『目にもの見せてやる、言葉通りに』
僕はガムを口に放り込んで砲を街の西に向けた。このままドラゴンが時計回りに街の周りを飛ぶならば頭がこちらに向く時に最も相対速度が遅くなる。そこでヤツの目玉に徹甲弾を叩き込むのだ。目玉と言っても大きさはバスケットボールくらいはある。距離500メートルで1秒間だけ静止するボールを撃つ。そう難しくはない。
だが計画は立案から6秒も経たないうちに破綻してしまった。ドラゴンが街中に何かを見つけ進路を変更して着陸してしまったのだ。ドラゴンは街とぶどう畑との境にある十字路に降り立つとその場に座りこちらに背を向けて街中へ続く道をじっと見つめた。
『サルマさん!』
次の案を考えているとエリッシュが呟いた。嫌な予感がしたので僕は首を傾げたドラゴンの視線の先に照準器を向けた。3倍率の照準器では500メートル先の人物を判別するのは難しいがレンズの端に写ったとんがり帽子の人影には見覚えがあった。彼女とドラゴンとの距離は10メートルも離れていない。サルマは杖を掲げ戦うつもりでいるようだ。
『サルマさん!魔法は駄目です!』
『やっぱり、戻って来ちゃったんだねぇ』
エリッシュがペンダントを握り祈るように叫ぶとサルマは通信に割り込んで応えた。
『言っただろう?ドラゴンにゃ勝てないよ』
『それならどうして!』
『少しでも疲れさせれりゃいいのさ。あとはトルピードのやつがどうにでもするだろう』
『でも!』
『でもはなしだよエリー。他にしようがないんだ』
サルマは続けた。
『聞こえてるんだろ?街へ連れて行くよう言ったはずだ』
『申し訳ない』
『時が来る前に早くお逃げ。コイツは気づいているよ』
”時が来る前に”つまりドラゴンは伝承通り正午ちょうどまで街を攻撃しないのか。そうだとすれば後10分ある。
「方法は、ありませんか」
エリッシュはそう言って僕の袖を掴んだ。僕は振り返らず潜望鏡を覗いたまま次の手を考えた。
“ある”そう言い切る事はもう出来なかった。僕はドラゴンについて事前に手に入る限りの情報を集めそこから戦闘を想像していた。そのうちのいくつかには17ポンド砲が期待した効果を発揮しなかった場合のものもあった。問題はその全てが相手は野生動物であるという前提条件のもとであったということだった。この愚かな失敗によって想像には無意識のうちに動物的な反応が追加されドラゴンがとりうる行動が事実上制限されていた。僕は全く未知の存在であるはずのドラゴンに対して根拠なく既知の何かを当てはめてしまったのだ。その結果、ほとんど最後の手段となる弱点狙撃が不可能になる可能性に気づけなかった。
ドラゴンは僕らに対して斜めに背を向けて座っている。最も頑丈と思われる背を向けつつ翼で顔を隠している。恐らく移動して射線を変えたとしても対応してくるだろう。直接目を狙う事はできない。そうなると榴弾で炙る他に手はないが徹甲弾をはじく装甲に効果的とは考えずらい。
20秒たった。そろそろ決めないと。
『けつあな』
その時エランドが唐突に呟いた。
『なんだって?』
『けつあな。聞こえただろ?』
僕が聞き返すと彼はもう一度言った。
『聞こえたとも、聞こえなかったわけじゃない』
『だったらわかるだろ?ケツの穴だよ。糞の出入り口だ』
『ハハハッ、クソ!どうしたって君はそう尻にこだわるんだ?こんなときに、今は忙しい、後にしてれ』
1秒たりとも無駄にできないこの緊急事態にまた、これまでもエランドは仲間の緊張を解すためにフザけることあった。だがそれらは時と場合をわきまえていた。
まさか、有用な情報なのか。潜望鏡から目を離し左を見ると彼と目があった。
『……?』
『糞の通り道に装甲は貼れない』
エランドは榴弾をその手に抱え満面の笑みを浮かべていた。
『ふんん……素晴らしい。装填しろ』
『Up !』
僕は榴弾を装填するよう指示して彼が考えたであろう第3の選択肢を実行することにした。一瞬でも仲間を疑った自分が馬鹿らしい。
榴弾とは爆発する砲弾のことで先ほど使用した高速徹甲弾や徹甲弾とは異なり中に高性能爆薬が詰まっている。通常の榴弾なのでゴブリンの家に使用した吸着地雷のような装甲貫通力はなく重装甲の目標には効果が薄い。そのため榴弾は大口径でない限り戦車の様な目標を狙っても致命傷を与えることはできない。せいぜい外付けの排気口を吹き飛ばす程度だ。だが目の前の標的は排気口と内部構造の距離が短い。つまり出口付近で爆轟を引き起こせばその圧力波はたやすく伝播し脆弱な構造に致命的な損害を与えることができるということだ。榴弾であれば直接射線を通す必要もない。目標の近くで爆発させることさえ出来れば良い。
つまり座っているドラゴンの尻と地面の間に砲弾を挟み込み信管さえ起動させれば後のことは600グラム近い高性能爆薬がなんとかしてくれるということだ。簡単に言うと、
『ケツの穴を吹っ飛ばしてやる』
そういうことである。僕は宣言してから仕切り直す事にした。
『エリッシュ、サルマさんに下がるよう頼んでくれないか?』
『はい!』
『聞こえてるよ』
『ではドラゴンが見えない位置まで下がってください』
『それはできない。私がやれば済むことだ』
『頑固な婆さんだなぁ』
『聞こえてるよ』
『我々はあなたにそうさせないためにここにいるのです』
『お互いにね』
サルマは全く下がる気配を見せず杖を地について堂々としていた。
「どうにかならないかエリッシュ?」
「ちょっと行ってきます」
「冗談はよしてくれ危険すぎる」
「俺がやってやろうか?」
「できるのか?」
「知ってるだろ?」
「どうしてエランドは良くて私は駄目なんですか?」
「それは君……実績が違う。とにかく急がないと」
そうやってエリッシュの質問をうやむやにしエランドへの細かな指示を出そうと彼の方を向くとタウンゼントが僕の足を叩いて紙切れを渡してきた。そこにはサルマを説得するためのヒントが書かれていた。
『最後の忠告です。ドラゴンから見えないよう丈夫な遮蔽物の後ろまで下がってください』
『聞き分けのない男だね。できないと言っているんだ』
『どうあっても、下がる気はないと?』
『そうだ』
『わかりました。では共に戦うとしましょう。今ここで、ドラゴンを破壊します』
『ドラゴンは、倒せない、まだわからないのかい?』
『ここで倒せないのであれば、なおさら引く訳にはいきません。この機会に最大限の損害を与える。あなたの犠牲を無駄にすることはできない』
『そんなものは--』
『我々は”そんなもの”とは考えません。あなたの意志は引き継がせていただきます。ウインナーズドルフでの戦いにも参加することになるはずだ。そのほうがトルピード総統も戦いやすいでしょう』
『許すと思ってるのかい?』
『許すも何もそのときにはもう、声も手も届きませんよ』
暫くの静寂と、ため息があった。
『……しかたないね。でも逃げるわけにはいかないよ』
『ありがとうございます。では爆発する砲弾を使用するので合図が聞こたらドラゴンがこちらに興味をしめすまで遮蔽物に身を隠してください』
『その後は』
『初弾で致命傷をあたえられなかった場合はこちらも退避して防御姿勢を取ります。サルマさんは何か気を引ける魔法があればお願いします』
『いいだろう』
『ただしお体に障らない程度のものがあればの話です。目的を忘れないでください』
『君たちもね』
『勿論です』
僕は席に座り直し車体を180度旋回させるようタウンゼントに指示した。この戦車は後退が遅いため素早く下がりたいときは予め進みたい方向を向いておく必要があった。例えるなら人の頭を砲塔として後ろに振り向いた状態で戦うのだ。砲弾は口から出るものとする。そうして砲をドラゴンに向け距離を測る。サルマの身長から考えると430メートル誤差5といったところだろう。
『エランド、2インチ発煙弾を用意しておいてくれ』
『距離は?』
『20』
2インチ発煙弾は砲塔天板に埋め込まれたピストルのような煙幕発射機で名前の通り小さな発煙弾を戦車の手前に飛ばす事ができる。これで煙の壁を作りその影に隠れて行動するのだ。
『タウンゼント、僕が1発撃ったらすぐに丘の裏へ退避して西側から射線を通してくれ』
『わかった』
『エリッシュ』
『はい!エリッシュです!』
『揺れるから頭をぶつけないように』
『分かりました!』
『よし、仕切り直しだ』
今度こそうまくいくはずだ。僕はもう一度時間を確認しようと懐中時計を見た。
時刻は11時50分、秒針が止まっていた。
照準器を覗くとドラゴンがこちらを向いているのが見えた。
『狙われてるよ!』
『サルマさん、退避してください』
僕はゆっくりと下がってゆくサルマを照準の左端で確認しながら、足をかがめ今にも飛びかかろうとしているドラゴンに狙いを移した。
『On the way!』
発砲と同時に鐘が正午を知らせエランドは薬莢が床に落ちるよりも早く2インチ発煙弾のトリガーを引いた。続いてタウンゼントがアクセルを踏み込み車体が大きく揺れ照準器の視界からドラゴンが消える。サスペンションが揺れを抑えると潜望鏡に再び十字路が写った。そこにドラゴンの姿はなかった。発煙弾が爆ぜる。
『どこに行った?』
『ま上です!』
僕が疑問を口にするとエリッシュはハッチを開け放って真上を指差し、
『左に避けて!』
と叫んだ。すぐにタウンゼントが右のブレーキを引き車体が右に傾く。
直後、500キロ爆弾でも爆ぜたのかと疑いたくなるような衝撃と爆音と同時に戦車が少し浮いたように感じられ車体右側が溶接のような光を放った。砲塔旋回装置からは油が噴き出し、顔中が生暖かい機械油にまみれたが幸い引火することはなかった。
『被弾した!大丈夫か!』
『大丈夫です!』
『問題ない』
『また生き残った!』
目が慣れて損害を確認すると車体右側面が抉り取られ縁がオレンジ色に輝いていた。そしてその隙間からはドラゴンの足らしきものが見えた。
『右です!右に居ます!』
『ダメだ!タレットをやられた!』
すぐに砲塔を旋回させようとしたが車体ごと歪んだのか手動のハンドルはびくともしなかった。
『タウンゼント!左に旋回させろ!エランド!主砲に発煙砲弾を込めてくれ!エリッシュ!ハッチを閉めるんだ』
『分かった』
『Up!』
『はい!』
僕は後ろを向いたまま固定されてしまった砲を車体ごと旋回させて照準することにした。左手のハンドルを全力で回し仰角を調整して潜望鏡にドラゴンが映るのを待った。
『On the way!』
目があった。ドラゴンは口を大きく開け噛みつこうとしているように見えた。スイッチを踏むと放たれた砲弾はドラゴンの口の中に白鱗を撒き散らし、あたりはたちまちは白煙に包まれた。驚いたのかドラゴンは蹴られた犬のような甲高い声を上げて羽ばたくと北へ飛び去っていった。
発煙弾は煙幕を展開するための砲弾で攻撃用の砲弾ではない。しかし、それは他の砲弾と比べた場合の話で8キロ近い重量があり秒速230メートルで撃ち出される物体の運動エネルギーは相当なはずだ。そのうえ50グラムの炸薬が撒き散らす白鱗は大気と反応して燃焼しその欠片の温度は1000度に達する。それが上顎に直撃したことでドラゴンは驚いたようだ。出来れば認めたくないが事実だった。
「総員退去」
僕は煙から抜けるため少し戦車を進ませて降車し消化器で戦車に飛び散った火を消した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます